AYANEOは、その次世代ポータブルゲーミングPC「AYANEO NEXT 2」を発表し、ポータブルゲーミングPC市場に大きなインパクトを与えようとしている。本機は、AMDの最上位APUである「Ryzen AI Max+ 395」(Strix Halo)を搭載し、その性能を最大限に引き出すための異例の冷却システムと設計思想を採用している点が特徴だ。2025年中の発売を目指す本機は、既存のハンドヘルドの枠を超えた「ピークx86プラットフォーム」を標榜する。
心臓部は別次元の「Strix Halo」APU
AYANEOはこれまで、「AYANEO Pocket」や「Flip DS」、そしてAMD Ryzen 7 5825Uを搭載した「AYANEO NEXT」など、数多くのゲーミングハンドヘルドを市場に投入し、その名を確立してきた。今回発表された「AYANEO NEXT 2」は、その名が示す通り、従来の「AYANEO NEXT」の後継機であり、同社の「真のフラッグシップ」として位置づけられる。注目すべきは、AYANEOがStrix Point世代のAPUをスキップし、より強力なStrix Halo世代のチップを直接採用した点にある。

「AYANEO NEXT 2」に搭載されるのは、AMDのモバイルAPUにおける最上位SKUである「Ryzen AI Max+ 395」だ。これは、もはや携帯機向けとは呼べないほどの強力な性能を秘めたAPU(CPUとGPUを統合したプロセッサ)だ。
そのスペックはまさに圧巻の一言に尽きる。
- CPU: 16コアの最新「Zen 5」アーキテクチャ
- GPU: 40基のコンピュートユニット(CU)を持つ「RDNA 3.5」アーキテクチャベースのRadeon 8060S
現行の多くの携帯ゲーミングPCが搭載するAPUのGPUコア数が8〜16CUであることを考えれば、NEXT 2が内包するグラフィックス性能がいかに突出しているかは明白だろう。これは単なる性能向上ではなく、世代を飛び越えたパフォーマンスの飛躍を意味する。
多くのメーカーが高コストと高発熱を理由に採用をためらう中、AYANEOはあえてこの最高峰チップを選択した。同社は、Strix Halo搭載のMini PC「AI395」の開発で得た知見を活かし、このモンスターAPUを携帯機の筐体に収めるという困難な課題に挑んだのだ。
性能を絞り出すための「ノートPC級」冷却設計
Strix Haloの性能を最大限に引き出す鍵は、冷却にある。AYANEOの創業者Arthur Zhang氏が公開したプロトタイプの基板(PCB)は、我々の度肝を抜くものだ。
そこには、携帯機としては異例のデュアルファン冷却システムが鎮座し、基板自体も既存の製品とは比較にならないほど巨大だ。これは明らかに「携帯性」よりも「性能」を優先した、妥協なき設計思想の表れである。

なぜ、ここまでの冷却機構が必要なのか
Strix Haloは、その高性能と引き換えに高い電力(TDP)を要求する。貧弱な冷却では、チップは本来の性能を発揮できず、すぐにサーマルスロットリング(熱による性能低下)を起こしてしまう。AYANEOは、この巨大な冷却機構によって十分な熱的ヘッドルームを確保し、Strix Haloが持つポテンシャルを余すところなく絞り出すことを狙っている。このアプローチは、もはや携帯機というよりは、高性能ゲーミングノートPCの設計思想に近い。
携帯性の再定義か?巨大化とバッテリーの課題
この常識破りの設計は、当然ながら本体サイズとバッテリーという新たな問いを我々に突きつける。
公開されたレンダリング画像や基板サイズから、NEXT 2がかなり大型のデバイスになることは間違いない。一部では画面サイズが8インチ、あるいは10インチに達するのではないかとの憶測も飛んでいる。これは、ポケットに入れて持ち運ぶという従来の携帯機のイメージからは大きくかけ離れる。
そしてもう一つの焦点がバッテリーだ。同じくStrix Haloを搭載する競合機「GPD Win 5」が、本体とは別に「バッテリーバックパック」を用意するというユニークなアプローチを取ったのに対し、AYANEO NEXT 2は「大容量バッテリーを内蔵する」と明言している。この選択は、単体での利便性を高める一方で、本体の重量と厚みに直接影響を与えるだろう。性能と携帯性、そしてバッテリー駆動時間。この三者のバランスをどう取るのか、AYANEOの手腕が問われることになる。
市場へのインパクト

AYANEO NEXT 2の登場は、携帯ゲーミングPC市場の新たな潮流を予感させる。筆者は、これは市場の二極化の始まりだと考えている。
一方で、Steam Deckが切り拓いた「価格と性能のバランス」を重視する層。そしてもう一方が、NEXT 2やGPD Win 5が狙う「価格や携帯性を度外視してでも最高の性能を求める」ニッチなハイエンド層だ。
Strix Halo搭載機は、その製造コストから非常に高価になることが予想される。これは万人向けの製品ではない。しかし、その存在は「携帯できるデバイスで、どこまでデスクトップPCに迫れるか」という技術的な挑戦の最前線であり、業界全体を刺激する起爆剤となり得る。
我々が目にしているのは、単なる新しい携帯ゲーミングPCの誕生ではないのかもしれない。これは「ポータブル・ゲーミング・ラップトップ」とでも呼ぶべき、新たなカテゴリの産声ではないだろうか。AYANEO NEXT 2が2025年に市場に投入された時、その真価が明らかになるだろう。
Sources
- AYANEO (YouTube): AYANEO 2025–2026 Strategy Sharing Session



