中国三峡集団は、新疆ウイグル自治区・哈密の1000MW「光熱+太陽光」一体型プロジェクトを、2026年6月27日に商業試運転へ移した。設備の内訳は太陽光発電900MWと、溶融塩に熱を蓄える線形フレネル式光熱発電100MWである。昼に集中する太陽光の一部を夜へ移し、出力を指示できる電源として使う。
ここで規模を読み違えてはいけない。日没後も動かせるのは1GWの全設備ではなく、100MWの光熱部分だ。8時間という数字も、100MWを定格で8時間運転できる設計上の蓄熱時間を指す。哈密のプロジェクトが試すのは「夜も1GWを発電する太陽光発電所」ではなく、安い昼のPVに、夕方以降を受け持つ100MW級の蒸気タービンをどう組み合わせるかである。
1GWではなく、100MW×8時間
光熱側の蓄熱量を電気出力に置き換えると、定格換算で最大800MWh相当になる。十分に熱をためた日なら、100MWを8時間出すか、出力を落としてより長く運転する余地がある。ただし、日射が弱い日や蓄熱槽が満たされていない日は同じ運転を続けられない。8時間は毎夜の保証値ではない。
年間の数字を見ると、設備の役割はさらに明確になる。三峡集団が全面商業運転後に見込む光熱側の年間発電量は1.45億kWh超だ。100MWで割れば等価フルロード時間は1450時間、設備利用率は約16.6%となる。年間8760時間を通じて一定出力を担うベースロード電源ではなく、価値の高い時間帯へ発電を寄せるピーク対応・調整用の設備と考えるべきだ。
「世界最大」という呼び方にも条件が付く。哈密は太陽光と光熱を合わせた総設備容量で1000MWに達し、ドバイのNoor Energy 1の950MWを上回る。一方、Noor Energy 1は光熱700MWとPV250MWの組み合わせで、熱貯蔵容量は5907MWh、最大15時間を持つ。夜間に動かせる光熱出力で比べれば、Noor Energy 1の方が哈密の100MWよりはるかに大きい。哈密の記録はハイブリッド全体の銘板容量であり、蓄熱設備や夜間出力の大きさを示す記録ではない。
26万枚の鏡が塩を550℃まで熱する
線形フレネル式は、地面に並べた平面または緩く湾曲した鏡を一軸で追尾させ、上方に固定した受熱管へ太陽光を集める。哈密では26万枚の反射鏡が80万平方メートルの集熱面を作り、二次反射鏡で光を受熱管へもう一度絞る。受熱管を流れる溶融塩は約550℃まで加熱され、熱塩槽へ送られる。
発電するときは、高温の塩が蒸気発生器へ熱を渡す。そこで生まれた高温・高圧蒸気が、通常の火力発電所と同じようにタービンと発電機を回す。太陽光をいったん熱として保存するため、発電の時刻は鏡に光が当たる時刻から切り離せる。PVが電子を直接送り出すのに対し、光熱は熱塩槽を間に挟むわけだ。
受熱管を固定でき、鏡も地上に低く置けるため、この方式は構造を簡素にしやすい。その代わり、樋型の曲面鏡に比べて光学損失が大きくなりやすい。哈密では二次反射鏡を使い、46本の集熱回路に分割した。1回路を止めても残りを動かせるため、26万枚の鏡を抱える設備でも保守停止の影響を局所化できる。
運転の難所は、塩を熱くすることより、冷やしすぎないことにある。哈密が使う溶融塩は約220℃で固まりやすく、運転時には最大約560℃まで上がる。配管や槽全体でこの温度域を管理し続けなければならない。哈密の冬は低温と低日射が重なり、砂塵は鏡の反射率を落とす。配管と槽の保温、受熱管の温度管理、ロボットによる乾式清掃と洗浄車の水洗が、年間発電量を左右する。
25MWの電気加熱器がPVと光熱をつなぐ
この設備を純粋な太陽熱発電所として見ると、設計の半分を見落とす。哈密は25MWの電気加熱器を備え、900MWのPV側で余った電力を使って溶融塩を加熱できる。鏡場から集めた熱に加え、系統へ流し切れない電気も同じ熱塩槽へ入れ、必要な時間に蒸気タービンで電気へ戻す構成だ。
もちろん、電気を熱へ変え、再び電気へ戻せば変換損失が生じる。短時間の充放電効率だけなら、リチウムイオン電池が有利になりやすい。それでも、PVを出力抑制するしかない時間に電気の市場価値がほぼ失われるなら、損失を受け入れて夜へ移す意味が出る。25MWの加熱器によって、100MWの光熱発電機と900MWのPVは実際の運用でも一つにつながる。
蒸気タービンを残す意味もここにある。インバーター経由のPVとは異なり、回転する同期発電機は慣性を持ち、調周波数や調圧にも参加できる。中国の国家能源局は、こうした出力調整を電力市場で評価する方針を示した。停電後に自力で立ち上がるブラックスタートと慣性支援も対象になる。発電したkWhだけで採算を測ると、光熱が系統に売る商品の一部を数え落とす。
哈密で価値を持つ「発電量以外の仕事」
哈密の電力系統は、この種の調整力を試す場所として条件がそろう。2025年末の総設備容量は5000万kWを超え、風力や太陽光を中心とする新能源は3700万kW超、比率は73.5%に達した。昼のPV出力が増えるほど、夕方の減少を埋め、送電線へ流す電力を安定させる電源が要る。
地域の電力は遠距離送電とも結びついている。2025年6月に運転を始めた哈密―重慶±800kV直流送電線は、全長2260km、定格800万kWで、年間360億kWh超を送る計画だ。配套電源1420万kWのうち、風力、PV、光熱などの新能源が70%超を占める。哈密の一体型プロジェクトがこの送電線へ直接給電すると確認されたわけではないが、地域全体では、天候で動く巨大な電源群を遠隔地の需要に合わせる課題がすでに現実になっている。
100MWの光熱設備は、5000万kWを超える哈密の電源構成を単独で変える規模ではない。とはいえ、100MW級線形フレネルを900MWのPVと同じ制御対象に置き、熱と電気の両方から蓄熱し、同期発電機で夜間に出力する一連の運用データは得られる。商業試運転の価値は、鏡や塩が動くことの実証から、系統が必要な時刻にどれだけ確実に応答できるかの検証へ移った点にある。
商業試運転の次に、経済性を測る数字
技術が動くことと、競争に勝てることは別である。国家能源局によると、中国の光熱発電所の建設費は10年前の約3万元/kWから1.5万元/kWへ半減し、発電コストは0.6元/kWh前後まで下がった。ただし政府文書は、初期投資の大きさ、市場競争力の弱さ、調整価値を収益へ変える制度の不足を課題として挙げている。2030年に光熱発電1500万kWを導入し、石炭火力並みの発電コストへ下げるという目標は、現在の採算がまだ政策支援と市場設計に依存することの裏返しだ。
競争相手の価格低下は速い。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の2025年データでは、世界の加重平均発電コストは光熱発電が115ドル/MWh、PVが44ドル/MWhだった。さらに日射条件の良い地点では、95%の信頼度を想定したPV+蓄電池が85ドル/MWhを下回った。4時間の系統用蓄電池の設置費は世界平均で約140ドル/kWh、中国では70ドル/kWh未満まで下がっている。
この比較は、哈密の8時間光熱と4時間蓄電池をそのまま入札させた結果ではない。光熱発電のコストには鏡場、蓄熱、蒸気タービンが含まれ、蓄電池の設置費には充電用の発電設備が含まれない。それでも、PV+蓄電池が「長時間・高信頼度」の領域へ入り始めた以上、溶融塩は安さを自明の前提にできない。
商業性を判断するには、計画値ではなく運転実績が要る。年間1.45億kWhを超えられるか。100MWを8時間出せた日は年間に何日あるか。25MWの電気加熱器は、捨てられるはずだったPVを何kWh受け取ったか。塩の凍結を防ぐためにどれだけ自家消費し、鏡と受熱管の保守にいくらかかったか。そして、調周波数や慣性支援からどれだけ収入を得たか。これらが公開されれば、哈密の評価は巨大な発電所の写真から、光熱と蓄電池を同じ条件で比べられる商用データへ移る。