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IBM、米国へ1500億ドル投資:AI・量子開発加速へ

Y Kobayashi

2025年4月29日

巨大IT企業IBMは、今後5年間で米国に1500億ドルという巨額の投資を行う計画を発表した。この大規模投資は、特に人工知能(AI)と量子コンピュータの研究開発および米国内での製造を加速し、同国の技術的リーダーシップを強化することを目的としている。

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1500億ドル投資計画の全貌:未来技術への大胆な賭け

IBMが2025年4月28日に発表したこの計画は、米国の経済活性化と、同社が世界の最先端コンピューティング分野における中心的存在であり続けるための戦略的な一手と位置付けられる。投資総額1500億ドルのうち、300億ドル以上が研究開発(R&D)に充てられる予定だ。

IBMの会長兼CEOであるArvind Krishna氏は、「技術は未来を築くだけでなく、定義するものです」と述べ、「創業以来114年間、私たちは米国の雇用と製造業に注力してきましたが、今回の投資と製造へのコミットメントにより、IBMが世界で最も先進的なコンピューティングとAI能力の中心であり続けることを保証します」とその意義を強調した。

この発表は、Trump政権が企業に対し米国内への投資や製造業回帰を促す中で行われた。Apple、NVIDIA、現代自動車といった他の大手企業も、同様に米国での大型投資計画を発表している。特にIBMの競合であるNVIDIAは、今後4年間で最大5000億ドル相当のAIインフラを米国内の製造パートナーシップを通じて生産する計画を発表している。

研究開発の核:メインフレームと量子コンピュータ

今回の投資における研究開発の柱となるのは、メインフレームと量子コンピュータである。

メインフレーム: IBMのメインフレームは、長年にわたり世界の金融取引など基幹システムを支えてきた。同社によれば、世界の取引額の70%以上が、ニューヨーク州ポキプシーの工場で製造されるIBMメインフレームを経由しているという。最新機種「z17 AIメインフレーム」は、1日あたり4500億回以上のAI推論処理能力を持つとされる。今回の投資により、この重要インフラの米国内での製造と技術革新がさらに推進されることになる。

量子コンピュータ: 次世代のコンピューティング技術として期待される量子コンピュータ分野でも、IBMは積極的な姿勢を見せる。同社は現在、世界最大規模の量子コンピュータ群を運用しており、今後も設計、構築、組み立てを米国内で行う方針だ。量子コンピュータは、従来のコンピュータでは解決困難な問題を解き明かし、科学的発見から国家安全保障、産業競争力強化に至るまで、多岐にわたる分野に変革をもたらすと期待されている。IBMの「Quantum Network」は、フォーチュン500企業、学術機関、国立研究所、スタートアップなど約300の組織に量子システムへのアクセスを提供し、アクティブユーザー数は60万人を超える。最新の量子プロセッサ「Heron R2」は156量子ビットを備え、従来比で50倍高速な計算実験を達成したと報告されている。

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背景と市場の反応:期待と懐疑の交錯

IBMの今回の発表は、同社が近年Microsoft、Amazon、Googleといったクラウド大手に対してやや後れを取っていると見なされる中で、先端技術分野でのリーダーシップを改めて確立しようとする意欲の表れと見ることができる。社会保障システムやアポロ計画といった米国の重要な歴史的プロジェクトを支えてきた実績を背景に、未来の技術革新への揺るぎないコミットメントを表明した形だ。

一方で、ウォール街の一部からは、この巨額投資計画に対して懐疑的な見方も出ている。D.A. Davidsonのアナリスト、Gil Luria氏は、Reutersに対し「大げさな数字は、米国政府へのジェスチャーである可能性が高い」とコメントした。また、この発表が、IBMが米国政府との契約15件(複数年で総額1億ドル未満)をDOGEによってキャンセルされたと公表した数日後であったことも指摘されている。契約解除の発表があった日、IBMの株価は6%以上下落した。

しかし、直近の2025年第1四半期決算では、売上高がアナリスト予想を上回り、特にメインフレームを含むインフラ部門の収益は好調であったことも報告されている。今回の投資が、将来の成長に向けた具体的な布石となるのか、市場は今後も注視していくことになるだろう。


Sources

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