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Nintendo Switch 2の流出マザーボードが徹底解剖され噂のNVIDIA「T239」の実力と次世代ゲーム体験の全貌が明らかに

Y Kobayashi

2025年5月8日

長らくベールに包まれてきた任天堂の次世代ゲーム機「Nintendo Switch 2」。その心臓部と目されるマザーボードがリークされ、詳細な分析によって、その謎に包まれたスペックが明らかになりつつある。中国のテクノロジー系動画クリエイターGeekerwan氏が入手・解析したとされるこの基板は、NVIDIA製の最新SoC「T239」を搭載し、CPU、GPUともに現行Switchから飛躍的な進化を遂げている可能性を示唆している。

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謎に包まれた「Nintendo Switch 2」の心臓部、ついに白日の下に?

今回、Geekerwan氏は中国のオンラインマーケットプレイス「Shen Yu」(中国版eBayとも呼ばれる)でNintendo Switch 2の試作マザーボードとされる物を約150ドルで入手したと報告している。起動こそしないものの、その物理的特徴や搭載チップの詳細な分析から、同氏は「本物である可能性が高い」と指摘している。

中国系ECサイト経由で入手された「試作品マザーボード」の信憑性

Geekerwan氏が入手したマザーボードは、ダブルType-Cポートの存在やCPUパッケージのマーキングなどから、本物である可能性が高そうだ。ただし、起動しないことから、損傷している、部品が不足している、あるいは未完成のサンプルである可能性が考えられる。それゆえ、このマザーボード単体で完全なSwitch 2として機能させることはできないが、搭載されているチップの解析は、次世代機の性能を占う上で極めて重要な手がかりとなる。

このボードはハードウェアアナリストのKurnal氏がXianyu経由で入手し、その後Geekerwan氏に渡ったものとされている。任天堂の厳しい情報管理体制を考えると、このような形でエンジニアリングボードが流出すること自体が驚きだが、これにより多くの謎が解き明かされようとしている。

顕微鏡からFIB-SEMまで駆使した徹底分析

Geekerwan氏は、このマザーボードに対して、顕微鏡観察、チップの研磨によるダイショット撮影、さらにはFIB-SEM(集束イオンビーム走査型電子顕微鏡)を用いた製造プロセスの特定といった、非常に高度な技術的分析を実施した。これにより、SoCの内部構造や各コンポーネントの詳細が明らかになってきた。

マザーボードの物理的なサイズは、現行のNintendo Switchや有機EL版Switchと比較して大型化していることが確認されている。また、従来はドーターボードとして分離されていたカートリッジスロットがメインボードに統合されるなど、設計思想の変化も見て取れる。

基板裏面には、SK hynix製の256GB TLC UFS 3.1ストレージ、MediaTek製のWi-FiおよびBluetoothモジュール、Realtek製のオーディオチップ、そして最大34.4Wの電力供給が可能な2相PMIC(Power Management IC)が搭載されていた。表面には「week 36 2024」というスタンプがあり、製造時期を示唆している可能性がある。

SoC「T239」の全貌:Nvidia Ampereアーキテクチャと8コアCPUの融合

Nintendo Switch 2の性能を左右する最も重要なコンポーネントが、NVIDIA製のSoC(System-on-a-Chip)である。今回の分析で、その詳細が明らかになった。

コードネーム「T239」とは?2021年テープアウトの背景

マザーボード中央に鎮座するこのSoCには、「GMLX30 Rev A1」という部品番号が記されており、チップをデキャップ(封止樹脂を除去)して顕微鏡で観察した結果、NVIDIAのロゴと共に「T239」という名称が確認された。この「T239」というコードネームは、以前からNintendo Switch 2に搭載されるSoCとして噂されていたが、今回その存在が物理的に裏付けられた形となる。

Geekerwan氏の分析によると、このT239チップは2021年にテープアウト(設計が完了し、製造段階に入ること)されたとのことだ。現行Switchに搭載されているTegra X1が2015年のテープアウトであることを考えると、非常に長い開発期間がかけられていることが伺える。これは、Nintendo Switch 2が当初の予定よりも遅れて2025年に発売されるのではないかという市場の噂を補強する材料とも言えるだろう。ちなみに、このSoCのサイズは約207mm²であり、現行SwitchのTegra X1(Mariko/Tegra T210)の2倍近い大きさであるとのことだ。

CPU:8コア Cortex-A78C – OG Switchから約6倍の性能向上、その意味とは?

ダイショット解析の結果、T239のCPUは8コアのARM Cortex-A78Cクラスターで構成されていることが判明した。中央には4MBの共有L3キャッシュが配置され、各コアには256KBの個別L2キャッシュが搭載されている。

リーク情報によれば、CPUのクロック周波数は最大1.1GHzとされており、ドックモードではさらに低くなる可能性も指摘されている。Geekerwan氏が複数の手法(NVIDIA Orin NX開発ボード、Intel Core i7-10700KFのダウンクロック、MediaTek Dimensity 8400のダウンクロック)を用いて行ったCPUパフォーマンスのシミュレーションでは、Steam Deckのマルチコアスコアの約66%程度、Snapdragon 855とApple A12の間、あるいは約10年前のIntel Haswell世代のi7と同等という結果が示された。

2025年の水準として見ると、このCPU性能は控えめと言わざるを得ない。しかし、現行SwitchのTegra X1や、PlayStation 4に搭載されていたJaguar CPUと比較すれば、約6倍もの性能向上を果たしている。コンソールゲーム機の場合、ハードウェアが固定されているため、開発者はドライバのオーバーヘッド削減など、徹底的な最適化を行うことが可能である。そのため、実際のゲームにおけるパフォーマンスは、単純なシミュレーション結果よりも高くなる可能性があり、CPUがボトルネックとなるケースは限定的かもしれない。任天堂が過去のハードウェアで示してきたように、CPUパワーに依存するのではなく、GPUとのバランスやソフトウェアの最適化で最大限のパフォーマンスを引き出す戦略を取る可能性が高いだろう。

GPU:1536 CUDAコアのAmpere世代 – RTXシリーズの遺伝子とDLSSへの期待

GPUコアは、NVIDIAのAmpereアーキテクチャ(GeForce RTX 30シリーズで採用)をベースにしていることが明らかになった。6つのTPC(Texture Processing Cluster)を搭載し、各TPCが2つのSM(Streaming Multiprocessor)、各SMが128基のCUDAコアを持つため、合計で1536 CUDAコアという構成になる。この数値は、これまでのリーク情報とも一致する。

興味深いのは、GPUのレイアウトが一般的なAmpereアーキテクチャとは異なり、2つのTPCが他の4つと離れて配置されている点である。Geekerwan氏は、この不規則な配置がNVIDIAの新しいAda Lovelaceアーキテクチャ(GeForce RTX 40シリーズ)に近い印象を与えると指摘しており、このT239のAmpere GPUが「典型的なAmpereではない」可能性を示唆している。

T239のSMのサイズは、NVIDIA Jetson Orinに搭載されているT234のSMよりも22%小さいものの、RTX 3090に搭載されているGA102のSMよりは大きいとのことである。これは、採用されている製造プロセスやアーキテクチャの細かな差異を反映していると考えられる。

製造プロセスはSamsung「8N」 – 10nmと8nmのハイブリッド技術か

FIB-SEM分析による詳細な調査の結果、T239のゲートピッチ(トランジスタの最小加工寸法を示す指標の一つ)は主に68nmであり、これはSamsungの10nmプロセスのスペックと一致する。しかし、他の側面では8nmプロセスの特徴も見られるとのことである。

比較対象として分析されたNvidia GeForce RTX 3050 TiのGPU「GA107」(NvidiaはSamsung 8nmと公称)では、64nmと68nmのピッチが混在しており、これは8nmのスペックと一致する。

これらの分析結果から、Geekerwan氏は、NVIDIAがT239に使用している「8N」プロセスは、Samsungの10nmプロセスをベースに8nmプロセスの改良を加えたカスタムノードであり、実質的には10nmと8nmのハイブリッド技術である可能性が高いと結論付けている。NVIDIAはおそらくこのチップを「8Nチップ」と呼称するだろう。最先端の5nmや3nmプロセスではないものの、Ampereアーキテクチャは元々8Nプロセス向けに設計されており、これを新しいプロセスに移植するには再設計と再検証が必要となり、コスト増につながる。任天堂がコストと安定供給、そして実績のある技術との親和性を重視した結果と言えるかもしれない。

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メモリとストレージ:次世代機にふさわしい構成と拡張性

SoCだけでなく、周辺コンポーネントもNintendo Switch 2の体験を大きく左右する。

12GB LPDDR5X RAM搭載 – 帯域幅と省電力性のバランス

SoC周辺には、合計12GBのLPDDR5X DRAMが搭載されていることが確認された。これらはSKハイニックス製で、128bitのメモリバス幅を持ち、定格では8533MHzで動作可能である。しかし、Geekerwan氏やTom’s Hardwareは、消費電力や発熱を考慮し、任天堂が現行Switchと同様にメモリクロックをダウンクロックして使用する可能性が高いと指摘している。Tom’s Hardwareは、ドックモードで6400 MT/s、携帯モードでは4266 MT/sに調整されるのではないかと予測している。それでも、現行Switchの4GB LPDDR4と比較すれば、容量、速度ともに大幅な向上であり、より複雑で大規模なゲーム世界の実現に貢献するだろう。

256GB UFS 3.1ストレージ – ロード時間短縮への貢献

内蔵ストレージには、SKハイニックス製の256GB TLC NANDを採用したUFS 3.1が搭載されている。これは現行SwitchのeMMCストレージと比較して読み書き速度が格段に高速であり、ゲームのロード時間短縮や、よりシームレスなゲーム体験の提供に大きく寄与することが期待される。

パフォーマンス予測:PCシミュレーションで探る実力と限界

Geekerwan氏は、T239に近いスペックを持つとされるノートPC向けGPU「Nvidia GeForce RTX 2050」のクロック周波数やメモリ帯域を調整し、Nintendo Switch 2のパフォーマンスをシミュレーションした。ドックモードではGPUクロックを755MHz、携帯モードでは421MHzとし、総グラフィックパワー(TGP)を17~19Wに制限してテストが行われた。

GPU性能比較:ドックモードはGTX 1050 Ti級、携帯モードはSteam Deckに迫る?

シミュレーションの結果、ドックモードでのGPUパフォーマンスは、NVIDIA GeForce GTX 1050 TiにDLSS(Deep Learning Super Sampling)やレイトレーシング機能を加えた程度と推定された。これは、AppleのA18 Pro(次期iPhoneに搭載と噂されるSoC)やApple M1よりも高速だが、QualcommのSnapdragon 8 Gen 3 for Galaxy (Snapdragon 8 Eliteに相当) やAMDのRadeon 780Mといった最新のモバイル向けiGPUには及ばないレベルである。もちろん、Xbox Series SやPlayStation 5、ディスクリートGPUのRTX 3060などとは大きな性能差がある。

一方、携帯モードでのパフォーマンスは、GeForce GTX 750 Tiと同等とされ、これはValveの携帯ゲーム機Steam Deckに近い性能であり、PlayStation 4よりもやや高速である可能性が示唆されている。

現行SwitchのTegra X1と比較すると、ドックモードで約7倍、携帯モードで約7.5倍のGPU性能向上が見込まれる。Nvidiaが過去に「10倍の性能向上」と主張していたという噂があったが、これはおそらくDLSSによるパフォーマンスゲインを含んだ数値ではないかとGeekerwan氏は推測している。

DLSSは「魔法の杖」となるか?低解像度からのアップスケーリング効果

特筆すべきは、NVIDIA独自のアップスケーリング技術であるDLSSの効果だ。DLSSは、低い解像度でゲームをレンダリングし、AI技術を用いて高解像度化することで、グラフィックの負荷を軽減しつつ、見た目の品質を維持または向上させる技術である。Geekerwan氏の分析によれば、DLSSは低解像度設定でも驚異的な効果を発揮し、Nintendo Switch 2のグラフィック性能を引き上げる上で非常に重要な役割を果たすとされている。これにより、携帯モードのような限られた電力供給下でも、より高品質なグラフィック表現が可能になるかもしれない。

AAAタイトルの動作は?Cyberpunk 2077からCoDまで、人気ゲームの移植可能性

Geekerwan氏は、いくつかのAAAタイトルについて、このシミュレーション環境での動作検証を行った。

  • Cyberpunk 2077:
    • ドック品質モード(1080p出力、DLSS品質、内部レンダリング720p):平均30fps
    • ドックパフォーマンスモード(1080p出力、DLSSパフォーマンス、内部レンダリング540p):平均40fps
    • 携帯品質モード(720p出力、DLSS品質、内部レンダリング540p):平均30fps
    • 携帯パフォーマンスモード(720p出力、DLSSパフォーマンス、内部レンダリング360p):平均40fps
      360pでのレンダリングは、Switchの画面サイズであれば許容範囲内と感じるユーザーもいるかもしれない。
  • Black Myth: Wukong:
    • ドックモード(1080p低設定、DLSSバランス):平均30fps
    • DLSSウルトラパフォーマンス設定では40fpsに達するものの、画質の低下は否めない。
    • 携帯モード(720p低設定、DLSSウルトラパフォーマンス):30fps未満
      技術的には移植可能だが、多くの最適化が必要と見られる。
  • Monster Hunter Wilds:
    • ドックモード(720p低設定、DLSSウルトラパフォーマンス):30fps未満
    • 携帯モードではさらに厳しい結果となり、移植は困難と予想される。
  • Kingdom Come Deliverance 2:
    • ドックモード(1080p中設定、DLSSパフォーマンス):30~40fps
    • 携帯モード(720p中設定、DLSSパフォーマンス):平均30fps
  • Call of Duty: Black Ops 6 / Warzone 2.0:
    • ドックモード(1080p低設定、DLSSウルトラパフォーマンス):50fps以上
    • 携帯モード(720p低設定、DLSSウルトラパフォーマンス):40fps以上
      これらのタイトルは、比較的スムーズな移植が期待できそうだ。

CPUはボトルネックにならない?コンソールならではの最適化に期待

興味深いことに、PCベースのCPUシミュレーションでは、Cyberpunk 2077やBlack Myth: Wukongといった比較的負荷の高いタイトルでも、CPU側のフレームレートは十分に確保されており、必ずしもCPUがボトルネックになるとは限らない可能性が示唆された。

前述の通り、コンソールゲーム機はPCやモバイルデバイスとは異なり、ハードウェア構成が固定されている。これにより、開発者は特定のハードウェアに特化した最適化を徹底的に行うことができ、ドライバのオーバーヘッド削減などによって、カタログスペック以上のパフォーマンスを引き出すことが可能である。多くのコンソールがGPU性能を重視し、CPU性能をある程度抑える設計思想(例えばPlayStation 4)を採用してきた歴史を考えると、Switch 2も同様のアプローチを取っているのかもしれない。

「T239」の意義とNintendo Switch 2への期待

今回のリークと分析はNintendo Switch 2の輪郭をより鮮明にした。

現行Switchからの飛躍的な進化と、市場におけるポジショニング

Geekerwan氏の分析から浮かび上がったスペックは、Nintendo Switch 2が現行機から飛躍的な性能向上を遂げていることを示す物だ。CPUは約6倍、GPUは約7倍(DLSSなしの場合)という向上幅は、グラフィック表現の向上だけでなく、より複雑なゲームシステムの実現、ロード時間の短縮、そして将来的には新たなゲーム体験の創出にも繋がるだろう。

一方で、その性能は最先端のゲーミングPCや据え置き型コンソール(PS5, Xbox Series X)には及ばないものの、Steam Deckのような高性能携帯ゲーム機とは競合しうるレベルにあり、任天堂独自の強みである独創的なゲームタイトルと組み合わせることで、市場で独自のポジションを築くことが期待される。

開発の長期化が示唆するものと、今後のロードマップ

T239が2021年にテープアウトされていたという事実は、Nintendo Switch 2の開発が長期間に及んでいることを示唆している。これは、半導体不足やパンデミックの影響、あるいは任天堂がソフトウェアラインナップの準備を整えるためであった可能性など、様々な要因が考えられる。今後、任天堂が5nmや3nmプロセスを採用した世代中盤でのリフレッシュ(性能向上版)を視野に入れている可能性もありそうだ。

Nintendo Switch 2はゲーマーの期待に応えられるか?

今回のGeekerwan氏によるNintendo Switch 2とされるマザーボードの解析は、多くの憶測が飛び交っていた次世代機の姿を、より具体的に描き出すものであった。NVIDIA製SoC「T239」は、8コアのCortex-A78C CPUと1536 CUDAコアを持つAmpereベースのGPUを統合し、Samsungの8nm(実質10nm+8nmハイブリッド)プロセスで製造されている可能性が高いことが明らかになった。

パフォーマンス面では、CPUは現代のハイエンドモバイルSoCと比較すると控えめながらも、現行Switchからは大幅な進化を遂げており、コンソールならではの最適化によって十分な性能を発揮することが期待される。GPUは現行Switchの約7倍の性能向上を果たし、特にDLSS技術の活用により、携帯モードでもリッチなグラフィック体験や、より高いフレームレートでのプレイが可能になるだろう。

Monster Hunter Wildsのような極めて要求スペックの高い最新AAAタイトルの移植は厳しいかもしれないが、Cyberpunk 2077やCall of Dutyシリーズのような人気タイトルの移植は現実的な範囲にあり、Nintendo Switch 2のグラフィック能力は前世代から大きく向上していることは間違いないだろう。

もちろん、これらの分析はリークされたクロック周波数などに基づくPC上でのシミュレーションであり、実際のNintendo Switch 2のパフォーマンスとは異なる可能性がある点には留意が必要である。しかし、今回の情報は、任天堂が次世代機でどのようなゲーム体験を目指しているのか、その一端を垣間見せてくれたと言えるだろう。

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