Intelの次期デスクトップCPU「Nova Lake-S」をめぐり、Core Ultra 5 400S系とみられる2種類の22コアSKU情報が浮上した。ハードウェア情報を継続的に発信しているJaykihn氏が示した未発表SKU情報によると、構成は6基のCoyote Cove Pコア、12基のArctic Wolf Eコア、4基のLP-Eコアで、両SKUにゲーム向け108MB bLLCが載る。片方は倍率ロック解除の125W版、もう片方は65W版とされる。
IntelはこのSKU、コア構成、キャッシュ容量を正式発表していない。読めるのは製品仕様の確定ではなく、Intelが次世代デスクトップでどの方向へゲーム性能を伸ばそうとしているかという設計上のシグナルだ。Core Ultra 5級とみられる製品に108MB級のキャッシュが入るなら、同社のゲーミングCPU戦略は最上位モデル中心の見せ方から、より買いやすい価格帯を含む形へ広がる可能性がある。
22コア構成が狙うのは、コア数競争よりキャッシュ競争だ
今回の数字で目立つのは22コアという総数より、6P+12E+4LP-Eという配分と108MB bLLCの組み合わせである。現行のCore Ultra 9 285Kは8基のPコア、16基のEコア、LP-Eコアなしの24コア構成で、Intel Smart Cacheは36MB、Processor Base Powerは125W、Maximum Turbo Powerは250Wだ。Core Ultra 5級のNova Lake-Sが108MB bLLCを備えるなら、上位Arrow Lakeよりコア数を抑えつつ、ゲームで価値が出やすいキャッシュ領域へ資源を振る設計になる。
ゲーム性能では、平均フレームレートに加え、CPUとメモリの往復、キャッシュミス、フレーム時間のばらつきが体感を左右する。GPUが十分に速い場面や低解像度の競技系タイトルでは、CPU側のデータ供給が詰まりやすい。大容量の最終階層キャッシュは、メモリアクセスを減らし、同じコア数でもゲーム側の待ち時間を短くできる余地を作る。
IntelがbLLCという名称でどの階層、どの共有範囲、どのレイテンシを狙っているのかは、公開資料からは読めない。108MBという容量は従来のSmart Cache容量を大きく超える。単純なコア増ではなく、ゲーム向けワークロードに合わせたキャッシュ増強を中位帯へ持ち込む話として見ると、この未発表SKU情報の意味がはっきりする。
108MB bLLCはAMD X3Dへの対抗軸になり得る
この構成が注目される理由は、AMDの3D V-Cache製品と比較しやすい数字を持つからだ。AMD Ryzen 7 9800X3Dは8コア16スレッド、96MB L3、120W TDPを持つ。Ryzen 9 9950X3Dは16コア32スレッド、128MB L3、170W TDPだ。未発表のNova Lake-S候補が108MB bLLCを備えるなら、キャッシュ容量だけを見ると9800X3Dを上回り、9950X3Dに近い領域へ入る。
L3とbLLCを容量だけで同一視することはできない。キャッシュの位置、接続、レイテンシ、帯域、ゲームエンジン側のアクセスパターンによって、実際の性能は変わる。AMDのX3D製品は3D V-Cacheを商用製品として複数世代展開しており、ゲーム向けCPUとして市場で評価を得てきた。IntelのbLLCが同じような効果を出すかは、ベンチマークと製品価格が出るまで判断できない。
Core Ultra 5級に108MB級のキャッシュが載るという見立ては大きい。AMDのX3Dはしばしば「ゲームなら上位X3Dを選ぶ」という購買判断を作ってきた。Intelが中位帯で大容量キャッシュSKUを用意するなら、勝負は最上位CPUの最高フレームレートから、より広い価格帯でのフレーム時間、消費電力、プラットフォーム費用へ移る。
Intelの公開資料が示すNova Lakeの確定範囲
IntelがNova Lakeという世代を準備していること自体は、複数の公開資料で確認できる。Intelの「Architecture Instruction Set Extensions and Future Features Programming Reference」2026年6月版は、CPUID signature 12_01Hを「Nova Lake desktop hybrid architecture」を支える将来プロセッサ、12_03Hを「Nova Lake mobile hybrid architecture」を支える将来プロセッサとして記載している。同じ資料には、Nova LakeがPREFETCHIT0/1やSM4の対応表にも現れる。
Linux mainlineにも対応の足跡がある。arch/x86/include/asm/intel-family.hには、INTEL_NOVALAKEがfamily 18/model 0x01、INTEL_NOVALAKE_Lがfamily 18/model 0x03として定義され、コメントにCoyote Cove / Arctic Wolfとある。drivers/platform/x86/intel/pmc/core.cでは、Nova Lake-S相当とみられるIDがnvl_s_pmc_dev、Nova Lake-L相当がnvl_h_pmc_devへマッチされている。
IntelとLinux側の将来世代対応が進んでいることは確かだ。22コアSKU、108MB bLLC、125W版と65W版という細部までは、Intel公式資料もLinuxの定義も保証しない。IntelのPDF自体も、設計段階の製品情報は変更され得ると注意している。今回のSKU情報は、この公開済みの土台の上に乗る未発表情報として読むのが妥当である。
18A世代の設計余地と、デスクトップCPUの消費電力
Nova Lakeの各タイルや各SKUがどの製造プロセスで作られるかは正式発表されていない。IntelのクライアントCPU戦略は18Aを強く押し出している。同社の2025年Form 10-Kは、Core Ultra Series 3をIntel 18Aで製造された初期製品と説明し、Intel 18AがRibbonFETとPowerViaを導入し、将来の複数世代のクライアントおよびサーバーCPUに使われる製造プロセスになるとしている。
Intel Foundryが2026年6月に説明したIntel 18A-Pも、次世代製品の設計余地を見る上で手がかりになる。18A-Pはrisk productionに入り、18A比で同一電力時の性能を9%高めるか、同一性能時の電力を18%下げられるとされた。熱抵抗を20-40%、via抵抗を10-30%改善するという。Nova Lake-Sの仕様を直接示すものではないが、高密度なクライアントCPUで性能、熱、電力の余裕をどう確保するかという背景を与える。
消費電力の見方も変わる。今回の未発表情報では、同じ22コア/108MB bLLC構成に125W版と65W版があるとされる。125WのK SKUは高クロックと上限電力の余裕で伸ばし、65W版はプラットフォーム費用や冷却の扱いやすさを重視する可能性がある。ゲーム向けキャッシュの効果が大きいなら、65W版でもCPU待ちを減らせる場面が出る。bLLCのレイテンシやクロック制約が厳しければ、容量の数字だけでX3Dへの対抗力は決まらない。
価格とキャッシュの実装に注目
Nova Lake-Sの22コア/108MB bLLC候補は、AMD X3Dに対する分かりやすい回答になり得る。Core Ultra 5級でその容量を出せるなら、ゲーミングCPUの比較は「何コアか」から「どの価格で、どれだけ低レイテンシにデータを近くへ置けるか」へ進む。
評価に必要な情報はまだ足りない。Intelが正式にどのSKU名で出すのか、108MB bLLCが全コアからどう見えるのか、Pコア/Eコア/LP-Eコアのスケジューリングはどうなるのか、LGA1954世代のマザーボード価格はどの程度になるのか。ゲームベンチマークでは平均値より、1% low、フレーム時間、消費電力、メモリ設定との相性を見る必要がある。
今回の話が事実なら、IntelはNova Lake-Sでゲーム向けの大容量キャッシュを中位帯へ落とし込もうとしている。正式発表で見るべき焦点は、108MBという数字の派手さではなく、そのキャッシュが実際のゲームでどれだけ待ち時間を減らし、AMD X3Dと比べてどの価格で並ぶかである。