Intelが2026年10月にPC向けCPUの価格を約10%引き上げる計画だと、DIGITIMESがサプライチェーン関係者の話として報じた。TechPowerUpが9月8日に紹介した内容では、対象がデスクトップ向けだけなのか、ノートPC向けも含むのかは明らかになっていない。関係者は、値上げの狙いを市場シェアの拡大ではなく、粗利益率の改善と説明している。
報道では、世界のPC出荷台数が2億6,000万台から2027年に約2億5,000万台へ減るとの見通しが示されている。市場の拡大を見込みにくいなか、Intelは販売価格の引き上げで収益性を高めようとしているという。CPU出荷を2億個に戻した場合、シェアが約78%に回復するとの試算も紹介された。ただし、これは報道側の推計であり、Intelの公式見通しではない。直前のPC出荷台数との単純な割り算では78%にならず、算出に使った市場規模や対象範囲の確認が必要だ。
Intelは7月にも一部製品の値上げを認めている。今回の報道は、そうした価格改定に加え、サーバー向けを優先する生産配分や、利益率の低い製品の見直しも伝えている。PC市場への影響を考えるうえでは、値上げ幅だけでなく、どの製品の供給が維持されるのかも重要になる。
10月の値上げ対象は未確定、7月は一部製品に限定
10月の価格改定については、対象製品や適用地域などの詳細がまだ分かっていない。一方、7月の改定では、値上げされた製品と据え置かれた製品があった。
7月3日付のTom’s Hardwareの記事では、Intel広報が一部の消費者向けCPUとサーバー向けCPUの価格改定を認めている。会社側が挙げた理由は、供給網全体のコスト上昇と強い需要だった。
サーバー向けの最上位モデルであるXeon 6980Pは、推奨顧客価格が1万2,460ドルから1万3,955ドルへ上昇した。値上げ額は1,495ドル、上昇率は約12%となる。デスクトップ向けではCore Ultra 7 270K PlusとCore Ultra 5 250K Plusが、モデルに応じて30~50ドル値上げされた。
一方、従来のCore Ultra 200Sシリーズは据え置かれた。最上位のCore Ultra 9 285Kは599ドル、エントリーモデルのCore Ultra 5 225は183~236ドルという推奨顧客価格が維持されている。少なくとも7月時点では、全製品を一律に値上げしたわけではない。
この違いだけで、Intelが売れ筋や利益率の高い製品を選んで値上げしたと断定することはできない。ただ、コスト上昇への対応が製品ごとに異なっていることは分かる。また、推奨顧客価格と実際の取引価格は別であり、PCメーカーの調達価格や店頭価格にどの程度反映されるかは、購入数量や契約条件によって変わる。
続く価格改定、PC本体にも値上がり圧力
Intelの値上げは、今回が初めてではない。DIGITIMES報道では、10月5日の価格改定を、2025年末以降で3回目の値上げと位置づけている。
ただし、過去の報道を並べると、実施時期や対象製品の捉え方には違いがある。2026年2月に製品群に応じて10~15%、3月に約15%の値上げがあったという情報がある一方、3月には韓国ET Newsを出典として、消費者向けCore Ultraシリーズの約10%の値上げも報じられた。5月の追加値上げを見込む報道も出ていた。
2025年比で約30%高い価格水準を目指すとの見方もあるが、これはMinutes Logic Societyによる調査情報として紹介されたもので、Intelが公表した累計値上げ率ではない。各報道が扱う製品や比較時点が同じとは限らず、値上げ率を足し合わせて購入者の負担増を計算することはできない。
PC本体の価格にも上昇圧力がかかっている。中国の店頭ではLenovo、HP、Asus、Acerなどの値上がりが伝えられ、機種によっては1,000元を超える上昇も報じられている。CPUだけでなく、メモリやストレージの価格上昇も重なっているという。
Gartnerは2月の予測で、DRAMとSSDの価格が2026年末までに2025年比で合計130%上昇し、PC価格を17%押し上げると見込んだ。PCの部品コスト全体に占めるメモリの割合は、2025年の16%から23%へ高まるとしている。同社は、採算の確保が難しくなることで、500ドル未満のエントリーPC市場が2028年までに消失する可能性にも言及している。
IDCの6月公表の予測でも、2026年の世界PC出荷台数は11.3%減少する一方、平均販売価格は18.3%上昇するとされた。メモリ不足が大きく改善するのは、早くても2027年末になるという見通しだ。
CPUの約10%の値上げが、そのままPC本体の10%値上げにつながるわけではない。しかし、ほかの主要部品も値上がりするなかでは、PCメーカーがコスト増を吸収できる余地は小さくなる。
サーバー向けを優先する生産配分がPC供給に影響
値上げの背景として報じられているのが、CPUの供給制約だ。AIデータセンター向けの需要が拡大するなか、Intelは自社工場の生産能力をサーバー向けCPUに優先的に振り向けてきた。その結果、PC向けCPUの供給が制約を受けているとされる。
DIGITIMESの報道も、この生産配分の問題を指摘している。サーバー向けをさらに増産する場合、PC向けではTSMCへの製造委託を増やす必要が生じる可能性があるという。自社工場の増産と外部への委託をどう組み合わせるかが、供給量とコストの両方に関わってくる。
市場シェアにも変化が表れている。Mercury Researchの2025年第4四半期の集計では、x86 CPU全体の出荷数量シェアでAMDが過去最高の29.2%に達し、Intelは70.8%となった。AMDはデスクトップ向けで36.4%、ノートPC向けで26.0%、サーバー向けで28.8%を記録している。
この時期、IntelはPC向け、とりわけノートPC向けの出荷が振るわなかった一方、AMDはシェアを伸ばした。Intelの供給制約はその一因とみられるが、この数字だけで生産配分の影響を切り分けることはできない。製品競争力や各社の品ぞろえも、シェアの変動に関わっている。
Intelの業績では、売上高と粗利益率の改善が進んでいる。2026年第2四半期の売上高は前年同期比25%増の161億ドル。粗利益率は12.9ポイント改善して40.4%となり、非GAAPベースでは41.8%だった。データセンター・AI部門の売上高は59%増の63億ドル、クライアント部門は13%増の89億ドルとなった。
平均販売価格の上昇が寄与したほか、長期供給契約を確保する動きもあったとされる。第3四半期については、売上高158億~168億ドル、粗利益率41.0%、非GAAPベースの粗利益率42.0%を見込んでいる。
ただし、半導体製造を担うIntel Foundryは依然として赤字だ。第2四半期の売上高は31%増の57億6,500万ドルだったが、営業損失は20億8,900万ドルとなり、営業利益率は約マイナス36%だった。外部顧客向け売上高は2億9,300万ドルで、部門売上高の約5.1%にとどまるとされる。売上の大部分を自社製品向けの製造が占めるため、どの製品に生産能力を割り当てるかが、製品部門と製造部門の双方に影響する。
供給を増やすうえでは、先端製造プロセスの18Aと14Aも重要になる。BlueFin Research Partnersの調査を紹介した報道によると、18Aではウエハーごとの歩留まりのばらつきが改善し、アリゾナ州のFab 52とオレゴン州の拠点で、それぞれ月1万2,000~1万5,000枚規模への増産が進んでいるという。ただし、ウエハー間のばらつきの解消と、製品全体の歩留まりが目標に達することは同じではない。
18Aを採用した最初のPC向け製品がPanther Lakeだ。改良版の18A-Pについては、オレゴン州のD1Xで量産前の試験生産に入り、将来の本格量産をFab 62へ移す計画が報じられている。外部顧客向けには、18A-Pや18A-PTを中心に展開するとされる。
次世代の14Aは、自社製品向けの試験生産を2027年下期に、本格量産を2028年に始める計画だ。設計に必要なプロセス設計キット(PDK)のバージョン0.9は、2026年10月の提供が予定されている。Intelの財務幹部は、欠陥の削減が22nm世代以来の速さで進んでいると説明している。
もっとも、これらは生産能力を中長期的に増やすための取り組みだ。18Aの増産がどれだけPC向けの供給増につながるかは、サーバー向けとの配分にも左右される。2028年に量産を予定する14Aも、今年10月の供給制約を直接解消するものではない。
低採算製品の見直しが産業用PCやIoTに波及する可能性
価格改定と並ぶ焦点が、利益率の低いCPU製品群の見直しだ。DIGITIMESは、「Small Core」と呼ぶ製品群について、Intelが採算を理由に生産・販売終了を検討していると報じた。産業用PC、IoT、組み込み機器などへの影響が指摘されている。
これらの用途では、低消費電力に加え、同じ製品を長期間にわたって調達できることが重視される。報道によると、Lip-Bu Tan氏は収益性を基準に、供給を継続する製品を選別しているという。チップセット、LAN、Wi-Fi関連製品は今回の検討対象に含まれていないとされるが、見直しの範囲が広がれば、周辺製品にも影響が及ぶ可能性がある。
Intelが一部製品から撤退すれば、QualcommやMediaTekなどに商機が生まれるとの見方もある。産業用PCやIoT、エッジ機器で、Arm系SoCの採用が広がる可能性があるためだ。
ただし、生産・販売終了が正式に発表されたわけではない。対象製品や終了時期、既存顧客への供給期間は不明であり、現段階でIntelの産業用・組み込み向けCPU全体が縮小すると決めつけることはできない。
人員体制の見直しも報じられている。DIGITIMESが取り上げた業界関係者は、追加で5~10%の人員削減が行われる可能性に言及する一方、人員は約7万5,000人で、採用も続けており、現在の規模は適切だとの見方を示したという。いずれも、追加削減についてのIntelの確定発表ではない。
人員数は、集計対象と時点を分けて読む必要がある。第2四半期末のコア人員は7万7,600人とされる一方、2025年末の全体人員は8万5,100人、以前に掲げたコア人員の目標は7万5,000人だった。「全体人員」「コア人員」「目標値」は、そのまま比較できる数字ではない。
長期的には、2022年の約13万2,000人から直近の約8万1,000人へ、約4割減少したとの説明もある。2026年7月にはデータセンター・AI部門の人員削減が確認されたが、人数は公表されず、会社側は製品の提供計画に影響はないと説明した。管理階層も12層から6層へ減らしたとされる。製品構成だけでなく、組織や運営コストも見直して収益性を高めようとしている。
当面の焦点は、10月の値上げがどの製品に適用され、PCメーカーの調達価格や店頭価格にどこまで反映されるかだ。今後のNova Lakeの価格設定や、年末商戦での実売価格も、その影響を判断する材料になる。
産業用PCやIoTの利用企業にとっては、値上げだけでなく、製品の供給継続も重要だ。低採算製品の見直しと生産能力の増強がどう進むかによって、価格だけでなく、選べるCPUの範囲も変わる可能性がある。
