市場調査会社TrendForceは2026年9月7日、第2四半期のDRAM業界売上が前四半期比59.5%増の1547億3000万ドルに達したとの推計を発表した。ところが、出荷した記憶容量を示すビット出荷量は小幅に増えたにすぎない。AIサーバー向けを優先する供給配分と契約価格の上昇が、数量以上の速さで売上を膨らませた。第3四半期の従来型DRAM契約価格は13〜18%上昇へ鈍る見通しだが、この減速を供給回復とみなすと市場の実態を取り違える。

AD

59.5%増とビット出荷量の距離

TrendForceが推計した第2四半期の業界売上1547億3000万ドルは、第1四半期の970億ドルから一気に増えた。同社は主因を従来型DRAMの契約価格上昇に求め、AIサーバー需要によってHBM3E、LPDDR5X、高容量のサーバー向けメモリーモジュール(RDIMM)の出荷も伸びたと説明している。一方、供給者の在庫は過去最低水準にあり、追加供給は主にサーバー用途へ回った。ビット出荷量の伸びは小幅だった。

売上高とビット出荷量は同じ指標ではない。売上は、出荷した容量、販売した製品の構成、平均販売価格(ASP)の組み合わせで決まる。高価格のサーバーDRAMやHBMの比率が上がり、従来型DRAMの契約価格も上がれば、出荷容量が大きく増えなくても売上は伸びる。TrendForceは各要因の寄与率や製品別売上を公開していないため、59.5%のうち何ポイントが価格によるものかまでは分けられない。それでも「市場規模が約6割増えた」ことと「約6割多く生産できた」ことが別なのは明確である。

第1四半期にも同じ現象があった。従来型DRAM契約価格が急上昇し、業界売上は81%増の970億ドルとなった一方、TrendForceは新しいクリーンルームの建設に時間がかかるため、供給増の中心を先端工程への移行に求めていた。第2四半期の売上急増は、供給能力が同じ速度で広がった証拠ではない。

上位3社の寡占度は少し下がり、2位争いは接近

同じTrendForceの売上高基準で計算すると、上位3社の合計シェアは第1四半期の89.7%から第2四半期の87.6%へ2.1ポイント下がる一方、SK hynixとMicronの差は6.4ポイントから1.6ポイントへ縮んだ。

企業 2026年1Q売上シェア 2026年2Q売上シェア 2Q売上高 2Q前四半期比
Samsung Electronics 38.5% 39.4% 609億8000万ドル 63.4%増
SK hynix 28.8% 24.9% 385億9000万ドル 37.9%増
Micron 22.4% 23.3% 360億ドル 65.5%増

上位3社を一枚岩として見ると、この変化を見落とす。TrendForceによれば、Samsungは3社の中でビット出荷量の伸びが最大で、早期に始めたHBM4の量産・出荷と平均販売価格の大幅な上昇が売上を押し上げた。Micronは供給制約の中で、価格が高いサーバーDRAMを優先した。対してSK hynixは、3社で最もHBMのビット出荷構成比が高く、平均販売価格の伸びが相対的に限られたという。これはSK hynixの出荷や収益が減ったという意味ではない。同社のDRAM売上も前四半期比37.9%増えている。

合計シェアが2.1ポイント下がった背景には、成熟工程を担う企業の売上増もある。Nanyaの第2四半期DRAM売上は前四半期比68.3%増の26億1200万ドル、Winbondは75.8%増の9億9800万ドルだった。PSMCのDRAM売上は1億1500万ドルと規模が小さいものの、167.8%増えた。主要3社が先端工程とサーバー用途へ生産を寄せるほど、DDR4やDDR3など、移行先のない需要が台湾勢へ流れる。87.6%はなお強い寡占を示すが、その外側にも価格上昇が広がった。

AD

13〜18%へ鈍る価格、残る供給不足

TrendForceは第3四半期の従来型DRAM契約価格を、前四半期比13〜18%上昇と予測している。伸び率は鈍る。価格水準そのものはさらに上がる見通しであり、確定した取引実績でもない。同社が挙げる減速要因は、PCとスマートフォンの顧客が追加の値上げを吸収しにくくなったことと、高容量モジュールから低容量品へ一部の需要が移ったことだ。供給者の在庫回復は理由に入っていない。

サーバーDRAMでも予測値は同じ13〜18%だが、値上げの当たり方は顧客ごとに異なる。複数年の長期供給契約(LTA)を結んだ米国のクラウド事業者には価格上限が働く一方、契約を持たない顧客や、契約枠を超えて追加調達する顧客が値上げの主な対象になるとTrendForceはみる。契約ごとの数量、価格式、上限値は公表されていない。平均の上昇率だけでは、自社の調達価格を予測できない。

容量を下げる動きも、需要消失と同義ではない。一部のクラウド事業者とサーバーメーカーは、96GB128GB品から32GB64GB品へ構成を移している。CPU不足でサーバー組み立てが遅れ、DRAM在庫が積み上がったことに加え、調達費を抑える狙いがある。ただし、TrendForceはサーバー1台あたりの総搭載容量、完成台数、性能への影響を示していない。低容量モジュールの出荷比率が上がることから、サーバーDRAM需要全体が減ったとは結論できない。

むしろ同社は、2027年のサーバー向けメモリーのビット供給が前年比15〜20%増にとどまり、サーバーCPU出荷の伸びを下回ると初期試算している。CPUの具体的な伸び率は非公開だが、2026年後半からCPU供給が改善すれば、組み立てを待っていたサーバー向けにDRAMが必要になる。第3四半期の減速は、供給不足が解ける局面というより、買い手が容量と契約条件を変えて高値に対応する局面である。

増産の中心は、新工場より先端工程への移行

2026〜2027年に主要3社がビット供給を増やす主な手段として、TrendForceは先端工程への移行を挙げる。微細化で1枚のウエハーから得られる記憶容量を増やす一方、ウエハー投入量は製造工程の改善、クリーンルームの取得、他製品ラインからの転用による小幅な増加にとどまるとの見通しだ。これなら高付加価値品の供給は増やせるが、成熟世代を含む全製品の不足が一斉に解消するわけではない。

各社の発表も、この時間差と供給先の優先順位を示している。Samsungは第2四半期決算でメモリ事業の売上と営業利益が過去最高になり、HBM4販売を拡大したと説明した。それでも2026年後半はサーバーDRAM、企業向けSSD、HBMを中心に需要が伸び、供給制約が続くとみている。SK hynixは約10顧客と長期供給契約を結び、第2四半期にHBM4の量産出荷を開始した。M15Xの量産を前倒しし、Yonginの第1期クリーンルームを2027年初めに開く計画だが、投資は顧客需要と効率を見ながら段階的に実行する。

Micronも2026会計年度第3四半期決算で、複数年の戦略顧客契約とHBM4の量産出荷を公表した。ただし、同社の会計四半期は5月28日までであり、TrendForceが集計した暦年第2四半期とは期間も対象も違う。各社の連結決算を市場売上推計へ足し戻すことはできない。SK hynixとMicronは、需要を長期契約で固めている。3社に共通するのは、増える供給をHBMやサーバー向けへ優先する姿勢である。

第3四半期の契約価格が13〜18%の予測範囲に収まっても、それだけで需給正常化とは判定できない。確認すべきなのは、実際の契約価格、ウエハー投入量とビット出荷量の伸び、低容量モジュールへの移行後も積み上がる総調達容量である。これらがそろって初めて、売上を押し上げる力が価格から数量へ移ったかを見分けられる。