Appleは2025年5月13日(現地時間)、iPhone向けの最新OS「iOS 18.5」およびiPad向けの「iPadOS 18.5」の正式版をリリースした。約1ヶ月以上にわたるベータテスト期間を経ての公開となり、いくつかの注目すべき新機能や改善、バグ修正が含まれる。特にiPhone 13シリーズユーザーにとっては、キャリア提供の衛星通信機能への対応が大きなトピックと言える。
iOS 18.5 / iPadOS 18.5、いよいよ一般公開 – アップデート方法は?
長らく待たれていたiOS 18.5およびiPadOS 18.5が、ついに全ての対応デバイスユーザーに向けて配信開始され、誰でも無料でアップデート可能だ。
アップデート手順は従来通りシンプルなものだ。
- iPhoneまたはiPadの「設定」アプリを開く。
- 「一般」を選択する。
- 「ソフトウェアアップデート」をタップする。
- 画面の指示に従い、iOS 18.5またはiPadOS 18.5をダウンロードし、インストールする。
なお、今回の正式版のビルド番号は「22F76m」であり、直前に開発者向けにリリースされたRC(Release Candidate)版のビルド番号「22F75」から一つ更新されている。RC版をインストールしていたユーザーにも、この最新ビルドへのアップデートが提供される。
ダウンロードサイズはデバイスによって異なるが、例えばiPhone 16 Proでは約8GB近くに達したとの報告もあり、Wi-Fi環境下でのアップデートが推奨される。
iPhone 13ユーザーに朗報!キャリア提供の衛星通信に対応
今回のアップデートで最も注目すべき機能の一つが、iPhone 13シリーズ(iPhone 13、iPhone 13 mini、iPhone 13 Pro、iPhone 13 Pro Max)におけるキャリア提供の衛星通信機能への対応である。 これまで、この種の機能はiPhone 14以降のモデルに限定されていた。
重要な注意点として、これはApple自身が提供する緊急SOSなどの衛星機能とは異なる。 あくまで、T-Mobileが米国でStarlinkを活用して提供しているような、通信キャリアが独自に提供する衛星メッセージングサービスを利用可能にするものである。
つまり、対応キャリアのサービスエリア内であれば、iPhone 13ユーザーも従来の携帯電波が届かない場所で、衛星経由でのテキストメッセージ送受信などが可能になる道が開かれたということだ。今後、対応キャリアが増えれば、その恩恵はさらに広がることが期待される。
日々の使い勝手を着実に改善 – メールアプリとスクリーンタイムの新機能
iOS 18.5は、派手さはないものの、日常的に使うアプリの利便性を向上させる改善も含まれる。
メールアプリ:ユーザーの声に応え、より直感的な操作へ?
iOS 18.2で導入された新しいデザインのメールアプリは、一部ユーザーから操作性に関する戸惑いの声も聞かれた。iOS 18.5では、そうしたフィードバックに応えるかのような、いくつかの調整が加えられている。
- 連絡先写真の表示/非表示が簡単に: メール一覧に表示される送信者のアイコン(連絡先写真)。これを表示するかどうかを切り替えるトグルが、メールアプリ右上の「…」(その他)メニュー内に新設された。 これまでは「設定」アプリの奥深くに潜る必要があったが、より手軽に、従来のシンプルな表示(写真なし)に戻すことが可能になる。
- 「すべてのメール」へのアクセス改善: 新デザインで導入された「プライマリ」「取引」「アップデート」「プロモーション」といったカテゴリ分類。その横に隠れるように存在していた「すべてのメール」表示が、より明確に、独立したタブ(またはそれに準ずる見え方)としてアクセスしやすくなった。 これにより、特定のカテゴリに分類されないメールも含め、全ての受信メールを確認したい場合の操作性が向上する。
これらの変更は、新デザインに慣れないユーザーや、従来のシンプルな表示を好むユーザーにとっては、地味ながらも嬉しい改善と言えるかもしれない。
保護者向け機能強化:スクリーンタイムパスコード使用時に通知
子どものデバイス利用時間を管理する「スクリーンタイム」機能にも、保護者にとって有用な機能が追加された。 子どもがScreen Timeのパスコードを(何らかの方法で知ってしまい)入力して制限を解除しようとした場合、保護者のデバイスに通知が届くようになる。これにより、子どもが意図せず制限を回避してしまう事態を、保護者がより早期に把握できるようになる。
見た目もリフレッシュ – 新しい「プライドハーモニー」壁紙が登場
毎年恒例となっているPride月間(6月)を前に、Appleは今年も新しいプライドテーマの壁紙「プライドハーモニー」を追加した。

この壁紙は静止画ではなく、以下の様な特徴を備えている:
- 鮮やかな虹色のストライプが特徴的。
- iPhoneのロック解除や傾きに合わせて、色が変化したり、位置が動いたりするインタラクティブな要素を持つ。
- 常時表示ディスプレイ対応機種では、スリープ(非アクティブ)状態になると、黒い帯と色付きの帯が交互に表示され、全体的に暗くなるアニメーションが適用される。
- スリープから復帰させると、黒い帯がアニメーションと共に消え、画面が再び色彩で満たされる。
- ロック画面で上にスワイプすると、ストライプが波打つように動くアニメーションも楽しめる。
この「プライドハーモニー」壁紙は、同時にリリースされたwatchOS 11.5を搭載したApple Watchでも利用可能である。 Appleは合わせて、新しいプライドエディションスポーツバンドも発売している。
その他の改善点とバグ修正 – 細かな配慮も随所に
上記の主要な変更点以外にも、iOS 18.5/iPadOS 18.5にはいくつかの改善とバグ修正が含まれる。
- Apple TVアプリでの購入体験向上: テレビやゲーム機など、サードパーティ製デバイス上のApple TVアプリでコンテンツを購入する際に、手元のiPhoneやApple Watchを使って認証・決済を完了できるようになった。
- Apple Vision Proアプリの不具合修正: 特定の状況下でApple Vision Proアプリが黒い画面を表示してしまう問題が修正された。
- AppleCare & Warranty表示の改善: 「設定」アプリ内の「AppleCareと保証」セクションの表示が、よりクリーンなレイアウトに更新された。 機能的な変更はないが、視認性が向上している。
- セキュリティとパフォーマンス: 上記以外にも、複数のセキュリティ脆弱性の修正や、パフォーマンス改善のための内部的な調整が含まれると発表されている。 AppleInsiderのテストによると、ベータ期間中から比較的安定しており、目立ったバグやバッテリー消費の問題は報告されていない。
なお、iPadOS 18.5に関しては、iOS 18.5と共通の変更点(Pride壁紙、Screen Time通知、TVアプリ購入認証など)が主であり、iPad固有の大きな新機能は含まれていないようだ。
iOS 18.5の位置づけと次期OSへの期待 – iOS 19への布石か?
今回のiOS 18.5は、iOS 18.4など過去のアップデートと比較すると、機能追加の規模としてはやや小規模な印象を受ける。 これは、Appleが現在、次期メジャーバージョンである「iOS 19」の開発に注力していることの表れとも考えられる。
iOS 19は、来月開催されるWWDC(世界開発者会議)での発表が見込まれており、「Apple Intelligence」と呼ばれる新しいAI機能群の本格導入や、visionOSにインスパイアされたとされる大幅なUIデザインの刷新(半透明やガラスのような効果)など、近年まれに見る大きな変化が噂されている。
そうした観点から見ると、iOS 18.5は、現行OSの安定性を高め、いくつかのユーザーフィードバックに対応しつつ、来るべきiOS 19への移行をスムーズにするための”地ならし”、あるいは”橋渡し”的なアップデートと位置づけることができるかもしれない。
いずれにせよ、今回のアップデートで追加された新機能や改善点は、特定のユーザーにとっては日々のiPhone/iPad体験をより快適にするものである。特にiPhone 13ユーザーや、メールアプリの使い勝手に悩んでいた方、小さなお子さんを持つ保護者の方は、アップデートを検討する価値がある。