テクノロジーと科学の最新の話題を毎日配信中!!

Exynos 2600の静かなる革命:元Huaweiの頭脳で自社GPU開発、2nmプロセスで打倒Snapdragonへ

Y Kobayashi

2025年6月20日9:04AM

2026年の登場が噂される次期スマートフォン「Galaxy S26」。その心臓部となるであろう次世代SoC(System-on-a-Chip)、「Exynos 2600」を巡り、これまでにも様々な情報が飛び交っているが、新たな情報によれば、Samsung悲願の2nmプロセス採用に加え、長年続いたAMDとの協業を転換し、完全自社設計のGPUを搭載する可能性が濃厚になってきた。さらにその開発の裏には、かつてのライバル、Huaweiから招かれたGPU開発リーダーの存在が囁かれているという。

スポンサーリンク

静かに進む「脱・依存」計画、Exynos 2600の二大革新

長年、SamsungのExynosチップは、QualcommのSnapdragonシリーズと比較され、特にグラフィックス性能や電力効率の面で厳しい評価にさらされてきた。その雪辱を果たすべく、SamsungはExynos 2600で二つの大きな賭けに出ようとしている。それは、製造プロセスとGPUアーキテクチャの双方における、抜本的な改革だ。

最先端2nmプロセスへの挑戦 – TSMCを猛追するSamsungの意地

複数の情報筋によると、Exynos 2600はSamsung Foundryの第2世代2nmプロセス(SF2)で製造される見込みだ。これは、現在主流の3nmプロセスからさらに微細化を進めるもので、半導体の性能と電力効率を飛躍的に向上させる可能性を秘めている。

微細化は、同じ面積のチップにより多くのトランジスタを詰め込むことを可能にし、処理能力の向上と消費電力の削減を両立させる。特にSamsungが採用するGAA(Gate-All-Around)技術は、従来のFinFET構造よりも電流リークを抑え、より精密な電流制御を実現するとされる。もしSamsungがTSMCに先駆けて2nmチップの量産に成功すれば、それは単なる技術的優位性の誇示に留まらない。Appleという最大の顧客をTSMCに奪われたSamsung Foundryにとって、その技術力を世界に証明し、再び業界の主導権を握るための重要な一歩となるだろう。

AMD RDNAとの決別? 自社GPU「Xclipse 960」への道

もう一つの、そしておそらくはこちらの方がより大きな賭けとなるのが、GPUの自社開発への本格的な舵切りだ。SamsungはExynos 2200以降、AMDのRDNAアーキテクチャをベースにした「Xclipse」GPUを搭載してきた。しかし、Exynos 2600に搭載されると噂される「Xclipse 960」は、このRDNAベースから脱却し、Samsungがゼロベースで設計する初のGPUになる可能性があるという。

なぜ今、自社開発なのか。AMDとの協業は一定の成果を上げたものの、AppleのAシリーズチップやQualcommのAdreno GPUが持つ、CPU、GPU、そしてソフトウェアまでを一体で最適化した際の圧倒的なパフォーマンスには、あと一歩及ばなかったのが現実だ。Appleシリコンの成功が示すように、ハードウェアの完全な垂直統合は、究極のパフォーマンスと効率性を引き出す鍵となる。コスト削減やQualcommへの依存度低減という経営的な側面以上に、技術的な覇権を握るためには避けて通れない道だとSamsungは判断したのではないだろうか。

なぜ今、HuaweiのDNAなのか? 禁断のタッグが意味するもの

この野心的な自社GPU開発プロジェクトの中心に、驚くべき人物の名前が浮上している。Weiboのリーカー「Fixed Focus Digital」によれば、元HuaweiのGPU開発を率いたベテラン技術者が、SamsungのGPUチームを主導している言うのだ。かつての最大のライバルの一角から、中核技術のキーパーソンを引き抜く。この「禁断のタッグ」は、Samsungの本気度を雄弁に物語っている。

逆境が生んだ怪物 – Huawei「Kirin」と「Maleoon」GPUの実力

なぜHuaweiなのか。その答えは、同社のチップ部門HiSiliconが開発したKirinプロセッサと、その内蔵GPU「Maleoon」の実力にある。米国の厳しい制裁により最先端の製造技術へのアクセスを絶たれながらも、Huaweiは独自の技術で高性能なチップを開発し続けてきた。特に最新のKirin 9020に搭載された「Maleoon 920」GPUは、限られたリソースの中で驚くべきパフォーマンスを発揮し、その設計能力の高さを証明した。

この逆境で培われたノウハウと設計思想は、Samsungにとって計り知れない価値を持つ。最先端の製造プロセスを持つSamsungと、制約の中で性能を絞り出すことに長けた元Huaweiの頭脳。この二つが融合した時、これまでのExynosの常識を覆す化学反応が起きるかもしれない。

元ライバルの頭脳は、Exynosの長年の課題を解決できるか

Exynosが抱えてきた課題は、単なるピーク性能の低さだけではない。持続的なパフォーマンスの維持、つまりスロットリング(発熱による性能低下)の問題や、特定のゲームやアプリケーションにおける最適化不足も長年指摘されてきた。

Huaweiから来たリーダーは、こうした課題を克服するための新たな視点をもたらす可能性がある。チップ全体の電力効率を最大化するアーキテクチャ設計や、ドライバレベルでの最適化など、Samsungがこれまで見落としてきた、あるいは不得手としてきた領域にメスを入れることが期待される。

スポンサーリンク

性能は本物か?リークが示す「覚醒」の兆し

では、この新たなExynos 2600は、一体どれほどの性能を発揮するのだろうか。まだ公式発表前の段階ではあるが、リーカー@OreXdaなどが伝える初期のベンチマーク情報は、そのポテンシャルの高さを期待させるものだ。

CPUもGPUも大幅進化 – Exynos 2400を過去にするパフォーマンス

リークされた情報によれば、Exynos 2600はCPU性能を測るGeekBench 6において、シングルコアで約2,950点、マルチコアで約10,200点を記録したという。これは現行のExynos 2400からシングルコアで約30%もの向上を意味し、マルチコア性能においてはAppleのA18 Proに匹敵、あるいは凌駕する可能性さえ示唆している。

https://twitter.com/OreXda/status/1934983860602933581

さらに驚くべきはGPUの性能だ。3DMark Wild Life Extremeテストで約5,800点、GFXBenchのAztec Ruinsテスト(1440p/Offscreen)で85fpsというスコアは、Exynos 2400比で実に60%もの向上となる。もしこの数値が真実であれば、Exynosはついにグラフィックス性能においてもトップ戦線に躍り出ることになる。

数字の裏にある現実 – 初代GPUへの期待と不安

もちろん、これらのリークはあくまで初期段階のものであり、鵜呑みにはできない。特に、自社開発の初代GPUとなれば、未知数の部分が大きい。ベンチマークスコアは高くても、実際のゲームプレイにおける安定性や互換性、ドライバの成熟度など、乗り越えるべきハードルは山積しているはずだ。初代製品が、長年熟成を重ねてきた競合のGPUといきなり互角に渡り合えるかは、楽観視できないのが実情だろう。

Mongooseの悪夢は繰り返されるか – Samsungの前に立ちはだかる壁

Samsungの挑戦の歴史を振り返る時、多くの人の脳裏に「Mongoose」の記憶が蘇るのではないだろうか。かつてSamsungが手掛けた自社開発CPUコア「Mongoose」は、鳴り物入りで登場したものの、期待された性能を発揮できずにSnapdragonに後塵を拝し、最終的に開発中止に追い込まれた苦い過去がある。

今回の自社GPU開発は、このMongooseの二の舞になるリスクをはらんでいる。ゼロからの開発は膨大なリソースと時間を要し、成功が保証されているわけではない。もし初代GPUが期待外れに終われば、Samsungは再び大きな戦略転換を迫られることになるだろう。

しかし、SamsungはMongooseの失敗から多くを学んだはずだ。外部の血(元Huaweiの頭脳)を導入するという決断は、その表れの一つと言える。成功すれば、SamsungはAppleに並ぶ、チップレベルでの完全な垂直統合を実現した真の巨人となる。それは、Galaxyという製品が、ハードウェアとソフトウェアの両面で前例のないレベルの最適化を遂げる未来を意味する。

Exynos 2600と、それに搭載されるであろう初の自社開発GPU。その成否は、単にGalaxy S26の性能を左右するだけでなく、Samsungの半導体事業、ひいてはモバイル業界全体の未来を占う、極めて重要な試金石となるに違いない。


Sources

Follow Me !

\ この記事が気に入ったら是非フォローを! /

フォローする
スポンサーリンク

コメントする