Appleが2025年後半の発表を目指していると噂される次期「M5 iPad Pro」。その実機とされるデバイスのリーク動画が突如公開され、搭載される次世代SoC「Apple M5」チップの驚くべき性能の一端が明らかになった。CPU性能は堅実な進化に留まる一方、GPU性能は飛躍的な向上を遂げている可能性が示唆されており、Appleの次世代チップ戦略における「選択と集中」が浮き彫りとなっている。本記事では、複数のリーク情報を徹底的に分析し、M5チップの性能、そして次期iPad Proの全貌に迫る。

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発表前夜の衝撃、ロシアから発信された「未来」

今回のリーク情報は、ロシアの著名YouTuber「Wylsacom」によってもたらされた。同チャンネルは2024年にも、発表前の「M4 MacBook Pro」の開封動画を公開した実績があり、今回のリークの信憑性を高めている。動画には、M5チップを搭載するとされる13インチ・256GBモデルのiPad Proが登場。M4搭載の現行モデルと比較しながら、その詳細が明らかにされた。

この動きと呼応するように、米連邦通信委員会(FCC)のデータベースからも、未発表のiPad ProとMacBook Proに該当する可能性のあるモデル番号が複数発見されている

  • MacBook Pro: A3434
  • 11インチiPad Pro: A3357 (Wi-Fi), A3358/A3359 (Cellular)
  • 13インチiPad Pro: A3360 (Wi-Fi), A3361/A3362 (Cellular)

これらの状況証拠は、Appleが10月か11月にも新製品発表イベントを開催する可能性を強く示唆していると言えるだろう。

ベンチマークが暴くM5チップの性能、「CPUの堅実」と「GPUの飛躍」

リーク動画の中で最も注目すべきは、ベンチマークソフト「Geekbench 6」および「AnTuTu」によって計測されたM5チップの性能だ。そこから見えてきたのは、CPUとGPUで進化の方向性が大きく異なる、Appleの明確な設計思想である。

CPU性能:約10〜15%の堅実な進化

まずCPU性能を見ていこう。Geekbench 6のスコアは以下の通りだ。

M5 iPad Pro (リーク値)M4 iPad Pro (比較値)向上率
シングルコア4,1333,748約10.3%
マルチコア15,43713,324約15.9%

シングルコアで約10%、マルチコアで約16%という向上率は、世代間の進化としては決して驚くべき数字ではない。「堅実な進化」あるいは「順当なアップデート」と評するのが妥当だろう。

興味深いのは、リークされたM5チップの仕様が、現行M4チップのベースモデル(256GB/512GBモデルに搭載)と酷似している点だ。

  • CPUコア構成: 3つの高性能コア + 6つの高効率コア (M4ベースモデルと同一)
  • クロック周波数: 4.41GHz (M4とほぼ同一)

コア数もクロック周波数も据え置かれながら、なぜ10〜15%の性能向上が達成できたのか。その鍵を握るのが、L2キャッシュの増量とアーキテクチャの改良だと考えられる。リーク情報によれば、M5のL2キャッシュは6MBと、M4の4MBから50%増加している。 キャッシュメモリはCPUの処理効率に直結するため、この増量が性能向上に直接寄与したことは間違いない。加えて、TSMCの改良された3nmプロセス「N3P」の採用による動作効率の改善や、内部的な命令処理の最適化といったアーキテクチャレベルでの見直しが行われた結果が、このスコアに表れたと分析できる。

GPU性能:35%超の飛躍、ゲーミングとAIの新時代へ

CPUの堅実な進化とは対照的に、GPU性能は目を見張るほどの飛躍を遂げている。

M5 iPad Pro (リーク値)M4 iPad Pro (比較値)向上率
Geekbench 6 Metal74,56855,702約33.9%

30%以上の大幅な向上は、単なる世代交代とは言えないほどの大きなジャンプだ。 この背景には、iPhone 17 Proに搭載された「A19 Pro」チップのアーキテクチャが大きく影響していると考えられる。Appleは近年、iPhone向けのAシリーズチップで採用したGPUアーキテクチャを、その後のMシリーズチップに応用する傾向がある。A19 ProがNeural Engine(AI処理用プロセッサ)との連携を深め、AIを活用した画像レンダリング技術などでグラフィックス性能を大幅に向上させたと報じられていることから、M5も同様の恩恵を受けている可能性が高い。

このGPU性能の飛躍は、iPad Proのユースケースを大きく変える潜在力を秘めている。

例えば、AAAクラスの本格的なゲーム体験だ。レイトレーシングなどの高度なグラフィックス処理を、より高解像度・高フレームレートで快適にこなせるようになるだろう。また、動画編集や3Dモデリングといったプロフェッショナルなクリエイティブ作業においても、レンダリング時間の短縮やプレビューのスムーズさといった形で、その恩恵を直接的に体感できるはずだ。

RAMは12GBへ標準増量、マルチタスク性能を底上げ

今回のリークでは、256GBのベースモデルに12GBのRAMが搭載されていることも確認された。 現行のM4 iPad Proでは、同容量モデルのRAMは8GBであり、これは50%の大幅な増量となる。

このRAM増量は、特にiPadOSのマルチタスク機能「ステージマネージャ」の使い勝手を向上させる上で重要な意味を持つ。複数のアプリケーションを同時に、よりスムーズに動作させることが可能になり、「PCの代替」としてのiPad Proの価値をさらに高めることになるだろう。

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外観は踏襲、変化は内部に集中

リークされたデバイスを見る限り、M5 iPad Proのデザインは現行のM4モデルからほとんど変更されていない。 超薄型の筐体や背面のカメラ配置もそのままだ。

いくつかの微細な変化として、背面の「iPad Pro」という製品ロゴや規制に関する刻印がなくなっている点が挙げられる。これは近年のiPhoneでも見られるミニマリズムを追求したデザインのトレンドを踏襲したものだろう。

一方で、付属品には変化が見られる。同梱されるUSB-C充電器が、現行の20Wから45Wへと強化されているとの報告がある。 これが事実であれば、充電速度の大幅な向上が期待できる。

このリークが示すAppleの次世代戦略

今回のリークからは、Appleの今後の製品戦略や開発思想を読み解くことができる。

iPad Proは「最新チップの先行投入」の試金石か

AppleはM4チップをMacより先にiPad Proでデビューさせた。今回のリークが正しければ、M5チップも同様にiPad Proが最初の搭載デバイスとなる可能性が高い。タブレットという、MacBookに比べて熱設計の制約が厳しいデバイスに敢えて最新チップを先行投入する戦略。これは、新しい製造プロセスの習熟度を高め、電力効率や発熱に関するデータを大規模に収集するための「試金石」としてiPad Proを位置付けているのではないだろうか。

M5 MacBook Airは「M3 Pro超え」の性能を実現する可能性

今回のM5のベンチマークは、2026年に登場が予測される次期「M5 MacBook Air」の性能を占う上でも極めて重要な指標となる。

iPad ProとMacBook Airは、共にファンレス(冷却ファン非搭載)のパッシブ冷却システムを採用するという共通点を持つ。 そのため、今回のM5 iPad Proのスコアは、M5 MacBook Airの性能にかなり近いものになると考えられる。

M4世代のiPad ProとMacBook Airの性能差を考慮して今回のM5のスコアを当てはめると、M5 MacBook Airのマルチコアスコアは17,000に迫る可能性がありそうだ。

これは、M3 Pro搭載のMacBook Pro(マルチコアスコア約15,300)を上回る驚異的な数値となる。もしこれが実現すれば、MacBook Airはプロ向けのMacBook Proに匹敵するCPU性能を手に入れることになり、製品ラインナップにおけるAirの位置づけを大きく変えるインパクトを持つだろう。

M5チップは、CPUの地道な改良で電力効率を高めつつ、GPU性能を飛躍的に向上させることで、次世代のアプリケーション体験を切り拓く。今回のリークは、Appleが描く未来の一端を我々に見せてくれたと言えるのかもしれない。数週間以内に予想される正式発表が、今から待ち遠しい。


Sources