市場調査会社TrendForceは2026年10月8日、2027年の世界ノートPC出荷台数が前年比で1桁台前半の減少になるとの予測を発表した。DRAMやCPUの価格高騰が続き、メーカーがコスト上昇分を販売価格に大きく転嫁した場合、減少幅は1桁台後半まで拡大する恐れがあるという。2026年にはCPUの供給状況が改善したものの、メーカーが以前に安く調達した部品の在庫を使うことで、製品価格の上昇が一時的に抑えられている。しかし、その在庫も徐々に減少している。TrendForceの最新予測が示しているのは、ノートPC市場の課題が、必要な部品を確保できるかどうかから、値上がりしたPCを消費者が購入できるかどうかへ移りつつあるということだ。

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2026年の出荷予測は改善、それでも需要回復とは言えない

TrendForceは2026年の世界ノートPC出荷台数について、7月時点では前年比13.6%減と予測していたが、9月には9.4%減へと上方修正した。

ただし、これは市場全体の需要が本格的に回復したことを意味しない。

同社の発表を時系列で整理すると、部品の供給状況が改善することと、消費者の購買意欲が回復することは、必ずしも一致しないと分かる。

発表日 予測対象年 世界ノートPC出荷台数の前年比予測 主な背景・条件
2026年7月1日 2026年 13.6%減 上期への出荷前倒し、下期の需要減速、販売価格の上昇
2026年9月4日 2026年 9.4%減 CPU供給の改善、部品の前倒し調達、買い替え需要の前倒し、法人需要の安定
2026年10月8日 2027年 基本予測は1桁台前半の減少 製品構成の見直しや一部コストの吸収によって、値上げを抑えられる場合
同上 2027年 1桁台後半の減少に拡大する恐れ 部品価格の高騰が続き、販売価格への転嫁が進む場合

※いずれもTrendForceによる予測であり、実績ではない。2027年の2つの見通しは、基本予測と、状況が悪化した場合のシナリオを分けたもの。具体的な減少率は公開資料には示されていない。

2026年の出荷予測が改善した主な理由の一つは、CPUの供給状況が好転したことだ。

TrendForceによると、2026年第2四半期以降、CPUの調達が容易になったことで、PCメーカーは生産に必要な部品を確保しやすくなった。

一方、DRAMやSSDの価格上昇が続いているため、メーカーは将来の値上がりに備えて部品の調達を前倒ししている。

消費者側でも、今後のPC価格の上昇を見越して、買い替え時期を早める動きがあったという。

こうした要因によって2026年上期の出荷台数が押し上げられ、通年の減少幅も当初予測より縮小した。

9月時点のTrendForceの予測では、2026年の世界ノートPC出荷台数は、上期と下期で約53対47の割合になると見込まれていた。

例年は年後半が需要のピークになりやすいが、2026年は上期に出荷が集中するという異例の構成だ。

この背景には、メーカーの前倒し調達と、消費者による買い替えの前倒しがある。

しかし、将来の購入予定を早めた場合、その分だけ翌期以降の需要は減少する可能性がある。

例えば、2027年にPCを買い替える予定だった利用者が、値上がりを避けるために2026年中に購入すれば、2026年の販売は増えるものの、2027年に購入する必要はなくなる。

つまり、2026年の出荷台数が当初の予測を上回っても、それが2027年の需要回復につながるとは限らない。

また、メーカーから販売店や流通業者への出荷が増えたとしても、最終的な消費者への販売が同じように増えているとは限らない。

2026年の出荷減少幅が縮小したことと、PC市場の需要が持続的に回復していることは、分けて考える必要がある。

CPU・DRAM・SSDが部品原価の68%に、安い在庫も減少

ノートPCメーカーが直面している最大の問題の一つが、主要部品の価格高騰だ。

TrendForceによると、2026年第3四半期には、CPU・DRAM・SSDの3種類だけで、標準的なノートPCの部品原価全体の約68%を占めるようになった。

この数値には、比較の基準となる製品が設定されている。

TrendForceは、2025年第1四半期に希望小売価格900米ドルだった標準的なノートPCを基準に、主要部品の価格上昇が製造コストに与える影響を分析した。

当時、CPU・DRAM・SSDが部品原価全体に占める割合は約45%だった。

しかし、その後1年以上にわたって主要部品の値上がりが続いた結果、2026年第3四半期には68%まで上昇したという。

ここで注意したいのは、68%という数字は、ノートPCの販売価格に占める割合ではないという点だ。

これは、製品の組み立てに必要な部品原価の合計、いわゆるBOM(Bill of Materials)コストに占める割合を示している。

実際の販売価格には、部品代だけでなく、組み立て費用や物流費、販売経費、メーカーや流通業者の利益なども反映される。

そのため、主要部品が部品原価の68%を占めることと、900ドルのノートPCのうち612ドルがCPU・DRAM・SSDの代金に当たることは、同じ意味ではない。

さらにTrendForceは、9月4日の分析で、部品価格の上昇が販売価格に与える影響も試算している。

それによると、2025年第1四半期と同等の製品について、当時と同じ粗利益率を2026年第3四半期にも維持しようとした場合、販売価格を約80%引き上げる必要があるという。

ただし、これは粗利益率を維持するという条件に基づく試算だ。

実際に各メーカーがノートPCを一律に80%値上げしたという意味ではない。

メーカーは市場競争や需要の動向を考慮し、利益率を引き下げたり、製品仕様を見直したりすることで、販売価格の上昇を抑える場合もある。

また、部品の調達価格が上がっても、それがすぐに店頭価格へ反映されるとは限らない。

メーカーが以前に安く購入した部品や完成品の在庫を保有していれば、その在庫を使うことで、当面の価格上昇を抑えられるからだ。

しかし、安く調達した在庫を使い切れば、新たに製造するPCには、現在の高い部品価格が反映されることになる。

そうなれば、メーカーは難しい選択を迫られる。

販売価格を引き上げれば、消費者の購入意欲が低下する恐れがある。一方、値上げを抑えるためにコストを自社で負担すれば、粗利益率が低下する。

製品の仕様を見直し、メモリやSSDの容量を減らすことで、原価を抑える方法も考えられる。

実際、こうした動きはすでに始まっている。

TrendForceは9月30日の調査で、PCメーカーが標準的なノートPCに搭載するSSDの容量を減らし、SSDの調達量と1台当たりの平均搭載容量を抑えていると指摘した。

一方、PC向けDRAMについては、2027年も供給不足が続く可能性があるとみて、積極的な調達を続けているという。

つまり、同じノートPCに使われる部品でも、メーカーの対応は異なる。

SSDについては、確保済みの在庫を活用しながら、製品に搭載する容量を減らして原価を抑える。一方、DRAMについては、将来の供給不足に備えて必要な数量を確保する。

消費者にとっては、販売価格が据え置かれていても、同じ予算で購入できるPCのメモリやストレージ容量が減る可能性がある。

そのため、今後ノートPCを買い替える際には、価格だけでなく、搭載されているDRAMやSSDの容量も確認する必要がある。

値札だけを比較していると、メーカーがどのような仕様変更によって価格上昇を抑えているのか、見落とす可能性がある。

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NANDの供給が改善すれば、ノートPCも安くなるのか

TrendForceは2027年のメモリ市場について、DRAMとNANDフラッシュでは供給状況が異なると予測している。

DRAMは引き続き供給が厳しい一方、SSDに使われるNANDフラッシュについては、2027年後半に供給制約が緩和される可能性があるという。

この違いには、AI関連の需要が半導体メーカーの生産能力に与える影響が関係している。

DRAMでは、AI向けのHBM(広帯域メモリ)やサーバー用メモリへの需要が急増している。

HBMは、複数のDRAMチップを積層し、GPUなどのプロセッサーの近くに配置することで、大量のデータを高速に転送するメモリだ。

TrendForceの7月30日の分析によると、HBMの製造には、一般的なDRAMより多くのウエハー投入が必要になる。

そのため、DRAM工場で処理するウエハーの枚数が増えても、出荷できるメモリ容量が同じ割合で増えるとは限らない。

また、メモリメーカーが利益率の高いHBMやサーバー用DRAMの生産を優先すれば、PC向けDRAMに割り当てられる生産能力が限られる可能性がある。

つまり、PCの需要が弱くても、AI向け製品に生産能力が振り向けられることで、PC用DRAMの価格が下がりにくくなる。

実際、TrendForceは9月30日の予測で、2026年第4四半期の汎用DRAMの契約価格が前四半期比10〜15%上昇すると見込んでいる。

NANDフラッシュについても、契約価格は前四半期比15〜20%上昇する見通しだ。

価格上昇の勢いが鈍化する可能性はあるものの、これは値下がりを予測したものではない。

また、これらは半導体部品の契約価格に関する予測であり、ノートPCの店頭価格が同じ割合で上昇することを意味しない。

一方、NANDフラッシュについては、2027年後半に供給が改善する可能性がある。

TrendForceは、メモリセルの積層数を増やす技術の進展や、新工場の稼働によって、生産できる記憶容量が増えるとみている。

そこにスマートフォンやPCなどの需要低迷が重なれば、供給不足が緩和される可能性がある。

ただし、供給状況が改善する理由の一つは、消費者がスマートフォンやPCを購入しなくなることでもある。

したがって、NANDの需給が緩和することと、ノートPC市場の需要が回復することは、必ずしも同じではない。

さらに、NANDの供給見通しについては、業界内でも意見が分かれている。

MicronのSanjay Mehrotra CEOは、9月30日に公開した決算説明資料の「Market outlook」で、2027年と2028年のメモリ・ストレージ市場は、2026年よりも需給が逼迫するとの見方を示した。

同氏は、NANDとDRAMの両方で、供給制約が続くと予測している。

つまり、2027年後半にNANDの供給制約が緩和するとみるTrendForceと、2027〜2028年も供給不足が続くとみるMicronでは、見通しが一致していない。

どちらも将来の予測であり、現時点で2027年後半にNANDが必ず値下がりすると判断することはできない。

また、半導体の供給能力を増やすには時間がかかる。

Micronの同じ決算説明資料によると、米アイダホ州の「ID1」工場では、2027年半ばに最初のウエハーを生産する予定だ。

台湾の銅鑼拠点でも、2027年半ばには一定規模の製品出荷が始まる計画となっている。

一方、シンガポールで建設中の新しいNAND工場が生産を開始するのは、2028年後半の予定だ。

Micronは、新しいDRAMやNANDの工場が生産を開始しても、市場への供給量が大きく増えるまでには、数四半期かかると説明している。

つまり、新工場で最初のウエハーが生産される時期と、市場に十分な量の半導体が供給される時期は異なる。

仮に2027年後半にNANDの価格が下がったとしても、CPUやDRAMの価格が高止まりすれば、ノートPC全体の値下げ余地は限られる。

今後のPC価格を見通すには、「メモリ価格」という一つの数字で判断するのではなく、DRAMとNAND、それぞれの供給状況や価格動向を確認する必要がある。

中国以外の生産比率が低下へ、コスト削減を優先する動きも

ノートPCメーカーがコストを抑えるために見直すのは、部品の調達方法だけではない。

生産拠点の配置も、今後の重要な検討課題になる可能性がある。

TrendForceは10月8日の発表で、世界のノートPC生産に占める中国以外の地域の割合が、2025年の約24%から2026年には21%へ低下し、2027年には20%を下回る可能性があると予測した。

ただし、この見通しには、関税による圧力が現在より強まらないという条件がある。

これまで多くのPCメーカーは、地政学的なリスクや関税政策への対応として、中国以外の国・地域への生産移管を進めてきた。

しかし、新たな生産拠点を整備すると、部品の調達や物流、サプライチェーンの管理などに追加費用が発生する場合がある。

特に、関連する部品メーカーや物流網が十分に整っていない地域では、既存の生産拠点と比べてコストが高くなる可能性がある。

CPUやDRAMなどの価格上昇が続くなか、こうした追加費用もメーカーにとって無視できない負担となっている。

そのためTrendForceは、関税などの政策リスクがこれ以上強まらなければ、メーカーが生産拠点を選ぶ際に、コストや供給網の整備状況、生産効率をこれまで以上に重視するようになるとみている。

その結果、リスク分散を目的として中国以外に移した生産能力の一部を、中国へ戻す動きが出る可能性もあるという。

ただし、これはTrendForceによる条件付きの予測であり、特定のPCメーカーが生産拠点の中国回帰を正式に決定したという意味ではない。

また、世界全体で中国以外の生産比率が低下したとしても、日本向けノートPCの生産地が同じ割合で変化するとは限らない。

関税政策や地政学的な状況が変われば、メーカーが生産コストよりも供給網の分散を優先する可能性も残る。

さらに、ノートPCの製造コストを押し上げているのは、CPUやメモリだけではない。

TrendForceは、プリント基板(PCB)や積層セラミックコンデンサ(MLCC)、電源管理IC(PMIC)などについても、生産能力の配分や原材料価格、地政学的な要因による価格上昇や納期の長期化が起きる可能性を指摘している。

こうした部品のコストが高止まりすれば、仮にSSDの調達価格が下がっても、PC全体の製造コストが大きく改善するとは限らない。

生産拠点を移すための費用や、各地域での物流・調達コストも、最終的な販売価格に影響する。

2027年のノートPC市場では、メーカーがこうした複数のコスト要因にどのように対応するかが、製品価格や販売台数を左右することになりそうだ。

消費者にとって重要なのは、新製品が何%値上がりするかという点だけではない。

同じ価格帯で購入できるPCのメモリやSSDの容量が変わっていないか、値引きや販売促進策によって実際の購入価格がどう変化するかも確認する必要がある。

また、中国以外の地域における実際の生産比率の変化は、メーカーが生産コストの削減と供給網の分散のどちらを重視しているかを判断する材料になる。

TrendForceの今回の予測が示しているのは、ノートPC市場の問題が、部品不足から製造コストの上昇と消費者の購買力へ移りつつあるということだ。

2026年にはCPUの供給改善や買い替え需要の前倒しによって、出荷台数の減少幅が当初予測より縮小した。

しかし、以前に安く調達した部品の在庫が減り、今後の製品に高い調達コストが反映されるようになれば、メーカーは値上げか利益率の低下、あるいは製品仕様の引き下げを迫られる。

2027年のノートPC市場がどの程度落ち込むかは、その負担をメーカーと消費者がどのように分担するかに大きく左右される。

必要な部品を確保できるだけでは、市場の回復にはつながらない。消費者が必要な性能や容量を備えたPCを、無理のない価格で購入できるようになることが、持続的な需要回復の条件になる。