中国のDRAMメーカーCXMTには、2027年までに月産能力を32万枚から42万枚へ増やすとの見通しがある。調査会社Counterpoint Researchが7月に公表した予測で、PCやスマートフォンのメモリ不足を考えるうえでも無視できない規模だ。さらにCXMTは9月、第5世代の製造技術「G5」と、スマートフォンなどに使うLPDDR5Xの量産を発表した。増設と製造技術の改善が並行して進む一方、工場が処理するウェハーの枚数から、店頭で買えるメモリの量をそのまま求めることはできない。

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月10万枚の増強は、いつの予測か

Counterpointが7月に公開した分析は、CXMTの月産能力について、公開時点の32万枚から2027年までに42万枚へ増えると見込んでいる。上海と北京の新工場、合肥の製造拠点が拡大を担うという説明だ。これは調査会社の見通しであり、CXMTがその能力に到達したという実績発表とは区別する必要がある。

Counterpointが7月に示した月産32万枚→42万枚の予測は、差が10万枚、増加率が31.25%となる。

Counterpointの予測で比べる時点 DRAM月産能力
2026年7月の公開時点 32万枚
2027年までの見通し 42万枚

差は「42万−32万」、増加率は「(42万÷32万−1)×100」で計算した。同じ会社の月産能力を比べた値なので、世界全体のDRAM供給が31.25%増えるという意味にはならない。原文は到達する月まで指定しておらず、10月の現在から1年以内に必ず増産を終える、と期限を読み替えるのも早計だろう。

ウェハーは、多数の半導体チップをまとめて作る円盤状の材料である。月産能力は工場の処理規模を表すが、出荷できるメモリ容量は、1枚に作るチップの容量や良品率によって変わる。そのため、月に処理できるウェハー枚数が約3割増えるという予測は供給拡大の土台にはなっても、同じ割合で購入できるメモリが増える約束にはならない。

G5の「50%以上増」は別の指標

CXMTが9月20日に公表したG5の量産では、ウェハー1枚当たりの総ダイ数が前世代より50%以上増えたと説明している。ダイは、ウェハー上に作り込むチップの単位だ。工場へ投入する枚数を増やすだけでなく、同じ面積により多くのチップを作る方向でも供給力を伸ばそうとしている。

ただし、この「50%以上増」には比較条件が付く。発表の脚注によると、基準は前世代のG4で、総ダイ数は8Gbの容量に換算してそろえた値である。良品として出荷したチップの数が50%以上増えた、という発表ではない。

製造工程には、微細なパターンを形成するSAQPと呼ぶ技術などが使われる。パターンを細かくできれば、同じウェハー面積に収める回路の密度を上げられる。一方、作り込んだ回路が必要な品質を満たすかは別の条件であり、総ダイ数と良品の数を同じ値として扱うと、実際の供給力を大きく見積もりかねない。

G5の発表では、1ダイ当たり24GbのLPDDR5Xを2種類用意し、スマートフォンや携帯型の民生機器向けに量産していることも示された。24Gbはダイ単体の容量であり、端末全体に搭載するメモリの容量とは異なる。新しい工程で何を作っているかが具体化した点に、この発表の意味がある。

では、設備能力の31.25%増と、G5の総ダイ数50%以上増を掛け合わせれば、CXMT全体の供給増を計算できるのか。答えを出すには、全生産のうちG5へ移る比率に加え、製品構成と良品率をそろえる必要がある。公表された二つの数字だけでは、その条件を満たさない。増設と微細化は、出荷量を求める際の別々の入力なのだ。

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汎用DRAMは民生専用ではない

Counterpointは、CXMTの生産構成でLPDDR5とDDR5が約75%に近づくと見込む一方、PC向けとサーバー向けの両方に言及している。DDR5はPCにもサーバーにも使うため、汎用DRAMの増産を、そのまま消費者向けメモリの増産と受け取ることはできない。スマートフォン向けLPDDR5Xの量産実績があっても、工場全体の増設分が同じ用途へ回るとは限らないわけだ。

供給先の配分は、市場全体でも問題になっている。TrendForceが9月7日に公表した調査によると、メーカーの在庫は歴史的な低水準にあり、増えた供給は主にサーバー用途へ振り向けられていた。同社は民生用DRAMの供給が大きく絞られたことも指摘する。メモリが増産されていても、用途ごとの不足感が同じように和らぐとはいえない状況だ。

しかも、サーバーが使うメモリは、AI向けの積層メモリであるHBMに限られない。DDR5などの通常のDRAMにも需要があるため、「大手はHBM、CXMTは民生用」という二分法では、供給の取り合いを捉え損ねる。CXMTの増設がPCやスマートフォンに効く度合いも、完成する設備の規模と、そこから出る製品の配分で変わると考えられる。

TrendForceはさらに、2026〜2027年の主要3社のビット供給増加は、先端の製造工程への移行が中心になるとみている。ウェハー投入枚数の増加は小幅との予測だ。CXMTもG5で1枚当たりの改善を進めており、企業間の供給力を比較する際は、ウェハー処理能力だけで順位や不足の解消時期を決めにくくなっている。

価格より先に確かめたい供給の中身

Counterpointは、中国以外の機器メーカーとの取引について、PC供給網への参入を大規模な受注につなげられるかを確認点に挙げた。製品を作れることと、幅広い顧客へ必要な数量を届けることの間には段階がある。民生用の不足緩和を判断するなら、全社の月産能力に続き、どの規格と容量の製品が、どの顧客向けに量産出荷されるかを確かめたい。

たとえば、スマートフォン向けの新しいLPDDR製品が増えても、それだけでPC用DDR5モジュールの不足が埋まるわけではない。逆に、同じDDR5でもサーバー向けの配分が増えれば、PCメーカーが確保できる量は全社の生産増ほど伸びない可能性がある。消費者に近いところで見るべき変化は、ウェハーの総数よりも、欲しい製品の供給先と数量が広がることだ。

CXMTの設備増強予測とG5の量産は、その広がりを支え得る材料である。ただ、両者から店頭価格の下落幅や時期まで算出できる情報は示されていない。工程の改善が安定した良品生産につながり、PCやスマートフォン向けの採用・出荷が増えたとき、月10万枚という設備の数字が、買い手にとっての調達先の広がりとして表れる。