CXMTの世界DRAM売上高シェアが、2026年第3四半期(Q3)に9%へ低下した。Counterpoint Researchが11月5日に公表した調査によると、前期の10%から1ポイント下がったことになる。ただし、市場全体の売上高に占める割合が縮小しても、CXMT自身の売上高や出荷量まで減少したとは限らない。DRAM市場が価格上昇によって急拡大するなか、9%という数字をどう解釈するかが重要になる。

前年同期と比較すると、CXMTのシェアは依然として大きく伸びている。Counterpointが以前公表した2025年Q3のシェアは5%であり、今回の9%はそれを4ポイント上回る。異なる時期に公表された資料を用いた参考比較ではあるが、前年からのシェア拡大と直近の低下は両立している。なお、ここで比較しているのは売上高シェアであり、製造能力や実際に販売したチップの数量を表すものではない。

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シェア低下でも減収とは限らない

Counterpointによると、2026年Q3の世界DRAM市場の売上高は前年同期比369%増の約2,000億ドルに達した。これは前年同期の4.69倍に相当する。同社は今回の急拡大について、出荷量の増加よりも価格上昇が主導したと分析している。市場全体の売上高がこれほど大きく変動する局面では、各社の売上高シェアと実際の売上高を分けて考える必要がある。

売上高シェアは、各社の売上高を市場全体の売上高で割った値だ。そのため、市場全体が拡大していれば、シェアが低下しても企業自身の売上高は増加する可能性がある。CXMTの場合も、前期の10%と今回の9%を使えば、増収となる条件を計算できる。

CXMTの売上高をR、世界DRAM市場の売上高をMとし、添字の2をQ2、3をQ3とすると、売上高の前期比は次の式で表せる。

R₃/R₂ = (9/10) × (M₃/M₂)

この式から、CXMTが前期比で増収となる条件は M₃/M₂ > 10/9 となる。つまり、市場全体の売上高が前期比で約11.1%を超えて拡大していれば、CXMTはシェアが10%から9%に低下していても増収となる。 ただし、これは公表されたシェアを用いた概算であり、CXMTが実際に増収だったことを意味しない。Counterpointの公開記事にはQ3の市場売上高の前期比が示されていないため、この条件を満たしていたかどうかは確認できない。

また、世界市場の369%増という数字は前年同期比であり、前期比11.1%超という条件が成立したことの証拠にはならない。シェアの低下だけを根拠に、CXMTの販売数量や販売したメモリの総容量、利益が減少したと判断することもできない。

同じQ3調査では、Samsungの売上高シェアは38%となった。ただし、この数字だけでSamsungの増産がCXMTのシェア低下を直接引き起こしたとは断定できない。メモリを調達する企業にとっても、売上高シェアから実際の供給可能量を読み取ることは難しい。供給力を評価するには、各社がどの種類のメモリを、どれだけ出荷できるのかを確認する必要がある。

HBMが拡大しても汎用DRAMの需要は残る

Counterpointは、2026年Q4以降、高価格帯のHBM4の出荷拡大がCXMTの売上高シェアをさらに圧迫する可能性を指摘している。ただし、これは今後の製品構成に関する見通しであり、Q3のシェア低下について原因を特定したものではない。単価の高いメモリの売上高が増えれば、市場全体の売上高も押し上げられ、他の製品を中心に販売するメーカーのシェアが相対的に低下する可能性がある。

一方、AI向けメモリの需要をHBMだけで捉えると、CPU側で使われるDRAMの重要性を見落とすことになる。HBMは主にGPUの高帯域メモリとして利用されるが、AIシステムではCPU用にも大容量のメモリが必要だ。その具体例が、NVIDIAのVera Rubin NVL72である。

NVIDIAが公表しているVera Rubin NVL72の仕様によると、1ラックには72基のRubin GPUと36基のVera CPUが搭載され、それぞれ異なる種類のメモリを使用する。

搭載先 搭載数 メモリの種類 ラック全体の容量
Rubin GPU 72基 HBM4 20.7TB
Vera CPU 36基 LPDDR5X 最大54TB

※容量は同一ラック内の各搭載先の合計。CPU側の容量は最大値。

つまり、同じAIラックの中で、GPU側のHBM4とCPU側のLPDDR5Xが併用されている。 両者は異なる役割を担っており、一方の容量が大きいからといって、もう一方を置き換えられるわけではない。また、搭載容量の違いから、メモリの価格や帯域幅、事業上の価値を単純に比較することもできない。

Counterpointの市場調査でも、HBMの売上高がほぼ倍増する一方、DDRとLPDDRの売上高はそれを上回る伸びを示し、DRAM市場全体に占めるHBMの売上高比率は低下したという。これはHBMの需要が減少したことを意味しない。市場全体が急拡大する局面では、売上高を大きく伸ばしている製品であっても、相対的なシェアが下がることは十分にあり得る。

CXMTが量産するLPDDR5Xも、製品の種類という点ではAIラックに搭載されるメモリと共通している。ただし、NVIDIAの仕様表はメモリの供給企業や認定状況を示すものではなく、CXMT製品が採用されていることを意味しない。実際の需要獲得を判断するには、用途に適した仕様を満たすだけでなく、顧客による製品認定や採用実績を確認する必要がある。

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G5の量産が実際の供給力につながる条件

CXMTは2026年9月20日、新世代のG5と、24Gbダイを採用した2種類のLPDDR5X製品の量産開始を発表した。主な対象はスマートフォンや携帯型の民生機器であり、この発表をそのままAIラック向けの供給能力拡大と結び付けることはできない。また、24Gbという数字はメモリモジュール全体ではなく、個々のダイの記憶容量を示している。

G5の製造技術について、CXMTはウェハー1枚当たりに得られるダイ数(DPW)が従来のG4と比べて50%以上増加したと説明している。ただし、この数字の解釈には注意が必要だ。同社の発表に付された脚注によると、比較対象となっているのは良否を選別する前の総ダイ数であり、記憶容量を8Gb換算にそろえて比較している。

したがって、G5のDPWが50%以上増加したという発表は、良品の出荷量が50%以上増えたことを意味しない。 ウェハー1枚から得られる総ダイ数が増えれば、生産効率の向上や供給量の拡大につながる余地はある。しかし、実際に販売可能な数量は製造後の良品率に左右される。さらに、顧客の認定を受け、製品として採用されなければ、製造能力の向上が売上高に直結するとは限らない。なお、50%以上という改善率はCXMT自身が公表した値であり、独立した第三者による測定結果ではない。

新製品の量産開始と全社の売上高シェア低下が同時に起きても、必ずしも矛盾するわけではない。量産した製品が売上高に寄与するまでには時間がかかる場合があり、その間に市場全体の売上高がさらに拡大すれば、シェアは低下し得る。G5の発表は製造技術の進展を示す材料だが、CXMTの全工場における良品供給量や、顧客への採用拡大を直接示すものではない。

今後、HBM4の出荷拡大によってDRAM市場の売上構成が変化すれば、売上高シェアだけでメーカーの競争力を評価することは一段と難しくなる。CXMTについても、製品別の出荷量、良品供給量、顧客による継続採用を確認することが重要だ。G5の製造効率改善がLPDDR製品の安定供給と採用拡大につながるかどうかが、売上高シェア9%という数字だけでは見えない同社の実力を判断する手掛かりとなる。