NVIDIAが8月14日に米証券取引委員会(SEC)へ提出したForm 13Fで、6月30日時点のIntel株214,776,632株の公正市場価値は299億8,926万1,126ドルとなった。2025年末に50億ドルで取得した株式の評価額が約6.0倍になった計算である。ただし、この数字は8月14日や8月17日の時価ではない。13Fは四半期末の保有明細であり、提出日より前の6月30日を切り取ったスナップショットだからだ。

もう一つ、数字の読み違いが起きやすい。約300億ドルに当たる299億8,926万1,126ドルは持分の評価額で、約250億ドルに当たる249億8,926万1,126ドル50億ドルを引いた差額である。NVIDIAがその額を売却で得た、あるいは現金化したという意味にはならない。株価の変動を製品協業の進展と直結させる根拠も、今回の開示にはない。

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約300億ドルと約250億ドルは何を表すのか

Intelは2025年9月15日、NVIDIAへ214,776,632株を1株23.28ドル、総額50億ドルで売却する契約を結んだ。これは公募ではなく私募である。6月末の13Fにある同じ株数を取得原価と並べると、評価額と含み益を混ぜずに読める。

項目 13F・契約から読める数値 意味
保有株数 214,776,632株 6月30日時点の13F記載株数
取得原価 50億ドル 1株23.28ドルでの契約総額
6月30日時点の公正市場価値 299億8,926万1,126ドル 持分そのものの四半期末評価額
取得原価との差額 249億8,926万1,126ドル 売却していない前提の算術上の未実現差額

13Fの評価額を株数で割ると、6月30日時点の逆算株価は139.63ドルになる。取得原価との差額は約249.9億ドル、含み益率は約500%だ。これは評価額と取得原価を用いた計算であって、Intel株についてNVIDIAが認識した単独の損益額を開示したものではない。

NVIDIAの2026年4月26日終了四半期の10-Qは、公開株式の未実現損益を損益計算書の「Other income (expense), net」に認識すると説明している。しかし、同四半期に記載された134億ドルの公開株式未実現益は、Intel株に限らず公開株式全体を合計したものだ。13Fだけでは、取得後に売買やヘッジがあったか、税効果や売却可能時期がどうか、Intel株単独の損益をいくら計上したかまでは確定できない。

3か月で3.16倍、8月の時価ではない

前回の13Fでは、3月31日時点のIntel株214,776,632株の価値は94億7,809万2,770ドルだった。保有株数が変わらないまま、6月30日時点の299億8,926万1,126ドルまで205億1,116万8,356ドル増え、3.16倍になった。逆算株価も44.13ドルから139.63ドルへ上がっている。

この比較は、二つの四半期末における同一株数の評価額の差を見るものだ。8月14日に13Fが提出されたことは、6月30日の評価額が8月14日まで続いたことを意味しない。SECもForm 13Fを、四半期末時点の株数や銘柄、公正市場価値を報告する書式として案内している。提出日までの値動きや、四半期末後の売買は表に反映されない。

Intelの8月公募増資の目論見書は、8月10日の終値を97.52ドルと示した。この株価に13Fの214,776,632株を掛けると209億4,601万7,952.64ドルになる。これは6月末の約299.9億ドルを8月時点の「現在価値」と取り違えないための参考計算にとどまる。8月17日現在の評価額ではなく、また株価の変動理由を示す数字でもない。

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株主としての権利と製品協業は別に進む

50億ドルの株式売却契約は、NVIDIAに一般株主を超える経営参加権や情報権を与えないとしている。この条件は、NVIDIAの持分保有をIntelの経営権取得と同一視できないことを示す。一方、2025年9月18日の両社共同発表は、株式契約とは別に、複数世代の製品を共同開発する計画を示した。

データセンター向けでは、IntelがNVIDIA仕様のx86 CPUを作り、NVIDIAがそれをAI基盤へ統合する計画だ。PC向けでは、IntelがNVIDIA RTX GPUチップレットを統合したx86 SoCを市場投入する計画としている。共同発表は二つの製品方向を示したが、製品名と発売日は開示していない。数量や売上の見通しも同様だ。発表の注意書きも、協業から生まれる製品の時期と成否には不確実性があるとしている。

ここで、株式の評価上昇と製品開発の進展を一つの話にまとめることはできない。今回の13Fには6月末の保有明細が載り、共同発表には開発計画が記されている。NVIDIAがIntel FoundryをGPUの製造委託先に選んだという発表もない。IntelがCPUを設計・製造する計画と、NVIDIA製GPUの製造委託を混同しない必要がある。株価、持分、製品の三つは、それぞれ別の公式開示で確認することになる。

目論見書どおりなら約4.06%へ薄まる

Intelは8月、公募増資で210,526,315株を1株95.00ドルで発行・売却する契約を結び、引受会社に31,578,947株の追加購入権を与えた。目論見書が示す増資前の基礎株式数5,042,964,249株を分母にすると、NVIDIAの214,776,632株は約4.26%に当たる。追加枠が全量行使された場合の想定発行済み株式数5,285,069,511株を分母にすれば、約4.06%となる。

これは議決権・持分比率を株数で割った単純計算であり、NVIDIAの保有株数が13F後も変わっていないと確認したものではない。目論見書どおりに新株が発行されれば、同じ214,776,632株を保有していても比率は下がる。同書は追加枠全量行使時の手取り見込みを約226.2億ドルとし、設備投資や運転資金を含み得る一般目的に使うとしている。

この比率低下の試算は、NVIDIAが株式を売却したことを意味しない。分子である保有株数を13Fの214,776,632株に置いたまま、分母となるIntelの発行済み株式数だけが増えた場合の計算だ。したがって、6月末の13Fにある保有数量、8月の発行済み株式数、そしてその後に提出される保有開示は、それぞれ別の問いに答える資料になる。

6月末の13F掲載銘柄8銘柄の合計は634億3,997万4,569ドルで、Intel持分は47.2719%を占めた。これはNVIDIAの全資産や全投資に占める比率ではなく、13Fに載る銘柄だけの構成比である。前回の13F総額は183億7,435万4,150ドルで、今回はIntelの評価上昇に加え、新規掲載されたSpace Exploration Technologies持分209億7,559万4,582ドルも含む。Intel持分の増減だけを、13F対象ポートフォリオ全体の増減と同じ意味に扱うこともできない。

株価の一点を追うより、今後の開示でNVIDIAの保有株数がどう変わるか、IntelとNVIDIAが製品名・発売時期・出荷数を公表するか、そしてIntel株の単独損益が開示されるかを分けて確かめる必要がある。