日光を浴びて発電する太陽電池の内部では、光エネルギーによって電子と正孔が励起され、それぞれの電極へと送り出される。このとき、材料の結晶骨格がわずかでも歪んでいたり、原子の抜け穴である格子欠陥が存在したりすると、運ばれる途中の電荷はそこで捕らえられ、熱として散逸してしまう。実用化が急速に進む次世代太陽電池の本命、ペロブスカイト太陽電池において、現在の主流材料が抱える最大のジレンマは鉛(Pb)の毒性だ。欧州連合のRoHS指令をはじめとする環境規制の観点から、有害な鉛を同族元素である無害なスズ(Sn)へ置き換える試みが世界中で続けられている。

しかし、スズは鉛に比べて化学的に極めて不安定だ。空気中の酸素と触れると、発電を担う2価のスズイオン()が容易に電子を奪われて4価のスズイオン()へと酸化してしまう。この酸化によって結晶内部に正孔が過剰に発生し、素子は自己ドーピング状態に陥って光起電力を失う。さらに結晶内を動き回るハロゲンイオンが電極へ拡散し、膜の界面を破壊していく。この多重の劣化現象をどう食い止めるかが、スズ系ペロブスカイトの実用化を阻む巨大な壁となってきた。

2026年5月27日、上智大学理工学部の竹岡裕子教授、Jorim Okoth Obila特別研究員(現ノースウェスト大学)、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)の白井康裕グループリーダー、柳田真利主幹研究員らの研究グループは、ドイツの学術誌『Solar RRL』に論文を発表した(DOI: 10.1002/solr.70388)。研究チームは、有機層と無機層が交互に積層する擬二次元構造のスズ系ペロブスカイトに、窒素と硫黄を含む小分子「2-アミノベンゾチアゾール(2-ABZ)」を添加剤として導入した。その結果、光電変換効率を従来の6.60%から9.07%へと約1.4倍に引き上げ、未封止の状態で大気中に100日間保管した後も初期性能の約85%を保つことに成功した。

単一の添加剤によって結晶成長の制御、イオン移動の遮断、酸化の抑制という三つの独立した課題に同時に手を打った点が、本研究の設計思想における核心である。

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毒性を避ければ効率が落ちる、スズ系ペロブスカイトが直面してきた構造の罠

ペロブスカイト太陽電池は、可視光の吸収係数が極めて高く、溶液を塗布して低温で加熱するだけで結晶膜を成膜できるため、次世代の軽量・フレキシブル電源として期待を集めてきた。現在、シリコン太陽電池の理論限界に迫る25%以上の光電変換効率を叩き出している素子は、その光吸収層にヨウ化鉛などを主成分とする三次元構造の鉛ペロブスカイトを用いている。だが、鉛は水に溶け出しやすく生体蓄積性を持つ重金属である。屋根置きや壁面設置、IoT機器への組み込みなど、人々の生活圏に大量配備されるデバイスとして、鉛の含有は社会的受容性と廃棄処理の面で常に懸念の対象となってきた。

そこで鉛の代替候補として研究されてきたのが、周期表で鉛の真上に位置するスズである。スズを用いた三次元ペロブスカイトは、近赤外域まで広く光を吸収できる狭いバンドギャップを持ち、理論的な発電限界は鉛系に匹敵する。現に三次元スズ系素子では、結晶品質の改良によって16〜17%台の変換効率が報告されるようになってきた。だが、三次元スズ系には致命的な弱点がある。前述したからへの極めて速い酸化反応である。大気中の微量な酸素や水分に触れた瞬間から劣化が始まり、不活性ガスを満たしたグローブボックスの外へ持ち出すと、わずか数時間から数日で発電性能が失われてしまう。

ペロブスカイト太陽電池の最高効率水準の比較横棒グラフ。カテゴリ 4 件、系列: 光電変換効率(PCE)(単位: %)三次元鉛系三次元鉛系三次元鉛系 — 光電変換効率(PCE): 26.1%26.1擬二次元鉛系擬二次元鉛系擬二次元鉛系 — 光電変換効率(PCE): 22.8%22.8三次元スズ系三次元スズ系三次元スズ系 — 光電変換効率(PCE): 17.1%17.1本研究(擬二次元スズ系)本研究(擬二次元…本研究(擬二次元スズ系) — 光電変換効率(PCE): 9.1%9.1単位: %
データを表で見る
光電変換効率(PCE) (%)
三次元鉛系26.1
擬二次元鉛系22.8
三次元スズ系17.1
本研究(擬二次元スズ系)9.1
ペロブスカイト太陽電池の最高効率水準の比較各系における報告値の比較。鉛フリーかつ擬二次元構造では効率に大きな開きが残る出典: Solar RRL (2026), Nature Nanotechnology (2025) ほか

この酸化の嵐を物理的に防ぐために考案されたのが、ラドルスデン・ポッパー相に代表される「擬二次元(quasi-2D)構造」の導入である。擬二次元構造では、無機のスズ・ハロゲン八面体シートの間に、かさ高い疎水性の有機アンモニウムカチオンがスペーサー(間隔保持層)として挟み込まれる。この有機層が強固な防壁となり、水分子や酸素分子が無機骨格へ浸透する経路を遮断する。結果として、三次元構造に比べて環境安定性は格段に向上する。

しかし、安定性と引き換えに失われる代償も大きかった。スペーサーとなる有機分子の層は電気を通さない絶縁体であるため、無機層と無機層の間を電子が飛び移るホッピング伝導が著しく阻害される。さらに、溶液から膜を結晶化させる過程で、層の配向が基板に対して水平に寝てしまうと、基板から上部電極へ向かう膜厚方向の電荷輸送経路が完全に遮断されてしまう。加えて、光吸収層と隣り合う電荷輸送層(正孔輸送層や電子輸送層)との間でエネルギー準位の不整合が起きやすく、励起された電子や正孔が界面を乗り越える際に電圧の損失が生じる。

これまで報告されてきた擬二次元スズ系ペロブスカイトの光電変換効率は、三次元スズ系素子や鉛系素子に比べて大きく取り残され、最高でも10%前後に留まっていた。過酷な大気下で耐える鎧を纏わせると、肝心の電気が取り出せなくなる。この二律背反をどう乗り越えるかが、鉛フリー太陽電池が長年抱えてきた構造的な罠だった。

3つの劣化経路を単一分子で塞ぐ、ヘテロ原子が果たした化学の役割

上智大とNIMSの研究グループは、この膠着状態を打開するため、光吸収層を形成する前駆体溶液への添加剤分子の投入というアプローチを選んだ。対象としたペロブスカイトの組成は、で表される$n=5$の擬二次元系である(PEAはフェニルエチルアンモニウム、EAはエチルアンモニウム、FAはホルムアミジニウム)。無機層が5層重なるごとに有機スペーサー層が挟まる周期構造を持つ。

研究グループが着目したのは、芳香環の骨格内に窒素(N)と硫黄(S)のヘテロ原子を併せ持ち、側鎖にアミノ基()を備えた低分子「2-アミノベンゾチアゾール(2-ABZ)」である。実験の結果、この単一の有機分子が光吸収層の形成過程から素子の動作時に至るまで、全く異なる3つのメカニズムで劣化を阻止している事実が明らかになった。

第一のメカニズムは、結晶成長速度の制御による成膜品質の改善だ。スズ系ペロブスカイトは鉛系に比べて結晶化が急激に進む傾向があり、溶液を塗布して溶媒が揮発する過程で核発生が無秩序に乱立する。その結果、結晶粒が不揃いになり、膜の至るところにピンホールと呼ばれる微細な隙間やクラックが生じてしまう。電子顕微鏡(SEM)による観察では、添加剤を含まない対照群の膜表面に無数のピンホールが確認された。これらは素子にした際に上部電極と下部電極を局所的に短絡させ、著しい電圧低下を招く。

赤外分光法(IR)による解析を行うと、2-ABZ分子内のヘテロ原子が持つ非共有電子対が、前駆体溶液中でスズイオン()に対して配位結合を形成している兆候が捉えられた。この配位相互作用が適度なブレーキとなり、スズ錯体からの急激な結晶成長を穏やかに減速させる。結果として、結晶粒が緻密に隙間なく敷き詰められた均一な平坦膜が得られ、ピンホールは完全に消失した。

第二のメカニズムは、ヨウ化物イオンの移動(マイグレーション)の抑制である。ペロブスカイト太陽電池が劣化する主要因の一つに、結晶格子の中に収まっているはずのハロゲンイオン(特にヨウ化物イオン)が、熱や内部電界によって格子位置を離れて膜内を移動してしまう現象がある。抜け出たヨウ素は結晶格子に空孔欠陥を残し、移動した先で界面の材料を腐食させる。

X線光電子分光法(XPS)の測定データは、2-ABZの添加によってヨウ化物イオンやその関連欠陥種のシグナル割合が、対照群の27%から14.6%へと半減したことを示した。同時に、アミノ基由来の窒素ピークとヨウ素ピークの結合エネルギーにシフトが観測された。これは、2-ABZのアミノ基の水素原子とヨウ化物イオンとの間にの水素結合が強固に形成されていることを意味する。いわば、有機分子が錨のようにヨウ化物イオンを結晶骨格につなぎ止め、外への脱出を阻止しているのだ。飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)による深さ方向の元素プロファイルでも、電子輸送層側へ漏れ出入するヨウ化物イオンの量が激減している裏付けが得られた。

第三のメカニズムは、スズの酸化反応に対する直接的なシールド効果だ。XPSによるスズの酸化数解析では、添加剤を含まない膜において全スズ原子の10%に達していた劣化要因の比率が、2-ABZを加えることで8.5%へと低下した。完全なゼロには届かないものの、薄膜の調製過程や界面近傍で進行する酸化反応が統計的に有意に抑え込まれていた。

【2-ABZが担う3つのパッシベーション機能】

  1. 配位結合による結晶化制御: Sn²⁺と電子対をやり取りし、ピンホールのない緻密な膜を形成
  2. 水素結合によるイオン固定: N-H…I結合により、ヨウ化物イオンの電極側への流出を半減
  3. 界面酸化の抑制: Sn⁴⁺の発生比率を10%から8.5%へ低減

さらに、紫外光電子分光法(UPS)によるバンド構造の測定から、思わぬ副次的効果が判明した。2-ABZを添加した膜では、光吸収層の価電子帯上端と伝導帯下端のエネルギー準位が、それぞれ0.23 eVおよび0.22 eV押し下げられていた。これにより、正孔輸送層であるPEDOT:PSS、および電子輸送層であるとのエネルギー準位の段差(オフセット)が同時に縮小した。エネルギーの段差が小さくなれば、光によって励起されたキャリアが界面を通過する際の障壁が低くなり、素子の開放電圧()が直接的に押し上げられる。

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変換効率9.07%の達成と、未封止大気試験が示した耐久性の実測値

膜質の向上と界面エネルギー準位の整合は、そのまま太陽電池デバイスの電気的出力パラメータへ反映された。研究チームが作製した逆構造型スズ系ペロブスカイト太陽電池(ITO / PEDOT:PSS / 擬二次元スズペロブスカイト / / BCP / Ag)の評価結果を見てみる。

添加剤を加えない対照群素子は、開放電圧()が626.20 mV、短絡電流密度()が15.19 、曲線因子(FF)が69.39%にとどまり、光電変換効率(PCE)は6.60%であった。これに対し、最適濃度の2-ABZを添加した素子は、開放電圧が702.93 mVへと約77 mV上昇し、短絡電流密度も18.35 へと大幅に増加、曲線因子も70.29%に改善した。結果として得られたチャンピオン素子の変換効率は9.07%に達し、対照群と比較して約1.4倍の性能向上を達成した。

評価項目 対照群(添加剤なし) 2-ABZ添加素子 変化の幅
開放電圧( 626.20 mV 702.93 mV +76.73 mV
短絡電流密度( 15.19 18.35 +3.16
曲線因子(FF) 69.39% 70.29% +0.90%
光電変換効率(PCE) 6.60% 9.07% +2.47%(約1.4倍)
大気中100日保管後の効率維持率 48.95% 84.94% +35.99 pt
連続発電10時間後の維持率 0%(約1時間で喪失) 88.9% 発電寿命の大幅延伸

性能向上以上に大きな意味を持つのが、素子の耐久性試験の結果である。学術研究におけるペロブスカイト太陽電池の寿命評価では、酸素や水分を遮断するガラス基板とエポキシ樹脂で素子を厳重に密閉(封止)するか、あるいは窒素ガスを循環させた不活性環境のチャンバー内で試験を行う例が少なくない。

しかし今回の研究では、デバイスの実力値を測るため、あえてガラスによる素子封止を一切行わず、大気開放の環境下で長期保管試験を実施した。添加剤なしの素子は、空気中の酸素と水分による浸食、およびヨウ素の内部移動によって性能が坂道を転がるように低下し、100日後には初期効率の48.95%と半分以下まで劣化した。一方、2-ABZを添加した素子は、同じ100日間の大気暴露を経ても初期効率の84.94%(最高値の約85%)を維持した。

さらに、擬似太陽光(AM 1.5G、1 sun)を照射し続けながら最大電力点(MPP)で連続発電させる過酷な動作試験でも、両者の差は歴然としていた。対照群の素子がわずか1時間ほどで発電能力をほぼ完全に喪失したのに対し、2-ABZを添加した素子は10時間が経過した時点でも初期性能の88.9%を保ち続けた。

配位結合によるピンホールの解消、水素結合によるヨウ化物イオンの拘束、そしてスズ酸化の抑制という三位一体の防御機能が、過酷な光照射下と酸素存在下において実効性を持つことが実証された形だ。

主流技術との距離、9%台の到達点が示す学術的意義と冷徹な現実

この9.07%という数値を、世界の太陽電池開発競争の全体地図の中に置いてみる。成果の価値を正しく見積もるためには、過大評価も過小評価も避けねばならない。

まず、擬二次元スズ系ペロブスカイトという極めて限定された材料群の中では、今回の9.07%は確固たる前進である。この領域の過去の最高報告例はおよそ10.36%(2025年に『Chemical Communications』などで報告された系)であり、本研究の9.07%はそれに続く水準に位置する。低次元スズ系において、未封止・大気中での100日間保管維持率85%という耐久性と9%超の効率を示した実測データは、材料設計の有効性を裏付けている。

材料分類 代表的な最高変換効率(PCE) 耐久性試験の代表例 実用化に向けた主課題
三次元鉛系 26%超(世界記録水準) 封止下で数千時間(ISOS規格準拠) 鉛の環境毒性とRoHS規制への抵触リスク
擬二次元鉛系 22.8%(公認約21.7% 湿度・熱に対する高い堅牢性 依然として鉛を含有
三次元スズ系 16〜17%(豪クイーンズランド大など) 不活性ガス下で数百〜数千時間 酸素に対する極端な弱さ、素早い酸化
2D/3D混合スズ系 15.0%(2025年報告) 封止下4000時間で87%維持 界面制御の複雑性と大型化の難度
本研究(擬二次元スズ系) 9.07% 未封止・大気中で100日(維持率85%) 絶対効率の不足、Sn⁴⁺酸化の根本的残存

だが視野を広げると、商用化への距離は依然として遠い。既存の三次元鉛系ペロブスカイト太陽電池はすでに26%を超え、住宅用シリコンパネルの20〜22%を上回る効率を達成している。鉛を含む擬二次元ペロブスカイトでさえ、22%台後半の記録が出ている。鉛を排除したスズ系の中で比較しても、立体的骨格を持つ三次元スズ系素子は16〜17%台に到達している。また、三次元結晶の表面を極薄の二次元層で覆う「2D/3Dヘテロ構造」のスズ系素子では、15.02%の効率を達成しつつ4000時間以上の連続動作に耐える系が報告されている(『Energy & Environmental Science』2025年)。

これら先行するライバルたちと比較したとき、擬二次元スズ単独構造が叩き出した9.07%という数値は、商用の発電用途としては未だ半分程度の出力にすぎない。光エネルギーの9割以上を電気に変えられずに逃している計算になる。

試験の長さについても冷静な評価が必要だ。今回示された「大気中100日保管」や「連続光照射10時間」は、対照群の急速な失活と比較すれば大きな進歩だが、国際電気標準会議(IEC)が定める屋外太陽光モジュールの信頼性基準(数千時間から数万時間の連続動作)に照らせば、依然として初期スクリーニングの領域を出ていない。過酷な条件下での改善幅を示した基礎研究であり、市販パネルと張り合える耐久性を証明したわけではないのだ。

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酸化残存と大面積化の壁、社会実装へ残された未解決の問い

竹岡教授率いる研究チームのアプローチは、窒素と硫黄を含むヘテロ原子低分子の「多機能パッシベーション」という明確な分子設計指針を打ち立てた。しかし、この成果が実用的なモジュールへと発展する道筋には、いくつもの未解明な問いと工学的な障壁が横たわっている。

最も本質的な学術的課題は、スズの酸化が「抑制された」だけであり、「根絶された」わけではない点にある。X線光電子分光の測定値が示した通り、2-ABZを加えた後であっても、膜内のスズのうち8.5%は依然として発電を阻害するへと変化している。添加剤なしの10%からわずか1.5ポイントの減少にすぎない。結晶格子内に生じるスズ空孔や微量の酸化物は、素子を長期運用する過程で蓄積し、不可逆的な劣化を引き起こす火種として残り続ける。100日を超えた先、あるいは1年、5年という年月のスパンでこの8.5%の酸化物がどう振る舞うのかは、現時点では解明されていない。

次に、デバイスのスケールアップに伴う製造科学の課題がある。本研究で評価されたデータは、大学の研究室でスピンコート法によって作製された数ミリ角の微小素子(champion cell)によるものだ。前駆体溶液を高速回転させて遠心力で振り落とすスピンコート法は、実験室レベルでは均一な膜を作りやすいが、大面積のロール・ツー・ロール印刷やスリットダイコーティングへそのまま適用することはできない。

擬二次元ペロブスカイトは、溶媒が蒸発する過程で結晶の向きが自己組織化的に決まる。数平方センチメートル以上の大面積基板に塗布した際、2-ABZが結晶の垂直配向を基板全体で均一に維持できるのか、ピンホールのない均質膜を連続塗布で再現できるのかは完全に未検証である。

さらに、今回の実験は単一の研究チームによって報告されたものであり、他機関による独立した追試や、異なる材料ロットにおける再現性の検証を待つ必要がある。配位結合や水素結合の強弱は、わずかな塗布環境の湿度や乾燥温度、残留溶媒の量によっても左右されやすい。

竹岡教授はプレスリリースの中で、25年以上にわたるペロブスカイト化合物研究の蓄積を背景に、将来的な社会実装や電力インフラが乏しい地域への応用へ期待を寄せている。有害物質を含まない安全な薄膜太陽電池の実現は、ウェアラブル機器や建材一体型太陽光発電(BIPV)の普及に向けた重要なピースであることは疑いない。

だが、その構想を工学的な現実に引き戻すためには、依然として残る8.5%の酸化成分をいかにゼロへ近づけるか、そして9%台にとどまる光電変換効率を三次元材料並みの15%超へとどう押し上げるかという、さらに一段深い結晶界面制御の研究が求められている。