米Radiantは2026年10月29日、開発中の小型原子炉「Kaleidos」について、初臨界と出力運転を対象とする安全解析書が米エネルギー省(DOE)の承認を受けたと発表した。試験はアイダホ国立研究所(INL)の実証施設で実施する計画だ。次に控えるのは、設備や人員、運転手順などが整っているかを確認する運転準備審査で、同社はこの審査を無事に終えた後、燃料を装荷して5段階の試験を開始する方針だ。今回の承認は、実際の原子炉運転に向けた重要な節目となるが、運転開始そのものが認められたわけではない。

Radiantは、数か月にわたる試験で「60実効全出力日」の運転を計画しており、最終段階では人の介入なしに全出力で150時間以上の連続運転を目指す。前者は出力と運転時間を積算した指標、後者は一定の条件下で連続運転できる時間を表しており、それぞれ異なる性能を確かめるための目標だ。共用試験施設の利用条件や2028年に予定する商用機の納入計画も踏まえると、今回の承認から実用化に至るまでに、どのような検証が必要なのかが見えてくる。

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安全解析の承認から、設備と人員の準備確認へ

Radiantによると、DOEは2026年2月にKaleidosの予備安全解析書(PDSA)を承認していた。今回承認された安全解析書(DSA)は、核分裂の連鎖反応が初めて持続する「初臨界」だけでなく、出力運転も対象としているという。安全解析上の審査が一段階進んだことで、次は実際の設備や運転体制が整っているかを確認することになる。ただし、安全解析書の承認と運転準備審査の完了は別の工程であり、今回の発表時点では後者はまだ実施前の段階だ。

10月29日の発表に基づき、Kaleidosの試験開始までの工程と現状を整理すると、次のようになる。

工程 発表時点の状態 内容・条件
安全解析書(DSA) DOEによる承認をRadiantが発表 同社によると初臨界と出力運転が対象
運転準備審査 次の段階 設備、人員、運転手順などの準備状況を確認
燃料装荷・5段階試験 運転準備審査の完了後に実施予定 60実効全出力日と150時間以上の連続全出力運転を目指す

DOEが2025年に公表した試験施設DOMEの環境評価(3.11.4節)によると、運転準備の評価には、安全管理体制、運転員の訓練・資格、設備の作動状態、運転手順、緊急時対応などが含まれる。つまり、安全解析書で運転の安全性を裏付けることと、設備や人員が実際に運転できる状態にあることは、それぞれ確認する必要がある。ただし、これはDOMEにおける一般的な評価項目であり、Kaleidosがこれらの審査を通過したことを意味するものではない。

Radiantは今回、運転準備審査の完了予定日や原子炉の運転開始日を明らかにしていない。今後は審査を通過して燃料装荷に進めるか、さらに計画した出力と運転時間を満たす試験を実施できるかが重要になる。

60実効全出力日と150時間の連続運転で何を検証するのか

Kaleidosの試験で掲げられている「60実効全出力日」は、原子炉の出力と運転時間を積算し、定格出力で運転した日数に換算する指標だ。例えば、定格出力の半分で2日間運転した場合、実効全出力日では1日分に相当する。Radiantは数か月にわたって試験を実施する計画だが、これは60日間にわたり全出力で連続運転するという意味ではない。原子炉が実際にどの程度の出力を、どれだけの時間維持できたかを評価するための指標となる。

一方、150時間以上の連続運転は、試験の最終段階で目指す別の目標だ。こちらは全出力を維持しながら、人の介入なしに150時間以上運転を続けることを条件としている。積算した運転量を確認するだけでなく、一定の出力を長時間にわたって維持できるかを確かめる狙いがある。

Radiantによると、今回の試験では商用顧客向けの原子炉に近い設計と専用燃料を使用する。炉心や計装機器、統合システムを実際の運転条件下で評価する計画で、個々の構成要素だけでなく、それらを組み合わせた原子炉全体の挙動を検証する機会となる。設計段階の解析結果と実際の運転データを照合するうえでも重要な試験になる。

ただし、試験機と顧客向けの原子炉が完全に同一仕様であるとまでは、同社の説明から判断できない。また、60実効全出力日と150時間以上の連続運転はいずれも今後の目標であり、達成済みの実績ではない。実際の性能を評価するには、試験後に公表される運転データを確認する必要がある。

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共用試験施設DOMEの設備と利用条件

Kaleidosの試験が予定されている「DOME」は、INLに設けられたマイクロ炉の実証用共用施設だ。DOEによると、かつての実験炉EBR-IIの格納構造を転用した施設で、開発企業が原子炉の臨界試験や設計解析の検証に利用できる。デジタルツインの検証や、将来の設計・許認可に役立つ運転データの取得も目的としている。各社が専用の試験施設を一から建設するのではなく、既存の設備を活用して原子炉の実証を進められる仕組みだ。

ただし、共用施設である以上、試験には一定の制約がある。DOMEが受け入れる原子炉の熱出力は最大20メガワットで、これは施設側の上限値であり、Kaleidos自体の出力を示すものではない。また、原子炉を運転できるのは一度に1基のみで、各実験の期間は最大約6か月を想定している。複数の開発企業が利用するため、試験の順序や設備の利用期間も重要な条件となる。

試験費用は各開発企業が負担する。DOEは実験の順序を決める際、技術と燃料の準備状況に加え、規制対応の計画や調達日程なども考慮するとしている。既存施設を利用できる利点がある一方、試験の進行は企業側の開発状況だけでなく、共用施設の運用計画にも左右される。

2028年の商用機納入に向け、次は運転実績の確立へ

Radiantによると、Kaleidosは2026年8月にINLへ輸送された。同社は「R-50」での製造を計画しており、2028年にはBuckley宇宙軍基地とFort Benningへ初の商用機を納入する目標を掲げている。また、10月には米海軍のCrane向けにも選定されたと発表した。試験機の運転準備と並行して、商用機の製造・納入に向けた計画も進めている。

もっとも、納入計画の実現可能性を判断するには、まず運転準備審査を完了し、燃料装荷と試験開始に進めるかを確認する必要がある。その後は、商用機に近い設計と専用燃料を使った試験で、60実効全出力日という積算運転量と、150時間以上の無人介入による連続全出力運転を達成できるかが焦点となる。安全解析書の承認は重要な前進だが、原子炉の性能や運転の安定性が実証されたわけではない。今後の試験で得られる運転データこそが、Kaleidosの実用化に向けた次の判断材料となる。