Samsung Heavy Industries(SHI)とMousterianは、浮体式データセンターを米国で開発するMOUを4月に結んだ。The Registerは8月5日、両社がテキサス州で計画する案件についてエンジニアリング契約を締結したと報じた。契約の対象には、基本設計から製作設計までが含まれる。

データセンターの増設では、計算設備の調達と同じくらい、土地、電力、冷却をどう確保するかが工程を左右する。浮体を使う案がこの工程を短くできるかは、50MW級の設計を実際の施設へ移す契約と、テキサスの接続審査を分けて見なければ判断できない。

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MOUから基本設計、詳細設計へ

The Registerによれば、今回のエンジニアリング契約は基本設計、詳細エンジニアリング、製作設計を対象とする。将来のEPC契約へ進むための段階であり、ABSによる水上施設の船級認証も見込むと報じた。

SHIは4月24日、Mousterianと米国の浮体式データセンター(FDC)開発に関するMOUを結んだと発表していた。4月27日に公表されたMousterianの説明では、同社が開発からプロジェクト遂行までを担い、SHIが浮体海洋資産のエンジニアリング、製造、納入能力を提供する役割分担だった。

The Registerは、1施設当たりのIT容量を50MWとし、最初のテキサス案件はヒューストンの既存コンバインドサイクルガスタービン(CCGT)発電所に隣接して係留するパイロットになると伝えた。ただし、契約金額や顧客は示されていない。着工日、完成日、最終的なEPC契約の締結時期も未開示である。

計算設備の外にあるサイト開発

SHIが浮体式で置き換えようとしているのは、サーバーを収める箱に限られない。土地取得から送電網接続、冷却設備、運用環境までを含むサイト開発を、造船所側の工程へ寄せる考え方である。

同社は、造船所で設計、製造、設備統合を並行して進める標準化プロセスを想定し、自己発電システムで陸上電力への依存を減らせると説明する。4月には50MW級FDC設計について、ABSとLloyd's RegisterからAiP(原則承認)を得た。AiPは設計の承認であり、完成や稼働の実績を意味しない。

海上・河川上で運用するサーバーにも別の課題がある。SHIは6月、洋上環境で想定される振動や傾斜を課題に挙げた。高塩分の空気と急な湿度変化についても、Supermicroと河川・海洋環境でサーバー基盤を検証すると発表している。Mousterianは液液熱交換を使う非蒸発型の冷却で自治体水・地下水に依存しない設計と、200kWを超えるラック密度への対応を掲げるが、これは同社の設計説明であり、実運用で得た測定値ではない。

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Project Zeusの500MWと50MW級設計は別の数字

Mousterianは公開ページで、ヒューストンのCCGT発電所隣接地に500MWのハイブリッド型「Project Zeus」を掲げ、2028年上期の入居開始を計画している。50MWはSHIがAiPを得た設計容量であり、The Registerが各施設のIT容量として報じた数字でもある。

この二つは同じ数字ではない。500MWはProject Zeusキャンパスの計画値であり、今回のエンジニアリング契約が500MW全体、あるいは特定の浮体ユニットの建設を発注したことは示さない。The Registerが報じたヒューストンのCCGT隣接パイロットとProject Zeusが同一案件かどうかも、公開情報では明示されていない。

設計承認から稼働までには、契約と認証が残る。送電網へ接続する案件には、接続審査も加わる。50MW級の設計は、まだその途中にある。

送電網接続は監査と開示を通る

テキサス州知事室は8月3日、ERCOTの相互接続プロセスを進む全データセンターについて、Public Utility Commission of Texas(PUCT)とERCOTが検証・監査を実施し、完了前にプロジェクトを進めないよう指示した。要件を満たさない案件は、テキサス電力網への接続を拒否される。

同知事室によれば、ERCOTには474GW超の接続申請があり、約90%はデータセンターである。これは稼働済み容量や建設確定容量ではなく、申請量だ。監査では、電力・発電、水・冷却、地域への影響、所有関係に関する開示が求められる。

ERCOTは6月、75MW以上の大口需要をまとめて審査する「Batch Zero」を発表した。自家発電で一部または全部をまかなう経路や、完全に孤立した施設は通常の相互接続プロセス外となる扱いも説明している。発電所隣接、自己発電、非蒸発冷却という設計方針は、州が確認する電力、水、地域影響の説明に適合し得るが、接続承認や建設許可を意味するものではない。

浮体式を実装へ移すには、船級認証とEPC契約に加え、接続を求めるなら監査に必要な開示をそろえる必要がある。金額や施設数が明らかになれば、案件の規模を確認できる。着工・完成時期とテナントが開示されれば、50MW級設計がテキサス計画でどこまで使われるかを追える。