SEMIのシリコン・マニュファクチャラーズ・グループ(SMG)は11月4日、2026年第3四半期の世界シリコンウェハー出荷面積が3,756百万平方インチ(MSI)に達したと発表した。前年同期比13.4%増、前期比5.1%増と堅調な伸びを記録したが、今回の数字で注目すべきなのは、SEMIが10月21日に示した2026年通期予測の14,420MSIとの関係だ。第3四半期までの実績を踏まえると、第4四半期の出荷が前期比わずか1.6%増えれば予測を達成できる計算になる。足元の出荷動向を考慮すれば、通期実績が予測を上回る可能性は十分にある。
第3四半期は3,756MSI、前年比の伸びが加速
SEMIによると、第3四半期の出荷面積は前年同期の3,313MSIから13.4%増加し、第2四半期の3,573MSIからも5.1%増えた。第2四半期の前年同期比増加率は7.4%だったため、伸び率は約6ポイント拡大した。
この加速は、前年の出荷水準が低かったことだけでは説明できない。2025年第3四半期の出荷面積は第2四半期の3,327MSIから0.4%減少しており、比較対象の落ち込みによる前年比増加率の押し上げ効果は約0.4ポイントにとどまる。伸び率の加速は、主に2026年第3四半期の出荷が前期比5.1%増加したことによるものだ。
SMG議長でSUMCOの営業部門責任者を務めるMasatsugu Miuraは、出荷増加の要因としてAI関連需要の強さと産業向け需要の回復を挙げた。AI需要は先端ロジック半導体やメモリーにとどまらず、パワーデバイスやフォトニクス分野にも広がっているという。産業分野ではロボット、AIサーバー向け電源、汎用産業用半導体の需要が改善しているほか、ウェハーボンディングや先端パッケージング技術の普及も300mm研磨ウェハーの需要を支えていると説明した。
通期予測14,420MSIの達成には、第4四半期の1.6%増で十分
SEMIは10月21日に公表した年次予測で、2026年の世界シリコンウェハー出荷面積が前年比11.8%増の14,420MSIになるとの見通しを示した。さらに、2027年から2029年にかけて出荷面積が毎年過去最高を更新し、2029年には17,034MSIに達すると予測している。今回公表された第3四半期の実績を踏まえると、2026年通期予測の達成に必要な出荷量を具体的に計算できる。
2026年の出荷実績は第1四半期が3,275MSI、第2四半期が3,573MSI、第3四半期が3,756MSIで、1〜9月の累計は10,604MSIとなる。通期予測の14,420MSIを達成するには、第4四半期に3,816MSIを出荷すればよい。これは第3四半期の3,756MSIからわずか1.6%の増加で届く水準だ。
第3四半期の前期比増加率は5.1%で、第2四半期も第1四半期の季節的な落ち込みからの回復を含めて9.1%増加していた。これらと比較すると、通期予測の達成に必要な1.6%という伸び率は低い。仮に第4四半期の出荷が第3四半期と同じ3,756MSIにとどまったとしても、年間出荷面積は14,360MSIとなる。予測との差はわずか60MSI、約0.4%だ。
過去の季節的な変動を当てはめると、さらに上振れする可能性も見えてくる。2025年第4四半期の出荷面積は3,437MSIで、第3四半期の3,313MSIから3.7%増加した。2026年も同程度の伸びを記録すれば、第4四半期は約3,900MSI、通期では約14,500MSIに達する計算だ。もちろん、これは前年の季節パターンを単純に当てはめた試算にすぎないが、14,420MSIという予測には上振れの余地があることを示唆している。
ただし、ここで注意したいのが出荷面積の集計範囲だ。SEMIの通期予測は、ウェハーメーカーが最終顧客に出荷する研磨ウェハーとエピタキシャルウェハーの面積を対象としており、非研磨ウェハーや再生ウェハーは含まない。一方、今回の四半期発表には集計範囲が明記されておらず、通期予測と完全に一致するかは確認できていない。両者の集計条件が異なる場合、3,816MSIという必要出荷量はあくまで目安となる。
また、SEMIは2026年の通期予測を前年比11.8%増と説明しているが、2025年の年間出荷実績12,973MSIから14,420MSIへの増加率を計算すると約11.2%となり、公表された伸び率と一致しない。比較対象となる基準値が改定された可能性などは考えられるものの、SEMIは計算に用いた基準値を明示していない。そのため、本記事では11.8%という増加率ではなく、通期予測の絶対値である14,420MSIと各四半期の公表実績を使って分析している。
予測を上回るとは限らない理由と、今後の注目点
もっとも、通期予測が必ずしも保守的とは限らない。最大の反論は、SEMIが第4四半期の成長鈍化をすでに織り込んでいる可能性だ。予測達成に必要な3,816MSIは、2025年第4四半期の3,437MSIと比較すると11.0%増に相当する。これは第3四半期の13.4%増を下回っており、前年の第4四半期が比較的高い水準だったことを踏まえれば、成長率の鈍化を見込んだ妥当な予測とも解釈できる。
また、ウェハーの出荷面積が増えても、売上高や半導体の最終需要が同じペースで伸びるとは限らない。2025年の世界シリコンウェハー出荷面積は前年比5.8%増の12,973MSIだったが、売上高は1.2%減の114億ドルだった。SEMIはこの売上減少について、従来用途の需要回復が遅れ、価格環境も改善していないことが原因だと説明している。出荷面積の拡大は市場の回復を示す重要な指標ではあるものの、ウェハーメーカーの収益改善を直接保証するものではない。
在庫調整の影響も無視できない。SEMIは10月の通期予測で、顧客による在庫調整の緩和を出荷回復の追い風として挙げており、今後の出荷動向も在庫水準の変化に左右される可能性がある。2026年第1四半期の統計発表では、当時SMG議長を務めていたGinji Yadaが「回復は一様ではない」と述べ、メモリー供給の逼迫がスマートフォンやPCの出荷を抑制する可能性にも言及していた。加えて、今回の通期予測は業界関係者の見解を集約したものであり、SEMIによればSMGや個別会員企業の公式予測ではない。
それでも、現時点では通期実績が予測を上回る可能性があるとの見方を維持する。SEMIの予測はSMG会員であるウェハーメーカーからの情報を基に作成されているため、10月21日の公表時点ですでに第3四半期の出荷動向が織り込まれていた可能性はある。ただ、その場合でも、第4四半期に必要な前年同期比11.0%増という水準は、1〜9月累計の前年同期比11.2%増とほぼ変わらない。第3四半期に記録した13.4%増という勢いが続くことを前提とした予測ではなく、前期の出荷水準を維持するだけでも予測との差は60MSIまで縮まる。
この見立てが正しいかどうかは、今後の統計で検証できる。SEMIは2025年通期の出荷統計を2026年2月10日に公表しており、2026年第4四半期を含む年間実績も2027年2月ごろに発表されると見込まれる。過去の四半期実績が改定されないことを前提に、第4四半期の出荷面積が3,816MSIを下回れば、通期は14,420MSIに届かず、上振れするとの見立ては外れる。反対に3,816MSIを上回れば予測を超え、3,900MSI前後まで伸びれば年間出荷面積は約14,500MSIに達する。第4四半期の出荷実績に加え、過去の四半期データの改定や集計範囲の整合性も確認する必要がある。



