SpaceXは2026年8月4日、6月30日までの第2四半期決算を公表した。6月の新規株式公開(IPO)を経て、上場会社として初めて開示する四半期決算である。売上高は前年同期比92%増えたが、設備投資は6.5倍の183億6,900万ドルに膨らんだ。その86.2%がAI部門へ向かい、ロケットと衛星通信への投資を大きく上回った。上場後のSpaceXを理解するには、Space、Connectivity、AIのどこが利益を出し、どこが投資を吸収しているかを見る必要がある。
183億ドルの設備投資、その86%がAIへ
第2四半期の売上高は78億1,400万ドルで、前年同期の40億7,100万ドルからほぼ倍増した。営業損失は9億7,000万ドルから1億4,300万ドルへ縮小し、純損失も10億800万ドルから5億4,100万ドルへ半減した。収益の伸びは明確である。
一方、資本配分の変化はさらに大きい。設備投資は前年同期の28億2,500万ドルから183億6,900万ドルへ増えた。内訳はAI部門が158億2,800万ドル、Connectivity部門が13億6,700万ドル、Space部門が11億7,400万ドルである。AIが全体に占める比率は86.2%に達する。
ここでいう183億6,900万ドルは、データセンターや設備などに投じたCapex(設備投資)を指す。研究開発費や販管費は含まれない。SpaceXは同じ四半期に研究開発費35億4,800万ドルも計上した。AI部門ではインフラの建設と研究開発が同時に走るため、投資負担を読むには純損失と設備投資を分けて見る必要がある。
Connectivityだけが営業黒字を確保
営業黒字を出したのはConnectivity部門だけだった。3部門の損益を並べると、全社の損益構成がはっきりする。
| 部門 | 売上高 | 前年同期比 | 営業損益 | 設備投資 |
|---|---|---|---|---|
| Space | 9億6,200万ドル | 29%増 | 5億4,200万ドルの赤字 | 11億7,400万ドル |
| Connectivity | 42億9,100万ドル | 66%増 | 16億5,600万ドルの黒字 | 13億6,700万ドル |
| AI | 25億6,100万ドル | 247%増 | 12億5,700万ドルの赤字 | 158億2,800万ドル |
Connectivity部門の営業利益は、Space部門とAI部門を合わせた17億9,900万ドルの営業損失をほぼ埋めた。差額の1億4,300万ドルが全社の営業損失になる。売上構成でもConnectivityは54.9%を占め、AIの32.8%、Spaceの12.3%を上回る。3部門のうち、現在の営業黒字はConnectivityに集中している。
Connectivity部門では、Starlinkの契約者数が前年同期の600万から1,200万へ倍増した。一方、月間ARPU(契約者1人当たりの平均売上高)は85ドルから66ドルへ下がった。それでも消費者向け売上高は44%増え、法人・政府向けは108%増えた。同部門の営業利益は前年同期比79%増の16億5,600万ドルだった。
Space部門は第2四半期に顧客向け10回、社内向け28回の計38回を打ち上げ、485トンを軌道へ投入した。それでも営業損失は5億4,200万ドルだった。SpaceXは、同部門の費用が前年同期から3億8,900万ドル増えた主因として、Starshipの研究開発加速を挙げている。打ち上げ回数の多さが、そのままSpace部門の黒字につながる段階には至っていない。
1.4GWから10GWへ、先に膨らむ計算基盤
AI部門の名目計算容量は1年前の0.4GWから1.4GWへ増えた。売上高25億6,100万ドルのうち、広告は3億6,700万ドルに減った一方、AIソリューション・インフラは3億1,100万ドルから21億9,400万ドルへ伸びた。Xの広告を中心とした事業から、計算資源を外部に貸す事業へ重心が移っている。
SpaceXは複数のクラウドサービス契約を結び、契約売上高は141億ドルに達したと説明する。そのうち16億ドルが第2四半期のAIインフラ売上高に加わった。調整後EBITDAは11億4,600万ドルの黒字へ転じたが、減価償却費や株式報酬などを含むGAAPベースの営業損益は12億5,700万ドルの赤字である。設備を増やすほど減価償却負担も後から効いてくるため、二つの指標は分けて読む必要がある。
Elon Musk氏は決算電話会見で、1.4GWの計算容量を2027年中に少なくとも10GWへ増やすとの見通しを示した。SpaceXは6月のIPOで手取り856億7,500万ドルを調達し、同月には250億ドルのシニア債も発行した。IPO資金の使途にはAI計算基盤の拡張が含まれる。6月末時点の現金・現金同等物と市場性有価証券は合計1,000億900万ドルだった。ただし10GWまでに必要な投資額は開示していない。
141億ドル契約を確定売上と見なせない理由
141億ドルは第2四半期の売上高でも、長期間にわたって固定された受注残でもない。SpaceXは「契約売上高」を、解約不能で法的強制力のある期間に受け取る契約額と定義している。容量の立ち上げを終えた後は、クラウド契約を双方が通常90日前の通知で解約できる。契約の看板額より、実際に稼働した容量と継続期間が売上を左右する。
顧客構成にも偏りがある。Form 10-Qは、AIインフラ売上の相当部分が少数顧客に集中していると明記した。顧客が自社設備へ移行したり、効率のよいモデルで必要な計算量を減らしたりすれば、増設した設備の稼働率が下がる。電力やGPUの確保に加え、建設と許認可の遅れも、容量を予定通り提供できなくする。
したがって、10GWという目標は設備容量と損益をセットで測る必要がある。2026年第3四半期以降、AI部門の営業損失と設備投資を追い、稼働済み容量の増加が契約売上の実現額に結びつくかを確認したい。Connectivity部門の営業利益が二つの赤字を上回り、1.4GWから10GWへの拡張が継続収益へ変わったとき、SpaceXのAI企業への転換は財務面でも成立する。



