中国の大手電池メーカー、欣旺達(Sunwoda)は2026年10月30日、投資家向けの質疑応答プラットフォームで、全固体電池の製品設計と製造工程の検証を完了し、現在は顧客と調整しながらサンプル試験を進めていると明らかにした。IT之家と毎日経済新聞が報じた。同社は2024年7月、全固体電池について「2026年に量産を開始し、生産能力は1GWhに達する見込み」と説明していた。しかし、今回示された開発状況は依然として量産前のサンプル評価段階にあり、当初の見通しより進捗が遅れている可能性がある。

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製品設計の検証完了とサンプル試験は、すでに公表されていた

IT之家によると、欣旺達は10月30日、投資家からの質問に対し、「全固体電池は製品設計と工程の検証を完了し、現在は顧客と調整してサンプルの試験を進めている」と回答した。ただし、報じられた回答には、評価を進めている顧客の名前やサンプルの出荷量、量産開始時期などは含まれていない。同じ記事では、理想汽車(Li Auto)と小米が一部車種で使用する電池を自社開発品に切り替えた場合、欣旺達の業績にどのような影響があるかという投資家の質問も紹介されている。これに対し、同社は顧客の事業判断を支持し、顧客内でのシェア拡大を目指すと回答した。ただし、全固体電池に関する説明がこの質問への回答だったかどうかは、記事からは確認できない。

今回の発表で注目すべきなのは、実際にどこまで開発が進んだかという点だ。欣旺達は2025年8月28日の電話会議で、第三世代の全固体電池について、エネルギー密度400Wh/kgの製品設計と製造工程の検証を完了したと説明していた(IT之家の報道)。今回の回答では「第三世代」や「400Wh/kg」という仕様には触れていないため、同じ世代の製品を指しているとは断定できない。それでも、設計と工程の検証完了という成果自体は、428日前の時点ですでに公表されていたことになる。

顧客向けのサンプル試験についても、今回初めて明らかになったわけではない。2026年5月26日には、欣旺達の董事会秘書が、全固体電池「欣·碧霄」の顧客採用や受注状況に関する投資家の質問に対し、「固体電池製品は検証およびサンプル試験の段階にある。具体的な進展は公告を参照してほしい」と回答している(証券之星配信、搜狐掲載)。その157日後にあたる10月30日の回答でも、開発段階を示す説明に大きな変化は見られない。もちろん、その間に検証作業が進んでいる可能性はあるものの、公表された情報だけでは具体的な進展を判断できない。

2026年に1GWhの量産を計画、現在確認できるのは0.2GWhのサンプルライン

欣旺達が全固体電池の量産について具体的な目標を示したのは、2024年7月3日のことだ。同社中央研究院の院長、Xu Zhonglingは中国日報の取材に対し、容量20Ah、エネルギー密度400Wh/kg以上の全固体電池について小規模試験を完了し、生産ラインの建設も並行して進めていると説明した。そのうえで、2026年に量産を開始し、生産能力を1GWhまで拡大できるとの見通しを示していた。同年9月6日には、第三世代のポリマー複合全固体電池が実験室での検証を終え、2025年には製品開発が完了する見込みだと説明している。

2025年10月23日、欣旺達はポリマー系全固体電池「欣·碧霄」を発表した。CnEVPostの報道によると、この電池は容量20Ah、エネルギー密度400Wh/kgで、1MPa未満の外部圧力という条件下で1,200サイクルを超える寿命を達成したという。また、2025年末までに生産能力0.2GWhのパイロットラインを完成させる計画も明らかにしていた。その後、2026年4月ごろの南方財経の報道では、欣旺達の関係者が「0.2GWhの固体電池サンプルラインの全工程をつないだ」と説明し、年内にパイロット生産とフルサイズセルの検証を進める方針を示している。Xu Zhonglingも、2026年中にフルサイズ電池の開発を終え、車両に搭載して検証するための要件を満たすことを目標としていた。

こうした経緯を振り返ると、2024年に示された量産計画と、2026年10月時点の開発状況には隔たりがある。2024年7月には2026年の量産開始と1GWhの生産能力を見込んでいたが、直近の発表では顧客向けのサンプル試験を進めている段階であり、2026年4月時点で確認できる設備も0.2GWhのサンプルラインだった。単純に容量だけを比較すれば、0.2GWhは1GWhの5分の1にあたる。ただし、サンプルラインと量産ラインでは設備の役割が異なるため、この数字の差がそのまま開発の遅れを表すわけではない。

電気自動車の搭載台数に換算すると、生産能力の規模をイメージしやすい。1台あたりの電池容量を75kWhと仮定した場合、1GWhは約1万3,300台分、0.2GWhは約2,700台分に相当する。ただし、これは公称生産能力を単純に換算した理論上の台数であり、実際の出荷量を示すものではない。サンプルラインは、材料や製造工程が設計どおりに機能するかを検証し、顧客評価用の電池を少量生産するための設備だ。一方、量産ラインには、一定の品質と歩留まりを維持しながら、大量の電池を継続的に生産する能力が求められる。顧客による評価と採用判断を経て、安定した量産体制を構築できるかどうかが、商用化に向けた重要な課題となる。

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2026年の目標は「量産条件の達成」に変化、当初計画との違いは?

もっとも、現在の進捗が必ずしも欣旺達の最新の開発計画から遅れているとは限らない。南方財経が報じた同社の4段階にわたる開発計画では、2026年の目標を「材料、量産工程、設備に関する技術的課題を克服し、ポリマー複合全固体電池が量産に必要な条件を満たすこと」としている。2027年には硫化物系の第二世代全固体電池の設計凍結、2030年にはエネルギー密度500Wh/kg超の全固体電池の設計凍結を目指すという。この計画に照らせば、2026年時点で顧客向けのサンプル試験を進めていること自体は、想定された開発過程の一部と考えることもできる。

ただし、2024年7月の説明では「2026年の量産開始」と「1GWhの生産能力」という具体的な時期と規模が示されていたのに対し、後の計画では「量産に必要な条件を満たすこと」という技術開発上の目標になっている。量産を開始することと、量産に必要な技術的条件を整えることは同じではない。両者の表現に違いがあるのは確かだが、欣旺達が当初の量産目標を正式に変更したと説明する記録は確認できていない。そのため、計画が延期されたと断定することはできないものの、2026年内の量産開始という従来の見通しが、そのまま維持されているかどうかは不明だ。

競合他社の開発状況を見ても、欣旺達だけが大きく遅れているとは言えない。中国の電池大手、寧德時代(CATL)は10月27日、全固体電池について2027年に少量生産が可能になるとの見通しを示した。また、奇瑞は10月20日、固体電池のパイロット生産ラインを2027年に稼働させる計画を発表している。各社とも実用化に向けた開発を続けている段階であり、欣旺達の進捗を評価する際には、競合との比較よりも、同社自身が過去に掲げた目標との違いが重要になる。

実際、欣旺達が2026年4月に示した年内の計画は、パイロット生産とフルサイズセルの検証を進めるというものだった。これらは量産に向けて必要な工程ではあるものの、2024年7月に見込んでいた1GWh規模の量産開始とは異なる段階にある。10月30日の回答でも量産出荷や1GWh級ラインの稼働は報告されておらず、現時点では量産準備の段階にとどまっていると考えるのが妥当だ。ただし、2026年はまだ2カ月残っており、年内の量産開始が不可能になったと判断するには早い。

さらに、欣旺達の経営陣からは、全固体電池の本格的な商用化に慎重な見方も示されている。同社副総裁のLiang Ruiは2025年10月、第一財経の取材に対し、日本や米国の企業が主張する2027年の全固体電池の産業化について懐疑的な見解を示した。最も楽観的に考えても少量生産が始まるのは2030年以降であり、全固体電池と電解液を使う従来のリチウムイオン電池は長期間にわたって併存すると述べている。この発言は、全固体電池の量産に向けた技術的な課題が依然として大きいという認識を反映したものといえる。

なお、ここで比較しているのは、2024年に量産目標が示された第三世代のポリマー系全固体電池であり、2027年に設計凍結を目指す硫化物系の第二世代製品は対象としていない。2026年末までに欣旺達が公式公告や投資家向けの回答、説明会などで、全固体電池の量産出荷開始、または1GWh級生産ラインの稼働を明らかにすれば、当初計画より進捗が遅れているという見方は修正する必要がある。また、2027年最初の定期報告で顧客名や出荷量、具体的な量産開始時期が公表されるかどうかも、開発状況を判断する材料になる。

欣旺達は製品設計と工程の検証を終え、顧客向けのサンプル試験まで進んでいるものの、現時点で確認できる実績は2024年に掲げた量産目標には達していない。今後は、技術的な検証の完了だけでなく、顧客による採用、量産ラインの稼働、実際の出荷という具体的な成果が求められる。2026年末までの動向が、当初の量産計画を達成できるかどうかを見極める重要な判断材料となる。