Tesla、SpaceX、SpaceXAIが2026年9月15日、半導体製造計画「Terafab」の名称をめぐり、米ナノ加工装置メーカーTERA-printを提訴した。求めているのは、Terafabという名称の使用が相手の商標権を侵害しないとする確認判決だ。TERA-printから名称の使用停止を求める警告書を受け、交渉を経て、Musk氏側の3社が裁判所に判断を求めた形である。巨大な半導体工場と卓上の研究装置には明らかな違いがあるが、商標の争いでは、その大きさの違いだけで混同のおそれを否定できるわけではない。

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警告書を受け、Tesla側が先に提訴

テキサス西部地区連邦地裁に提出された訴状によると、TERA-printは5月23日、TeslaなどにTerafabの名称使用を直ちに、かつ恒久的にやめるよう要求した。同社が販売する「TERA-FAB」製品群と混同されるおそれがある、という理由だ。原告側は、6月10日には商標権侵害や不正競争などを理由に訴えるとの通告も受けたと説明している。

これは企業からの警告書であり、裁判所が工場の建設や名称使用を差し止めた命令ではない。9月15日に起こされた事件で原告になっているのも、TERA-printではなくTesla、SpaceX、SpaceXAIだ。3社は、自らの現在および計画中の名称使用が侵害に当たらないことなどを確認するよう求めている。

原告側の説明では、双方は6月から8月にかけて6回協議したものの、解決に至らなかった。訴状は、名称を使用し、保護していくうえでの法的な不確実性が残っていると訴える。工場計画を広く知らせた後に、同名に近い製品を持つ企業から権利を主張された。その不確実性を先に取り除こうとする訴訟である。

一方、TERA-print共同創業者のAndrey Ivankin氏は、PCMagへの直接回答でこれとは異なる説明をしている。Teslaから和解案が出され、話し合いを続ける意向も示されていたのに提訴されたと反論し、自社の商標を守る姿勢を表明した。同氏は事業の関連性を示すものとして、新しい半導体を製造する米国防総省との契約や、TERA-FAB製品を利用するAI企業Mattiqへの一部出資と取引も挙げた。これらは同氏の説明であり、契約の規模や内容が今回の訴訟で認定されたわけではない。

既存の登録と、5月の追加出願を分けて読む

TERA-printの「TERA-FAB」には、Musk氏側が計画を発表する前の登録がある。訴状第31段落は、同社の登録番号6295482について、2017年6月7日に出願され、2021年3月16日に登録されたと記載している。対象は微細なパターンを描くリソグラフィー装置や、その装置に使うペンアレイだ。

訴状に記載されたTERA-printの2021年の登録、同社の2026年5月の追加出願、Teslaの3件の出願は、対象範囲も手続きの段階も同一ではない。

当事者・商標 訴状に記載された登録・出願 国際分類 主な対象
TERA-print「TERA-FAB」 2021年3月16日登録、登録番号6295482 第7・9類 ポリマーペン/ビームペン・リソグラフィー装置、印刷用ペンアレイ
TERA-print「TERA-FAB」追加出願 2026年5月22日出願、出願番号99840889 第9・42類 半導体関連材料やシリコンチップ、ナノ電子デバイス、AI設計・開発サービスなど
Tesla「TERAFAB」文字商標 2026年5月18日出願、出願番号99829894 第39・40類 半導体チップなどの配送、受託製造
Teslaの図案化した「TERAFAB」と文字商標「TESLA TERAFAB」 2026年5月18日出願、出願番号99829877/99829887 第9・39・40・42類 チップなどの商品と、その配送・受託製造、設計・試験・研究サービス

出典は9月15日提出の訴状、第23〜27・31・34段落。同じ指定範囲を持つTeslaの2件を最終行にまとめた。表は訴状の記載を比較したもので、最新の審査状況や裁判所の認定を示すものではない。

ここで混ぜられないのが、既存登録と追加出願だ。TERA-printが5月22日に対象を広げた出願をしたという記載は、従来の登録がその範囲まで拡張されたことを意味しない。逆に、追加出願が新しいからといって、それ以前からある装置分野の登録まで消えるわけでもない。

Tesla側は、追加出願が自社の米国出願の4日後、警告書の前日だった点を挙げ、Terafabの公表に反応して権利範囲を広げようとしたと主張する。ただし、その動機についての評価は原告側のものだ。またTesla自身も、3件の米国出願について3月30日のジャマイカ出願に基づく優先権を主張している。5月の出願日の前後だけを並べて、どちらが優先するかを決めることはできない。

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卓上装置と巨大工場、それでも残る商標の問い

TERA-printの装置は、微細な表面構造を研究室で試作するための道具だ。同社のビームペン・リソグラフィー技術は、小さな開口を持つ多数のプローブに光を通し、それぞれの光をデジタル制御してパターンを描く。電子線で描画する方式ではなく、光を使う技術であり、真空を必要としないと説明されている。

TERA-Fab E series 2.0では、画像ファイルから描画パターンを変えられる。メーカーはビームペン・リソグラフィーのモードで250nm未満の解像度を掲げているが、これは装置が描けるパターンの仕様だ。量産半導体のプロセス世代や、工場の生産能力を示す数字ではない。研究者が図案や材料を変えながら試せることに製品の用途がある。

対するTerafabの公式計画は、ロジックとメモリー、先端パッケージングを一つの施設に集め、地上や宇宙で使うAI半導体を大規模に生産するというものだ。完成したチップを供給する工場と、実験用のパターンを作る装置では、売るものも使い方も違う。Tesla側が、卓上装置を製造・販売する意図はないと訴状で述べるのも、この違いを強調するためだ。

それでも「生物研究用の装置だから半導体とは無関係」と切り分けるのは正確ではない。TERA-printの公式用途一覧には、バイオエンジニアリングに加えて電子デバイスやセンシングも含まれる。用途が接することと、同じ市場で競うことは別だが、巨大工場と卓上装置の写真を並べただけでは、その商業上の関係までは分からない。

米特許商標庁(USPTO)は、登録審査で混同のおそれを判断する一般的な説明で、商標の類似性と商品・サービスの商業上の関係を挙げている。商品が完全に同一でなくても、同じ提供元から来たものだと消費者が誤認する関係なら問題になりうる。また商標検索の案内は、関連する商品・サービスが同じ国際分類に属する必要はないと明記する。表の分類番号だけで、侵害か非侵害かが決まるわけではないのだ。

このUSPTOの説明は登録審査の一般論であり、本件訴訟の結論を先取りするものではない。ただ、何を混同するのかを理解する助けにはなる。工場を卓上装置と取り違えるかではなく、名称から両者に共通の提供元やつながりがあると思うか、という問いである。

実際、Tesla側の訴状も双方向の混同を否定している。Terafabの工場がTERA-printに由来すると受け取られる方向に加え、TERA-printの装置がTesla側と関係する製品だと思われる逆方向についても、顧客や商業上の文脈が異なると主張した。規模の大きい側が小さい側と間違えられる可能性だけを考えれば済む争いではない。

名称の決着と、半導体の量産は別の課題

Tesla側は9月15日の訴状で、Terafabにはまだ製造能力がなく、製品も販売していないと明記した。公式サイトが描く大規模な半導体生産は、現時点の能力ではなく計画である。

商標訴訟は、その計画に使う名称の法的な不確実性を扱う。警告書が届いたことを、工場建設が裁判所命令で止まったことへ置き換えることはできないし、この訴状から量産日程への影響も確定できない。一方、名称の争いが解決しても、製造能力が確立した証明にはならない。

今後の裁判所の判断や当事者の合意は、Terafabの名を使い続けられる条件を明らかにするだろう。半導体計画の進展を測るには、それと別に、実際の製造能力と製品供給を確認する必要がある。