韓国の電子新聞は2026年9月16日、半導体製造装置に組み込む部品の納期が長期化し、一部の日本製中核部品では最大40カ月に達すると報じた。AI向け半導体を増産するには製造装置が必要だが、その装置を作るための部品調達にも時間がかかっている。報道の数字は匿名企業の個別事例であり、すべての装置や工場の完成が40カ月遅れるという意味ではない。それでも、設備投資の拡大が実際の増産へつながる時期を考えるうえで、装置メーカーより上流の供給能力を見落とせなくなった。

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40カ月は一部の中核部品、業界平均ではない

電子新聞の報道が挙げたのは、成膜装置、レーザー加工装置、パッケージング装置を手掛ける各社の調達事例である。ここでいう納期は、部品を注文してから受け取るまでの期間を指す。記事に出てくる企業はA社、B社、C社と匿名化されており、部品の型番や供給元の社名は示されていない。

装置メーカーの事例 対象となる部品 従来の納期 報道された納期
成膜装置のA社 成膜装置用部品 4カ月 最大10カ月
レーザー加工装置のB社 日本製の中核部品 記載なし 最大40カ月
パッケージング装置のC社 韓国内で調達する部品 4カ月 6カ月以上

出典:電子新聞、2026年9月16日。対象となる装置・部品が異なる個別事例であり、同一部品の地域別比較ではない。

40カ月という数字が示すのは、B社が調達する一部の中核部品の待ち時間だ。従来の納期が明らかでないため、B社について何倍に延びたかは計算できない。A社とC社には過去との比較があるが、対象となる装置や部品は異なる。3社の事例から半導体装置業界全体の平均納期を算出できない。

C社の事例からは、韓国内での調達も遅延を免れていないことが分かる。ただし、この比較だけで海外製と国内製の供給力に優劣を付けることは難しい。部品ごとの仕様や発注条件が揃っていないからだ。共通して読み取れるのは、装置を製造する前に必要な部品の確保で、予定より長く待つ企業があるという点になる。

上乗せを払っても縮まらない納期

B社の関係者は電子新聞に対し、上乗せを支払ってでも早い納品を望んでいるが、供給元の生産能力が限られ、納期を前倒しするのは難しいと通知されたと説明している。調達予算を増やせば必要な時期に買える、という状態ではないようだ。

この発言では、価格と納期を分けて読む必要がある。買い手が追加負担を受け入れる姿勢を示したことは分かるが、供給元が値上げを実施したか、実際の購入価格がどれほど上がったかは明らかにされていない。確認できるのは、支払い条件を改善しても納期短縮につながりにくいという供給面の制約である。

電子新聞は背景として、AI関連需要の急増に対し、部品メーカーの能力増強が先行していなかったという業界の見方を伝えた。匿名の関係者によると、今から増産に動いても目の前の需要への対応には間に合わず、AI好況がいつまで続くか読めないことも投資を慎重にしているという。

足元の受注が強いことと、将来に向けて工場の能力を増やす判断は、時間軸が違う。増産設備を用意するまでに需要が変わると考えれば、部品メーカーは現在の不足だけを見て投資を決めにくくなる。これは報道された慎重姿勢を理解するための見方であり、個々の供給元が増産を断念したと確認されたわけではない。

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520億ドルの投資と生産能力の間にある時間

需要側では、メモリ工場への投資拡大が見込まれている。業界団体SEMIは2026年6月29日の公式発表で、世界の300mmメモリ工場の設備投資を2026年に前年比29%増の520億ドル、2027年にさらに11%増の570億ドルと予測した。HBMやDDR5への需要、AIの普及に伴うデータ保管需要が投資を支えているという。

520億ドルはメモリ分野の300mm工場を対象とした設備投資の見通しであり、半導体製造装置市場全体の売上高を示す数字とは異なる。また、6月時点の予測なので、9月に報じられた部品納期の長期化を織り込んだ実績値として扱うこともできない。SEMIの発表は投資需要の背景を支える資料であり、電子新聞が挙げた3社の納期を検証した資料ではないのである。

同じ発表で、SEMIは世界の300mmメモリ生産能力を2026年に月間410万枚、2027年に月間420万枚のウエハー規模と見込んでいる。そのうえで、先端DRAM、HBM、高層化したNANDへの製造技術の移行や工程の複雑化が、実効的な能力の伸びを抑えると説明した。

投資額が増えるほど、同じ割合で完成品が増えるとは限らない。新しい世代のメモリを作るために設備を更新する投資も含まれるからだ。さらに、ウエハーの処理枚数と出荷するメモリ容量は異なる尺度であり、月間の枚数だけを使ってHBMやDRAMの供給増加率まで求めることはできない。

SEMIが挙げる技術移行の負担は、工場の能力を考える際の制約である。一方、今回の部品不足は、工場へ納める装置を作る段階に現れた制約といえる。両者は発生する場所が異なり、設備投資の金額だけでは捉えにくい時間差を、それぞれ別の側から示している。

増産計画を読むには部品から工場までを追う

装置メーカーにとっては部品を受け取れる時期、半導体メーカーにとっては装置が届いて生産能力として使える時期が、それぞれ計画に関わる。部品が足りず装置を完成させられなければ、その先の納入予定にも影響する可能性がある。ただし、部品の待ち時間を、そのまま工場全体の稼働延期幅に置き換えることはできない。

例えば、長納期部品を早く発注している計画と、これから発注する計画では、同じ納期でも予定への影響が違うはずだ。これは個別工場の実態を示すものではなく、遅延の大きさを判断する際の条件である。電子新聞は、そうした発注時点や各社の工程表までは伝えていない。

AI関連の投資発表を追う際には、資金の規模に加え、装置の納入予定が維持されているか、工場で予定した能力が立ち上がっているかを確かめたい。部品供給の増強が装置納入につながり、技術移行を含む工場側の準備も進めば、投資計画を実際の半導体供給へ近づけられる。