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世界の半導体は米国のたった1カ所の鉱山に支えられている

Y Kobayashi

2024年3月29日

現状、台湾が先端半導体のほとんどを製造していることから、地政学的リスクが懸念されているが、そうした半導体チップの製造に必要な原材料も、世界でたった1カ所の小さな町にある鉱山からしか採掘できないことは知られていない。

ウォートン大学の教授で人工知能が仕事と教育に及ぼす影響についても研究しているEthan Mollick氏は、「現代経済はノースカロライナ州スプルース・パインの一本の道の上に成り立っている」と表現し、世界が置かれている危うい現状を表現している。この道とは、Sibelco North America社が所有する鉱山へと続く、何の変哲もない道だが、その鉱山はシリコンウェハーの精製に必要な溶融石英るつぼを作るのに必要な石英の唯一の供給元である鉱山なのだ。

半導体産業の根幹ともいえる半導体デバイスは、シリコン単結晶から製造されるシリコンウェハーの上に微細な電子回路を形成し製造されている。単結晶シリコンは、高純度多結晶シリコン(ポリシリコン)を原料とし、石英るつぼに充填し、引上げ機の中で加熱溶融して育成される。高純度な石英るつぼは、シリコン単結晶を製造する上で溶融シリコンを高純度に保つのに最適な容器となる。このるつぼを製造するための高純度石英は、スプルース・パインの鉱山でしか採掘出来ないのだ。

スプルース・パインはノースカロライナ州シャーロットから北西に車で2時間ほどの小さな町だ。この地域へは、出発地によってさまざまな方法で行くことができるが、最後の区間はフィッシュ・ハッチェリー・ロードを通る必要がある。Google Mapで見てみると、2車線の田舎道で、自然に囲れた場所だ。

特殊産業鉱物の採掘、加工、販売を手がけるSibelcoが所有するこれらの鉱山が、世界の半導体産業だけでなく太陽光発電市場にとっても不可欠であることが強調されたのは、今回が初めてではない。

Ed Conwayは昨年夏に出版した著書『Material World』でこの問題を取り上げた。それ以前にも、さまざまなメディアがこの鉱山を取り上げている。Mollick氏は最近のツイートで再びこの問題を取り上げ、その戦略的重要性を強調した。Sibelcoの高純度石英と同等の組成の石英を人工的に合成することは技術的には可能だが、現状ではコストが高く採算が取れない。Mollick氏は、Material Worldからの抜粋を引用し、もし鉱山が何らかの形で操業を停止することになれば、「代替燃料を生産する技術が拡大するまでの数年間、大きな混乱が生じるだろう。しかし、その混乱はかなり壊滅的なものになるだろう」と、警鐘を鳴らしている。

これは憂慮すべき事態であるが、Mollick氏の主張が誇張なのではないかと考える向きもあるだろう。だが、これは事実なのだ。世界中のデジタル機器に、スプルース・パインの超高純度クォーツが関わっているという事実は否定できない。「ほぼすべての携帯電話やコンピューター・チップの内部に、スプルースパイン産の石英が使われていると考えると、少し心がざわつきます」と、高品質石英の大手サプライヤーであるQuartz社の鉱山マネージャー、Rolf Pippert氏はBBCに語っている

このノースカロライナ州の地味な町が、なぜ世界の半導体サプライチェーンでこれほど大きな役割を果たすようになったのか?その答えは、3億8000万年前、アフリカと北アメリカの衝突の際に形成されたユニークな鉱床にある。この鉱床は、3億8000万年前のアフリカと北米の衝突の際に形成されたもので、形成時の猛烈な熱と水不足が、比類ない純度の石英岩を生み出した。これらの岩石は地中から採取され、石英の砂利となり、さらに細かい砂に加工される。

Sibelcoは、IOTAというブランド名で同社の高純度石英砂を販売している。同社によれば、IOTA「ユニークな光学的、機械的、熱的特性を持つ溶融石英の製造に使用され、幅広いハイテク製品の製造に不可欠な材料」とのことだ。

人工知能のとどまるところを知らない進歩は、チップとそのサプライチェーンに含まれる素材に対する需要を引き続き押し上げるだろう。スプルース・パインがそれについていけるかどうかが、ひとつの問題である。

もちろん、Sibelcoもこうした傾向に注目しており、昨年、IOTAの需要を理由に、スプルース・パイン工場の高純度石英生産能力を倍増させるために2億ドルを投資すると発表した。2024年から2027年の間にさらに5億ドルを投資する予定である。

著:Conway, Ed
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