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Windows 11、新ファイルシステムReFSの本格導入テスト開始?NTFS後継の全貌

Y Kobayashi

2025年4月5日

Windows 11の最新Insiderビルドにおいて、長年標準であったNTFSに代わる可能性を秘めた新しいファイルシステム「ReFS」を、OSインストール時に選択できるオプションがテストされていることが明らかになった。これは将来的にWindowsのストレージ基盤が大きく変わる可能性を示唆するものであり、ユーザーにはより大容量で堅牢なデータ管理の道が開かれるかもしれない。

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Windows 11 Insiderビルドに現れた「ReFS」という選択肢

Windows InsiderプログラムのCanaryチャネル向けにリリースされた最新ビルド「Build 27823」において、OSのクリーンインストールプロセス中に、標準のNTFS(New Technology File System)に加えてReFS(Resilient File System)を選択できるオプションが用意されていることが、Windows関連の情報に詳しいPhantomOfEarth氏によって発見された。

このオプションは「Flexible Storage」というメニュー内に隠されており、ユーザーはパーティションや未割り当て領域をフォーマットする際にNTFSかReFSかを選べるという。ただし、この「Flexible Storage」という名称が具体的に何を意味するのか、Microsoftからの公式な説明はまだない。

重要な点として、現時点ではReFSでフォーマットされたパーティションからWindows 11を起動することはできない。OSのブートドライブには依然としてNTFSが必要であり、ReFSはデータ保存用のセカンダリドライブとして利用することが想定されているようだ。昨年10月には、ファイルコピー速度を向上させるReFSの「ブロッククローニング」機能がWindows 11に搭載される動きが見られており、今回のインストールオプションの追加は、ReFSのコンシューマー向け展開が段階的に進んでいることを示唆している。

ReFSとは?NTFSを超える次世代ファイルシステムの特長

ReFS(Resilient File System:回復性ファイルシステム)は、MicrosoftがWindows Server 2012(2012年リリース)で初めて導入した、比較的新しいファイルシステムである。Microsoftの公式ドキュメントによると、ReFSは「データの可用性を最大化し、多様なワークロードにわたる大規模データセットに対して効率的にスケーリングし、破損に対する回復力(Resiliency)によってデータの整合性を提供する」ことを目的として設計された。1993年のWindows NT 3.1と共に登場して以来、長らくWindowsの標準であり続けたNTFSの後継として期待されている。

ReFSがNTFSと比較して持つ主な利点は、以下の3点に集約される。

  1. 耐障害性 (Resiliency): データ破損に対する強固な保護メカニズムを備えている。
    • 整合性ストリーム (Integrity-streams): メタデータとオプションでファイルデータ自体にチェックサムを使用し、データ破損を確実に検出する。
    • Storage Spacesとの統合: ミラーリングまたはパリティ構成の記憶域スペース(Storage Spaces)と組み合わせることで、破損が検出された場合に正常なコピーを使用して自動的に修復を行う。修復プロセスは破損箇所に限定され、オンライン(ボリュームを停止させずに)で実行される。
    • データのサルベージ: 破損データに代替コピーが存在しない場合でも、ReFSは破損データを名前空間から削除し、ボリューム自体はオンライン状態を維持しようと試みる(ただし、稀にオフラインが必要なケースもある)。
    • プロアクティブなエラー修正: 「スクラバー」と呼ばれるデータ整合性スキャナーが定期的にボリュームをスキャンし、潜在的な破損を検出して事前に修復を試みる。これにより、従来のchkdskのようなディスクチェックツールの必要性が薄れる可能性がある。
  2. パフォーマンス: 特定のワークロード、特に仮想化環境においてパフォーマンスを向上させる機能を備えている。
    • ミラーアクセラレーションパリティ (Mirror-accelerated parity): Storage Spaces Direct環境において、高速なパフォーマンス層(SSDミラーなど)と大容量層(HDDパリティなど)を組み合わせ、書き込みは高速層で行い、アクセス頻度の低いデータを効率的に容量層へ移動させることで、性能と容量効率を両立する。
    • ブロッククローニング (Block cloning): ファイルの一部(ブロック)をコピーする際に、実際にデータを複製するのではなくメタデータ操作で済ませる技術。これにより、仮想マシン(VM)のチェックポイントマージなどの操作が高速かつ低負荷になる。
    • スパースVDL (Sparse Valid Data Length): 巨大なファイルをゼロで埋める操作を高速化する技術。例えば、固定サイズの仮想ハードディスク(VHD)作成にかかる時間を数十分から数秒レベルに短縮できる。
  3. スケーラビリティ: 巨大なデータセットを扱う能力が飛躍的に向上している。
    • 最大ボリューム/ファイルサイズ: ReFSは最大で35ペタバイト(PB)のボリュームサイズとファイルサイズをサポートする。これは、最大256テラバイト(TB)であるNTFSの限界を遥かに超える。
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NTFSと比較:ReFSのメリットと現時点でのデメリット

30年以上にわたりWindowsの標準ファイルシステムとして機能してきたNTFSは、安定性、幅広い互換性、BitLockerによる暗号化、リムーバブルメディアのサポートなど、多くの実績と利点を持っている。しかし、データ量が爆発的に増加し、より高い信頼性が求められる現代において、その設計思想には限界も見え始めている。

ReFSは、前述の通り、特に耐障害性とスケーラビリティにおいてNTFSを凌駕する可能性を秘めている。Microsoftが公開している機能比較表を見ると、その違いがより明確になる。

機能ReFSNTFS
最大ファイル名長255 Unicode文字255 Unicode文字
最大パス名長32K Unicode文字32K Unicode文字
最大ファイルサイズ35 PB256 TB
最大ボリュームサイズ35 PB256 TB
BitLocker暗号化
データ重複除去○ (Server 1709以降)
ブロッククローン×
スパースVDL×
ミラーアクセラレーションパリティ○ (Storage Spaces Direct)×
ファイルシステム圧縮× (現時点)
ファイルシステム暗号化(EFS)× (現時点)
トランザクション× (現時点)
オブジェクトID× (現時点)
ODX (Offloaded Data Transfer)× (現時点)
ショートネーム× (現時点)
拡張属性× (現時点)
ディスククォータ× (現時点)
ブート可能× (現時点)
リムーバブルメディア対応× (現時点)
ページファイルサポート○ (ReFS 3.7以降)

この表からも分かる通り、ReFSは強力な機能を持つ一方で、現時点ではNTFSが持ついくつかの基本的な機能(ファイルシステムレベルの圧縮や暗号化、リムーバブルメディアへの対応、そして最も重要なOSのブート機能)をサポートしていない。Microsoftはこれらの機能について「unavailable on ReFS at this time(現時点では利用不可)」と記述しており、将来的に追加される可能性を示唆しているが、具体的な時期や保証はない。

また、古いOS(Windows 7/8)や特定の古いハードウェア上のWindows 10/11では互換性の問題が発生する可能性や、一部アプリケーションとの非互換性が発生する可能性もあるようだ。

ReFSはNTFSを置き換えるのか?ユーザーへの影響と今後の展望

Windows 11のInsiderビルドでReFSのインストールオプションが登場したことは、MicrosoftがReFSをコンシューマー向けOSの主要ファイルシステムとして検討している可能性を示す重要な兆候である。FATファイルシステムがNTFSに置き換えられたように、いずれReFSがNTFSに取って代わる日が来るかもしれない。

しかし、現時点ではNTFSが依然としてWindows PCの標準であり、すぐに置き換えられる状況ではない。当面考えられるシナリオとしては、OSを起動するためのNTFSパーティションと、大容量データや高い信頼性が求められるデータを保存するためのReFSパーティションを併用する構成だろう。特に、テラバイト級のSSDが一般的になりつつある中で、ReFSの耐障害性や効率的な大容量データ管理能力は魅力的に映る。

ただし、Insiderビルドでテストされている機能が必ずしも最終的な製品版に搭載されるとは限らない点は留意が必要だ。Microsoftは現在、ReFSをコンシューマー環境でテストし、バグ修正や互換性検証を進めている段階と考えられる。もし順調に進めば、早ければ今年後半に予定されている大型アップデート「24H2」(あるいは「25H2」との予測もある)や、噂される次期OS「Windows 12」で正式にサポートされる可能性もあるが、現時点では憶測の域を出ない。

ユーザーにとっては、将来的にReFSが標準となれば、特に意識せずともデータ破損のリスクが低減され、大容量ストレージをより効率的に扱えるようになるという恩恵が期待できる。一方で、普及初期には既存のソフトウェアやハードウェアとの互換性問題が発生する可能性も考慮する必要があるだろう。

MicrosoftがReFSの開発を継続し、NTFSが長年培ってきた利便性や互換性をキャッチアップさせることができれば、Windowsのファイルシステムは大きな転換点を迎えることになる。今回のInsiderビルドでの動きは、その未来に向けた小さな、しかし重要な一歩と言えるだろう。


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