Windows 11の標準搭載アプリの機能強化をMicrosoftが計画しているようだ。Windows InsiderプログラムのDevおよびCanaryチャンネル向けに、Snipping Tool(スニッピングツール)、Paint(ペイント)、そしてNotepad(メモ帳)の大型アップデートの配信を開始された。特に注目すべきは、AI技術を深く統合した画期的な新機能の数々だ。これにより、スクリーンショット、画像編集、テキスト作成といった日常的な作業が、これまで以上に効率的かつクリエイティブに変貌するだろう。
Windows 11標準アプリ群に大型アップデートの波!AIが日常作業を革新
Microsoftは、Windows Insider Blogを通じて、ペイント、Snipping Tool、そしてメモ帳という、Windows 11の根幹を成すアプリケーション群に対する大幅な機能アップデートを発表した。これらのアップデートの核心にあるのは、言うまでもなく「AI(人工知能)」の統合だ。これまでも部分的にAI機能の導入は進められてきたが、今回はより踏み込んだ形で、各アプリのコア機能にAIが深く関与し、ユーザーの生産性向上やクリエイティブな作業を力強く支援することを目指している。
特に注目すべきは、これらのAI機能の多くが、先日発表された新しいカテゴリのPC「Copilot+ PC」の能力を最大限に活用するように設計されている点だろう。Copilot+ PCは、高性能なNPU(Neural Processing Unit)を搭載し、ローカル環境での高度なAI処理を可能にすることで、クラウド依存を減らし、応答性とプライバシー保護を向上させることが期待されている。今回のアップデートは、そのCopilot+ PCが提供する新しいコンピューティング体験の序章と言えるのかもしれない。
Snipping Tool: AIで進化する完璧なキャプチャとGIF出力
Windowsユーザーにとって、画面キャプチャツールとして長年親しまれてきたSnipping Tool。シンプルな操作性で多くの支持を集めてきたこのツールが、ここ数ヶ月で驚くべき進化を遂げている。単なる静止画キャプチャから画面録画機能まで搭載し、その利便性は飛躍的に向上したが、今回のアップデートではさらに強力な機能が追加される、あるいは追加される可能性が濃厚となっている。
待望の「GIFアニメーション作成機能」ついに搭載か? リーク情報が示唆する可能性
まず、多くのユーザーが待ち望んでいたであろう機能が、スクリーン録画からのGIFアニメーション直接エクスポート機能だ。Windowsのプレビュービルドの解析で知られるPhantomOfEarth氏が、Snipping Toolにこの機能が間もなく搭載されることを示唆する情報を発見したという。
これまで、Snipping Toolで録画した画面をGIFアニメーションにするには、一度動画ファイルとして保存し、その後別途ファイルコンバーターやオンラインツールを使用して変換するという手間が必要だった。しかし、この新機能が実装されれば、録画後すぐに低画質または高画質のGIFとしてエクスポートできるようになる見込みだ。これにより、短い操作説明やリアクションGIFなどを手軽に作成し、共有する際のクリック数が劇的に削減されることは間違いない。公式発表ではないものの、その実現には大きな期待が寄せられている。
「パーフェクトスクリーンショット」で作業効率が大きく向上
公式に発表された新機能の一つが、「パーフェクトスクリーンショット (Perfect screenshot)」だ。これは、Copilot+ PC限定のAI活用機能で、画面キャプチャ時の煩わしさを過去のものにするかもしれない。

従来の矩形選択では、どうしても余分な背景が入り込んだり、逆に必要な部分が少し欠けてしまったりと、完璧な範囲を選択するには細心の注意と技術が求められた。そして多くの場合、キャプチャ後にトリミング作業が発生していたはずだ。しかし、「パーフェクトスクリーンショット」機能を使えば、ユーザーが大まかに選択範囲を指定すると、AIがその領域内のコンテンツ(ウィンドウ、アイコン、特定のオブジェクトなど)をインテリジェントに認識し、選択範囲を自動的に最適な形にスナップしてくれる。
この機能は、Snipping Toolのツールバーから選択するか、キャプチャ範囲選択時にCtrlキーを押しながらドラッグすることで有効になる。手動での微調整も可能で、キャプチャ確定前に完璧な状態に追い込める。資料作成やプレゼンテーション準備などでスクリーンショットを多用するユーザーにとっては、作業時間の大幅な短縮に繋がり、まさに「痒い所に手が届く」機能と言えるだろう。
「カラーピッカー」で欲しい色を瞬時に取得
もう一つの目玉機能が「カラーピッカー」の搭載だ。デザイナーや開発者、あるいは資料作成で配色にこだわるユーザーにとって、これは非常に実用的なツールとなるだろう。

画面上の任意の色をスポイトツールでクリックするだけで、その色のHEX、RGB、HSL値を瞬時に取得できる。さらに、より正確な色を選択するために、ポインター周辺をズームする機能(マウスホイールまたはCtrl + +/- キー)も備わっている。Webサイトやアプリケーションのデザイン、ブランドカラーの確認など、これまで専用ツールやブラウザの拡張機能に頼っていた作業が、OS標準のSnipping Toolで完結するようになるのは大きなメリットだ。
AIでお絵描きが新次元へ!「ペイント」の驚くべき新機能
Windowsの黎明期から存在する「ペイント」もまた、AIの力で劇的な進化を遂げる。単なるお絵描きソフトの枠を超え、クリエイティブなアイデアを手軽に形にできるツールへと変貌しようとしている。
プロンプト一つでオリジナルステッカーを!「ステッカージェネレーター」
今回のアップデートで最も注目されるペイントの新機能が、「ステッカージェネレーター (Sticker generator)」だろう。これは、Copilot+ PC限定で、かつMicrosoftアカウントでのサインインが必要となるAI機能だ。

ユーザーが「サングラスをかけた猫」のようなテキストプロンプトを入力すると、AIがそれに基づいて複数のユニークなステッカーを生成してくれる。生成されたステッカーは、ワンクリックでペイントのキャンバスに追加したり、コピーして他のアプリケーションで使用したり、後で使えるように保存しておくことも可能だ。ツールバーには新しく「ステッカー」オプションが追加され、最近生成したステッカーに簡単にアクセスできる。
自分のアイデアを瞬時にビジュアル化できるこの機能は、プレゼンテーション資料のアクセントや、SNS投稿用のオリジナル画像の作成など、幅広い用途で活躍しそうだ。これまで専門的なスキルや高価なソフトウェアが必要だった作業が、誰でも手軽に楽しめるようになるインパクトは大きい。
「オブジェクト選択」で編集が劇的に楽に
ペイントにも、AIによるスマートな選択ツール「オブジェクト選択 (Object select)」が導入される。これもCopilot+ PC限定の機能だ。

画像内の特定の要素(人物、動物、物体など)をAIが認識し、ユーザーがその要素をクリックするだけで、正確かつ簡単に選択範囲を作成できる。これにより、選択したオブジェクトの移動、コピー、削除、あるいは背景からの切り離しといった編集作業が、これまでとは比較にならないほど容易になるだろう。まるで高機能な画像編集ソフトのような操作感が、標準のペイントで実現するのだ。
「メモ帳」までもがAIアシスタントに!テキスト作業の常識が変わる
そして、最も意外性のある進化を遂げたのが、あのシンプルな「メモ帳」かもしれない。長年、プレーンテキストエディタとしての地位を不動のものとしてきたメモ帳に、なんとAIによるテキスト生成機能「Write機能」が搭載されるのだ。

この機能を利用するには、Microsoftアカウントでのサインインが必要で、さらにMicrosoft 365 Personal/Family/Enterpriseのサブスクリプション、またはCopilot Proのサブスクリプション(AIクレジットを消費)が求められる。
ユーザーは、メモ帳上でテキストを一部選択するか、カーソルを置いた状態で右クリックメニューから「Write」を選択(またはCtrl + Qショートカット)、あるいはCopilotメニューから起動する。表示されたダイアログに「この文章を要約して」「メールの下書きを作って」「アイデアを3つ提案して」といった指示(プロンプト)を入力すると、AIがそれに応じたテキストを生成し、直接キャンバスに挿入してくれる。生成された内容は、「Keep text」で採用するか、「Discard」で破棄するかを選択でき、さらなるプロンプトで内容を洗練させていくことも可能だ。
もちろん、このAI機能は設定でオフにすることもできるため、従来のシンプルなメモ帳を使い続けたいユーザーにも配慮されている。しかし、簡単な下書き作成、文章の言い換え、アイデア出しといった作業をAIがサポートしてくれるようになれば、メモ帳の使い方は大きく変わるだろう。まさに「メモ帳革命」と言っても過言ではないかもしれない。
新機能の利用条件と提供状況:誰がいつから使えるのか?
これらの魅力的な新機能だが、現時点では全てのWindows 11ユーザーがすぐに利用できるわけではない。改めて利用条件と提供状況を整理しておこう。
Copilot+ PCが鍵となるAI機能
特に高度なAI処理を必要とする以下の機能は、「Copilot+ PC」でのみ利用可能となる。
- Snipping Tool: パーフェクトスクリーンショット
- ペイント: ステッカージェネレーター、オブジェクト選択
Copilot+ PCは、NPUを搭載しローカルAI処理能力を強化した新しいWindows PCのカテゴリであり、これらの機能はその能力を前提として設計されている。これは、今後のPC選びにおいて、NPUの有無が一つの重要な判断基準になる可能性を示唆している。
Microsoftアカウントとサブスクリプションの必要性
一部の機能では、Microsoftアカウントでのサインインや、特定のサブスクリプション契約が必要となる。
- ペイント: ステッカージェネレーター(Microsoftアカウント必須)
- メモ帳: Write機能(Microsoftアカウント必須、かつMicrosoft 365 Personal/Family/EnterpriseまたはCopilot Proサブスクリプションが必要)
これらの条件は、Microsoftが提供するAIサービスとの連携や、その運用コストを考慮したものと考えられる。
Windows Insider Programでの先行提供
本稿執筆時点(2025年5月23日)において、これらの新機能は、Windows Insider ProgramのDevチャネルおよびCanaryチャネルに参加しているユーザー向けに、各アプリの最新バージョン(ペイント バージョン11.2504.451.0、Snipping Tool バージョン11.2504.38.0、メモ帳 バージョン11.2504.46.0)として順次展開が開始されている。一般ユーザー向けの提供時期については、今後のMicrosoftからの正式発表を待つ必要があるが、Insider Programでのフィードバックを経て、数週間から数ヶ月以内に安定版として提供されることが期待される。
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