TrendForceは2026年8月3日、世界のAIサーバー出荷台数が前年比で約31%増えるとの予測を公表した。従来予測の28%増から、およそ3ポイントの上方修正である。GoogleやAmazonなど大手クラウドサービス事業者(CSP)9社の設備投資は8,867億ドルを超え、NVIDIAのラックスケール製品とクラウド各社の独自チップが同時に増えると見込む。ただし設備投資の伸びは約90%に達し、出荷台数の伸びを大きく上回る。生成AIの投資競争はラックを動かす電力や冷却、ネットワークへ広がり、サーバーの台数だけでは投資の規模も供給網への波及も測れなくなった。
8,867億ドル超を支える北米5社の投資計画
北米5社はGoogle、Amazon、Metaの3社にMicrosoftとOracleを加えた顔ぶれだ。中国勢はByteDanceとTencent、Alibaba、Baiduの4社である。2026年の合計設備投資は8,867億ドル超に達し、このうち北米のハイパースケーラー5社が約90%を占めるという。金額は実績ではなくTrendForceの予測だが、各社が示した計画にも急増の輪郭は表れている。
Alphabetは2026年の設備投資を1,750億〜1,850億ドルと見込む。2025年実績は914億ドルだった。同社によれば、2025年は投資の約60%がサーバーなどの機器、約40%がデータセンターとネットワーク設備に向かい、2026年もほぼ同じ構成になる。機械学習向け計算資源の半分強はGoogle Cloudへ振り向ける予定だ。
Amazonは全社で約2,000億ドル、Microsoftは暦年で約1,900億ドルの設備投資を計画する。Metaもファイナンスリース元本の支払いを含め、1,250億〜1,450億ドルを見込む。この4社だけで単純合計は6,900億〜7,200億ドルになる。ただし、Amazonの数字にはAI以外の事業も入り、Metaはリース支払いを含むなど定義がそろわない。TrendForceの推計と直接照合する数字ではなく、投資の大きさを測る目安である。
設備投資が約90%増えても、AIサーバーの出荷台数予測は約31%増にとどまる。この差には、建物や受電設備のように長く使う資産と、GPUやCPUなど更新周期の短い機器が同じ設備投資に含まれることが関係する。Alphabetの60対40という内訳は、AI投資のかなりの部分がサーバーの台数として数えられないことを示す。
NVIDIA製ラックと独自ASICは同時に増える
出荷予測を直接押し上げたのは、ハイパースケーラーと中堅データセンター事業者によるNVIDIAのGB/VRラックスケール製品への需要だ。TrendForceは、AWSが2026年にGB300を主力のGPUサーバー基盤として配備するとみる。MetaもNVIDIAのGB/VRとAMD Heliosのラックスケールシステムを中心に据える見通しである。
ラックスケール製品では、アクセラレーターだけを納めても動かない。NVIDIAが2026年3月に量産入りを発表したVera Rubinは、Rubin GPUとVera CPUに加え、NVLink 6スイッチ、ネットワーク、ストレージ処理用の部品を一つの基盤として組み合わせる。高密度な計算機を継続運転するには液冷も必要になる。サーバー需要の増加が、高速接続やメモリ、冷却設備の発注へ連鎖するのはこのためだ。
一方、GoogleとAWSは2026年下半期に次世代の独自ASICを増産する見込みだ。Googleはすでに第8世代TPUとして、学習向けのTPU 8tと推論向けのTPU 8iを発表している。TPU 8tは9,600基と2ペタバイトの共有HBMを一つのSuperpodにまとめる設計であり、チップ単体より接続とメモリを含むシステム全体で性能を引き出す。
独自ASICの増加は、2026年中にNVIDIA製品を置き換えるという意味ではない。TrendForceの予測では、AWSはGB300を配備しながら自社ASICも増やし、GoogleもTPUとNVIDIA GPUを併用する。CSPは用途ごとにGPUと独自チップを振り分け、推論コストを下げながら不足する計算資源を補おうとしている。
中国4社は国内AI基盤の整備を急ぐ
中国4社はByteDanceとTencent、Alibaba、Baiduである。設備投資は2026年に合計で80%超増えるとTrendForceは予測する。最大の伸びを見込むByteDanceは、大規模AIデータセンター、自社ASIC、GPUクラスターへ投資を集中させる。4社は大規模言語モデル(LLM)サービスを支えるため、中国製AIソリューションの導入も加速している。
北米勢との違いは、計算需要を満たすと同時に、国内で調達できるハードウェアとソフトウェアの組み合わせを広げなければならない点にある。もっとも、TrendForceの公開資料は中国製アクセラレーターのメーカー別出荷数や構成比を示していない。80%超という設備投資の増加が、そのまま同じ比率のAIサーバー出荷につながるとは限らない。
それでも中国4社の増額は、AIインフラ投資が北米に限られないことを示している。TrendForceは投資対象として、AIサーバーと液冷設備に加え、高速接続や電力インフラ、メモリを挙げる。投資の波はアクセラレーターの外側まで広がっている。
2027年約1.3兆ドル予測を決める供給条件
TrendForceは9社の設備投資が2027年に約1.3兆ドルへ達し、前年比でさらに約50%増えると予測する。比較対象が大きくなるため成長率は鈍るものの、投資額は過去最高を更新する想定だ。同社は推論処理やAIエージェント、独自ASICの開発が続くとの見通しを示す。投資先には先端パッケージと高速接続が加わり、電力、液冷、メモリも対象に入る。
資金だけで計算能力が増えるわけではない。Alphabetは2026年を通じて供給制約が残るとの見通しを示し、Microsoftも少なくとも同年末まで制約が続くと説明している。Microsoftの1,900億ドルという計画には、部品価格上昇による約250億ドルも含まれる。投資額は設置量の増加と価格上昇の両方で膨らむ。
約31%という出荷予測を確かめる材料は、GB300やVera Rubin系ラックの調達が進み、GoogleとAWSが2026年下半期に独自ASICを予定どおり増産できるかどうかだ。その先の約1.3兆ドル市場へ進むには、受電容量と冷却設備が高密度ラックの増加に追いつかなければならない。設備投資額よりも、実際に稼働を始めたサーバーとデータセンター容量の増加が、次の予測改定を左右する。



