Amazonが、汎用人工知能(AGI)と呼ぶ組織の一部で人員を削減した。大規模AIモデルの開発を重要課題に据える方針は維持しながら、顧客にとって優先度が高い取り組みへ人員を寄せるという。削減人数も対象チームも公表しておらず、AI事業からの撤退を示す材料はない。むしろ見えてくるのは、計算基盤には巨額を投じつつ、研究開発のテーマと人員を細かく選別するAmazonの姿である。
人数を伏せたまま、AGI組織の一部を削減
人員削減はReutersが2026年7月22日に報じ、翌23日にThe RegisterもAmazonへ確認した。同社はThe Registerに対し、数年にわたって大規模AIモデルを開発しており、現在も最も重要な取り組みの一つだと説明した。そのうえで、顧客にとって重要な計画へ重点を絞るため、「AGI組織の一部」で職務を削減したと認めている。
ただし、Amazonは何人が対象になったのか、どの業務を縮小したのかを明らかにしていない。Reutersは、AGI Data Services担当Vice PresidentのAdeeb Shanaaと、AGI Information担当Vice PresidentのVishal Sharmaの配下にいた従業員が、オンライン上で削減対象になったと報告したと伝えた。これは従業員側から見える範囲であり、Amazonがチーム単位の内訳を確認したものではない。
| 確認項目 | 7月23日時点で分かっていること |
|---|---|
| 削減の実施 | AmazonがAGI組織の一部で認めた |
| 削減人数 | 非開示 |
| 対象業務 | Amazonは非開示。Reutersが従業員投稿から管理職2人の配下への影響を報道 |
| 製品計画への影響 | 非開示 |
この切り分けから、確定しているのは削減の実施と会社側の説明までだ。対象チームや製品への影響を広げて解釈するには、追加の開示が必要になる。
人数が分からない以上、今回の削減をAGI戦略全体の縮小とみなすことはできない。一方で、モデル開発の中核組織も人員調整の対象外ではなくなった。Amazonが説明した「顧客にとって重要な取り組み」への集中は、基礎研究、モデル改良、製品化のどこへ人を残すかを選ぶ作業が進んでいることを意味する。
Amazonの「AGI」は、同社が社内チームに使ってきた名称でもある。2025年12月の公式発表は「AGIと呼んできたチーム」と記しており、汎用人工知能を実現したとの発表ではない。今回の削減も、その組織名が指すモデル開発部門の人事として読む必要がある。
Nova、独自半導体、量子計算を束ねた再編
今回の削減に先立つ2025年12月、AmazonはAI開発の指揮系統を大きく組み替えた。Andy Jassy CEOは、Novaを含む大規模AIモデルとAGIチーム、GravitonやTrainiumなどの独自半導体、量子コンピューティングをPeter DeSantisの下に集約した。DeSantisはCEO直属となり、モデルと計算基盤を同じ経営責任の下で動かす体制ができた。
同時に、Pieter AbbeelがAGIのフロンティアモデル研究チームを率いることも発表された。Rohit Prasadは2025年末に退社した。今回の人員削減は、モデル、半導体、長期研究を束ねる新体制の発足後に起きた。ただし削減対象が非開示のため、統合した領域のどこから人員を減らしたかは分からない。
Amazonは、モデルの規模と能力が高まるほど多額の計算資源が必要になり、独自半導体の性能とコストが競争力を左右すると説明している。モデル研究で将来必要になる計算能力を半導体のロードマップへ早く反映し、半導体側の進歩をモデル設計へ戻す狙いだ。半導体の開発には年単位の時間がかかるため、モデル側が必要とする機能を早期に共有できなければ、利用できる計算資源と研究テーマがずれる。
この連携を優先するなら、人員を一律に増やすより、モデルと計算基盤を一体で改善できる計画へ集中させる経営判断が生じる。ただしAmazonは、今回どの計画を優先し、どの計画から人員を減らしたかを説明していない。組織再編の狙いは確認できても、個別の削減先までは結びつけられない。
2000億ドルの設備投資と3万件の役割削減
Amazonは2026年に全社で約2000億ドルの設備投資を計画している。対象にはAIと半導体のほか、ロボティクスや低軌道衛星も含まれるため、全額をAGIへの投資と捉えることはできない。それでも、同社がAI向け計算基盤を最優先の投資先に置いていることは明確だ。株主向け書簡では、2026年に予定するAWSの設備投資の相当部分について、すでに顧客の利用契約があり、収益化の多くは2027年から2028年になると説明している。
実際の支出も増えている。米証券取引委員会への提出書類によると、2026年第1四半期の現金ベースの設備投資は432億ドルで、前年同期の243億ドルを上回った。主な投資先は、AWSの成長を支える技術インフラと物流網の追加能力である。ここでもAI専用の金額は切り出されていないが、サーバーやネットワークを先に確保する局面が続いている。
人員面では逆方向の動きが続く。Amazonは2025年10月に約1万4000件、2026年1月に約1万6000件の役割を削減すると発表した。合計は約3万件に達する。7月のAGI部門の削減人数は、この数字とは別に公表されていない。
設備投資と人件費は、どちらも支出であっても役割が異なる。データセンターや半導体は複数年にわたって使う資産であり、今回削った給与をそのまま設備へ振り替えたと結論づける根拠はない。Amazonは将来の計算需要を見越して資本を固定する一方、人員配置は短い周期で見直している。
AIが人を減らしたのか
Andy Jassyは2025年の従業員向けメッセージで、生成AIとエージェントの導入により、現在の一部業務では必要な人員が減り、別の業務では増えると述べた。さらに、AIによる効率向上で、今後数年は全社のコーポレート人員が減るとの見通しも示している。Amazon自身が、AI投資と人員構成の変化を長期的には結びつけている。
社内でAIを使って少人数化した例もある。2025年の株主向け書簡によれば、Amazon Bedrockの推論エンジン刷新では、通常なら40人で約1年かかると見積もられる作業を、6人のエンジニアがAIコーディングサービスのKiroを使い、76日で完了したという。これはAmazonが選んだ成功例であり、AGI部門の削減理由を証明するものではない。
今回の説明でAmazonが挙げた理由は、AIによる代替ではなく顧客向け計画への集中である。Peter DeSantisも2026年6月、AIが真に大きな変化をもたらすには能力をなお数桁分改善する必要があり、予見できる将来にわたって複雑な技術革新の中心には人間が残ると語った。人員削減と自動化を直結させれば、会社が示していない因果を足すことになる。
Amazonは7月30日に2026年第2四半期決算を発表する。そこで確認できるのは、2000億ドルの設備投資計画とAI需要の進み具合だ。AGI組織の判断を測るには、削減人数と対象業務に加え、Novaやフロンティアモデルの開発日程が変わるかという具体的な情報が要る。



