AMDのLisa Su氏は10月12日、米サンノゼで開かれたOCP Global Summitの基調講演で、第6世代EPYC「Verano」の実物を披露した。2027年に提供予定のVeranoは、EPYCとして初めてLPDDRメモリインターフェイスを備える。AMDが先に示した計画では、省電力なLPDDR5Xを交換可能なSOCAMM2モジュールで使い、将来のInstinct GPUを支えるホストCPUとなる。モバイル機器で育ったメモリをサーバーへ持ち込むには、電力効率に加え、部品交換と障害への対処を両立させる必要がある。
実物公開で進んだ2027年への計画
AMDは今回のOCP発表で、Su氏が掲げたチップをVeranoと明記し、2027年の提供予定を改めて示している。4月6日付のメモリ技術解説で表明したLPDDR5X SOCAMM2の採用計画が、実物を公開する段階に進んだ形だ。発売や完成サーバーの出荷を発表したものではなく、今回の確かな前進は、次世代CPUを壇上で見せたことにある。
コア数については留保が残る。Wccftechは最大192コアと報じたものの、単一チップの値か、96コアのCPUを2基使う構成かは不明としている。AMDのOCP発表本文と写真説明には、その内訳を確定できる仕様が掲載されていない。したがって、192コアを1ソケット当たりの確定値として既存製品と比較する段階ではないだろう。
Veranoの役割を理解するには、GPUの隣でCPUが何を処理するかを見るとよい。AMDはOCPで、エージェント型AIが業務アプリケーションを呼び出し、データベースへ問い合わせ、コードを実行することを挙げた。モデルに応答を生成させる前後にも計算とデータ移動が生じるため、GPUの性能だけを高めても、周辺の処理を担うCPUと主記憶には別の要求がかかる。
AMDがVeranoで狙うのは、そのCPU側のメモリまで含めた電力当たりの性能である。サーバーに使える電力には上限があり、メモリの消費電力が下がれば、同じ電力枠で構成を組む余地が広がる。ただし、どれだけ余裕が生まれるかはメモリの搭載量と負荷に左右される。
LPDDR5Xを交換できるメモリにする
LPDDR5Xは低い電圧で動作しながら、高い転送速度を得るためのメモリ技術だ。一方のSOCAMM2は、そのメモリをサーバーへ取り付けるモジュールの形態を指す。省電力という性質と、どのように実装して交換するかという仕組みを組み合わせている。
従来のモバイル機器向けLPDDRは、基板へ直接はんだ付けする使い方が中心だった。薄型化には適していても、故障したメモリだけを取り外したり、後から容量を変えたりする運用には制約がある。長期間にわたり部品を交換して使うサーバーには、別の実装が求められるわけだ。
AMDのメモリ技術解説は、SOCAMM2について次のように説明している。
SOCAMM2モジュールによって、LPDDR5Xを交換・保守可能なモジュールとして導入できる。(AMDの説明を訳出)
SOCAMM2は基板に対して水平に配置する。この形状は、サーバー内で占める空間を小さくし、空気の流れを確保したり、液冷のコールドプレートを設計したりする際にも役立つとAMDは説明する。電力だけでなく、冷却と部品配置にも関わる変更なのだ。
メモリメーカー側の準備も進んでいる。Micronは3月3日、256GB SOCAMM2の顧客向けサンプル出荷開始を発表し、従来の192GB品から容量を増やした。これは大容量の低消費電力メモリがモジュールとして供給されつつある証拠となる。ただし、MicronのサンプルがそのままVeranoの認定メモリになるか、Veranoがどこまで搭載できるかは別の製品情報を待つ必要がある。
省電力・交換・RASを分けて見る
AMDはLPDDR5X SOCAMM2の利点を説明する一方で、RASには改善の余地があるとも指摘している。RASとは、信頼性・可用性・保守性をまとめた呼び方で、メモリの誤りや故障が起きたときに、サーバーの稼働をどう守るかに関わる。モジュールを交換できるだけで、これらの機能がすべてそろうわけではない。
LPDDR5Xの省電力性、SOCAMM2の交換可能な構造、サーバーのRASは、別々に確認すべき三つの条件である。
| 確認する層 | 公開説明で確認できること | 導入時に確かめる条件 |
|---|---|---|
| DRAMの電気特性 | AMDはLPDDR5Xの低電圧動作と電力効率を説明 | 同じ容量・処理負荷で、サーバー全体の電力がどう変わるか |
| モジュールの構造 | SOCAMM2は取り外して交換でき、水平に実装する | 実際の筐体での交換手順と冷却設計 |
| 障害への対処機能 | AMDは成熟したRDIMMとのRAS機能の差を指摘 | 最終製品が備える機能と、ソフトウェア側に必要な耐障害性 |
この分類は、AMDの2026年4月6日付解説を電気特性、実装形態、障害対処の三層に分け、Micronの3月3日付発表の脚注で電力比較の対象を確認したものだ。Verano搭載機の性能試験を示す表ではなく、各メーカーの説明を採用判断へ結び付けるための区分となる。
たとえばMicronは、SOCAMM2の消費電力をDDR5 RDIMMの3分の1と説明している。脚注で指定している比較対象はメモリモジュール同士であり、CPUやGPUも含むサーバー全体ではない。メモリの電力が下がっても、他の部品が使う電力まで同じ比率で減るとは限らず、Verano搭載機の削減率へそのまま置き換えることはできない。
RASの差も、用途の選択に直結する。AMDは4月の解説で、RDIMMが積み重ねてきた誤り訂正や障害への対処に対し、LPDDR5X側ではチップの追加、メモリコントローラー、ソフトウェアによる機能強化が進んでいると説明した。そのうえで、当初はソフトウェアに高い耐障害性があり、RDIMMのハードウェア機能をすべて必要としない環境などに適用先が限られる可能性を示している。
これはLPDDR5Xに誤り訂正機能が一切ないという意味ではない。確認すべきなのは、どの誤りを、どの段階で検出・訂正できるかだ。しかもAMDの説明は4月時点の技術評価であり、2027年のVerano搭載サーバーが備える最終的なRAS機能表とは区別する必要がある。
コア数の次に問われる実装条件
第6世代EPYCでは、LPDDR5X系と並行してDDR5 RDIMMやMRDIMMも使われる計画だ。AMDは、成熟したRAS機能や供給基盤を持つDDR系メモリが、汎用計算で引き続き使われると見ている。Veranoの登場は、すべてのサーバーを同じメモリへ切り替える動きというより、消費電力と運用条件に応じて設計を選べるようにする動きと読める。
容量と帯域も、それぞれ違う問いに答える。容量は同時に保持できるデータ量、帯域は単位時間に運べるデータ量であり、大容量のモジュールを搭載しただけで処理が速くなるとは限らない。CPUへデータを供給する速さと、実際のアプリケーションが必要とする容量を合わせて見る必要がある。ここで変わるのはCPU側の主記憶であって、GPUが使うメモリ全体を置き換える話でもない。
2027年の製品評価では、コア数やメモリ容量の上限とともに、同じ処理量をこなすときのシステム電力が判断材料になる。運用側では、ハードウェアの障害対処とソフトウェアの復旧能力が、用途に求められる稼働条件を満たすかも確かめたい。必要な帯域と容量を確保し、障害時の運用まで成立させられれば、Veranoは電力上限に制約されるAIサーバーで、計算資源を増やす選択肢となる。
