Appleは人工知能(AI)機能を強化するため、将来のApple Watchモデルにカメラを搭載する計画を進めているという。BloombergのMark Gurmanの報告によれば、このカメラはApple Watchに「外界を見る」能力を付与するもので、同社が最近iPhone 16等で提供を始めたAI機能「ビジュアルインテリジェンス(Visual Intelligence)」を拡張するためのものだ。標準モデルとUltraモデルの両方でカメラ搭載を検討しており、早ければ2027年に登場する可能性があるという。
Apple Watch搭載カメラの計画詳細
Appleは標準Apple WatchとApple Watch Ultraの両モデルにカメラを搭載することを検討している。標準モデルでは、カメラはディスプレイ内に埋め込まれる予定であり、iPhoneのようなデザインになる可能性がある。これがディスプレイ下の技術を採用し、普段は視認できないような形になるのか、Dynamic Islandやノッチ(切り欠き)のようなものが必要になるのかは現時点では明らかにされていない。
一方、Apple Watch Ultraでは、デジタルクラウンとサイドボタンの横、側面にカメラが埋め込まれる計画のようだ。Ultraの大きな筐体により、このような設計が可能になると考えられている。Gurman氏によれば、Ultraユーザーは手首を向けて物体をスキャンしやすくなるという利点がある。
この構想は全く新しいものではなく、Appleは長年にわたりApple Watchへのカメラ搭載を検討してきた形跡がある。過去には、ビデオ通話やFace ID、生体モニタリングなどの機能を可能にするカメラ搭載Apple Watchの特許が複数出願されている。2020年には必要な時だけカメラが表示される設計や、デジタルクラウンやバンドストラップにカメラを隠す案も提案されていた。
Apple Watchへのカメラ搭載の目的とAI機能への展開
AppleがApple Watchにカメラを追加する主な目的は、「ビジュアルインテリジェンス(Visual Intelligence)」と呼ばれるAI機能の拡張である。ビジュアルインテリジェンスはiPhone 16で導入された機能で、カメラを通じて実世界のオブジェクトを認識し、関連情報を提供する。例えば、イベントのチラシを撮影するとカレンダーに詳細を追加したり、レストランの情報を検索したりすることが可能である。

Apple Watchにこのビジュアルインテリジェンス機能を搭載することで、ユーザーは手首を向けるだけで周囲の物体に関する情報を得られるようになる。アクティビティやマップなどのアプリケーションとの連携も期待される。また、テキストの翻訳にも活用できる可能性がある。
しかし、ビデオ会議などの機能はAppleの優先事項ではないとされており、カメラは主に情報収集のために使用されるとみられる。また、プライバシーの観点から、カメラがいつでもビデオを録画できる機能については懸念の声も上がっている。
AppleのAI戦略とウェアラブルデバイスの未来
このカメラ搭載Apple Watchの計画は、Appleの広範なAI戦略の一部である。Gurman氏によれば、AppleはVisual IntelligenceをiPhone以外のデバイスにも拡張する計画を持っており、カメラ付きAirPodsの開発も進めているという。
現在、ビジュアルインテリジェンスはOpenAIとGoogleのAIモデルに大きく依存しているが、Appleは将来的にこの機能を独自のAIモデルへ移行させたいと考えている。2027年までに独自モデルへの切り替えとともに、カメラ搭載Apple WatchとAirPodsをリリースする計画だという。
この計画の実現は、最近リーダーシップの変更があったAppleのAIチーム次第である。AIトップのJohn Giannandrea氏からMike Rockwell氏へと指揮が移り、Rockwell氏は以前Vision Proを担当していた。Rockwell氏は引き続きvisionOSにも取り組む予定で、将来的にはARグラスなど他のウェアラブルAIデバイスの開発も視野に入れているとされる。
カメラ搭載に向けた技術的な課題
カメラ搭載Apple Watchの実現には技術的な課題も存在する。小型のウェアラブルデバイスにカメラを搭載する場合、画質や性能が制限される可能性が高い。iPhoneが引き続き主要な撮影デバイスとなる中、Apple Watchのカメラはあくまで補助的な役割に留まると考えられる。
また、AppleのAI開発は必ずしも順調ではなく、「よりパーソルナルなSiri」などの機能は遅延し、2026年までリリースが延期されている。これによりAppleは集団訴訟にも直面している状況である。
カメラ搭載Apple Watchは早くても2027年の登場と予測されているが、これはAppleのAI開発チームの進捗に大きく依存する。カメラ付きAirPodsも同時期にリリースされる可能性があり、AppleのAIウェアラブル戦略の重要な一歩となることが予想される。
この開発はAppleのエコシステム全体にも影響を与え、iPhone、Apple Watch、AirPods、そして将来的なARグラスなどのデバイス間でVisual Intelligenceが連携する可能性がある。Appleがハードウェア、ソフトウェア、AIを統合したエコシステムを強化する戦略の重要な一環と位置づけられる。
Source