中国・内モンゴル自治区の白雲鄂博鉱床は、これまで考えられていたよりはるかに深いところまで希土類を含む可能性が出てきた。北京大学の地質学者Yang Liは2026年7月28日、深部の潜在資源が現在の推定を数倍上回り得るとSouth China Morning Postに語った。ただし、新しい埋蔵量が確定したわけではない。2022年の資源試算、2024年の三次元構造解析、2025年の成因研究がつながり、世界最大の鉱床を地下へ追うための地質モデルが具体化したのである。
3億3,300万トンは「採掘できる埋蔵量」ではない
白雲鄂博の数字を読むには、地下に存在し得る量と、現在の価格・技術で経済的に掘れる量を分けなければならない。2022年にActa Petrologica Sinicaへ掲載された研究は、地質調査、地球化学、物理探査から0〜1,000mのカーボナタイト岩体を三次元化した。その体積と最小密度に、過去の分析から保守的に置いた全岩希土類平均2%を掛け、酸化物換算の潜在資源を約3億3,300万トンと試算している。
これは坑内設計や選鉱試験を経た可採埋蔵量ではない。鉱体全域を同じ品位で扱う概略モデルであり、ボーリングの間にある岩石の連続性、希土類元素ごとの内訳、採掘時の希釈、実際の回収率をまだ織り込んでいない。米国地質調査所(USGS)が2026年版統計で示す中国全体の埋蔵量は4,400万トンである。一鉱床の潜在資源が中国全体の埋蔵量を上回って見えるのは、白雲鄂博の3億3,300万トンが地質学的な潜在量を数え、中国全体の4,400万トンが現時点の技術、価格、操業条件のもとで採掘可能と評価された量だからだ。
それでも、岩体の大きさを支える観測は増えている。2024年のEconomic Geology論文は、地表で南北に分かれて見えるカーボナタイトが地下で合流するY字型だと結論づけた。ボーリングと低比抵抗を捉える電磁探査が整合し、岩体は地下1,775.4mより深く続く。従来の向斜モデルが想定した最大深度の2倍を超え、2021年時点の世界の潜在的な希土類酸化物量を1.78倍超へ押し上げ得る規模だという。
Yangの今回の発言は、この深部構造をさらに下へ延長した見通しに当たる。「現在推定の数倍」は査読済みの新しい数量ではない。深い岩体を掘り当てても、品位と厚さが連続し、採掘費を吸収できて初めて埋蔵量へ近づく。
13.2億年前の岩体に、4.3億年前の流体が重なったというモデル
白雲鄂博が異例の規模へ育った理由について、2025年のScience Advances論文は二度のカーボナタイト活動を提示した。カーボナタイトは炭酸塩鉱物に富む珍しい火成岩で、希土類を濃集しやすい。世界で知られる676か所のうち、確立した鉱物埋蔵量を持つのは61か所に限られる。大きな岩体があるだけでは、白雲鄂博にはならない。
最初の活動は約13.2億年前に起きた。研究チームによると、この時期のマグマは地表付近へ噴出したため、地下でゆっくり結晶化して成分を分け、希土類に富む塩水や流体を放出する過程が進みにくかった。希土類は広く薄く分散した。一方、この古い岩体は後の圧縮とせん断で変形し、割れ目や鉱物境界を通して流体が入りやすい反応場へ変わった。
約4.3億年前、別のカーボナタイトが地下へ入り込んだ。十分に結晶分化した若いマグマから、希土類に富む塩水とアルカリ性流体が抜け出す。流体は変形済みの古い岩体を通り、岩石の成分を置き換える交代作用を起こした。その結果、バストネサイトやモナザイトなどの希土類鉱物が、鉱脈と既存の縞に沿って沈殿したという。
年代測定は複数の時計を組み合わせている。研究チームは鉱区全体で75粒のジルコンから約4.3億年前の年代を得た。鉱脈型鉱化に伴う黄鉄鉱のRe-Os年代は4億3,100万±300万年前で、モナザイトなどのTh-Pb年代も同じ時期に集中した。二つの時代の鉱物が混ざった割合を計算すると、若い活動が希土類の72%を供給した結果になり、研究チームは70%を下限とみている。
この数字には仮定がある。計算は古期と若期の粒子に含まれるトリウムの比を1対3と置くため、寄与率を鉱体から直接量ったわけではない。それでも2025年の研究は、巨大化の説明を「古い巨大マグマが一度に濃集した」から、「先にできた岩体を、約8.9億年後の流体が反応装置として使った」へ更新するモデルを示した。
新しい供給源か、古い希土類の再移動か
二段階モデルは有力だが、白雲鄂博の成因を巡る論争を終わらせてはいない。2022年のEconomic Geology論文は、地下1,776mまでの新鮮なボーリングコアを分析し、約4億年前の流体が古いドロマイト質カーボナタイトを再結晶させたと報告した。反応時には局所的に二酸化炭素の最大40%が失われ、残った岩石で既存の希土類が再移動・再濃集したと解釈している。このモデルでは、若い時代に外部から大量の希土類が加わる必要がない。
2025年の研究は、約4.3億年前のカーボナタイトそのものを特定した点で踏み込んだ。軽希土類と重希土類の分別を表すCe/Y比がこの時期に急上昇している。古い鉱石から軽希土類だけを動かしたのなら、元の岩体には相対的に重希土類が残るはずだが、その残留濃集は報告されていない。そこで研究チームは、若いマグマが新しい希土類を運び込んだと判断した。
未解決の部分も地質図に残る。鉱石を抱くH8層には局所的な堆積性炭酸塩が混じる可能性があり、縞状組織のどこまでが古い変形で、どこからが後の流体による置換なのかは確定していない。約4.3億年前のカーボナタイトが地下でどこまで広がるかも、今後のマッピングと掘削が要る。
この違いは学術上の細部ではない。新しいモデルが正しければ、探鉱会社は古いカーボナタイトの大きさに加え、後から同じ場所へ入った若い岩脈と、流体が通れるよう変形した境界を探すことになる。二度の活動が重なる場所を絞ることで、地表に高品位鉱石が見えない鉱床でも深部を狙える。
採掘シェア約60%より、分離・精製の約91%が重い
深部資源が中国の優位をすぐ強めるわけではない。USGSによると、中国の2025年の鉱山生産は酸化物換算27万トンだった。米国は5万1,000トン、豪州は2万9,000トン、ミャンマーは2万2,000トンである。鉱石の段階でも中国は最大だが、供給網の集中は後工程でさらに強まる。
国際エネルギー機関(IEA)の集計では、ネオジムとプラセオジムに加え、ジスプロシウムとテルビウムという磁石用4元素について、中国は2024年に世界の採掘量の約60%を占めた。分離・精製では約91%、永久磁石製造では94%に達する。中国以外で鉱山が立ち上がっても、元素を一つずつ分け、高純度の金属・合金を経て性能の揃った磁石にする設備がなければ、中国外の供給網は完成しない。
白雲鄂博の鉱石も均質ではない。2025年のMinerals論文では、中・重希土類(M+HREE)は混合原鉱の約0.2重量%で、全希土類に占める比率は3.15%だった。現在の鉄選鉱工程では、その96.40%が尾鉱へ移る。地質学的には数百万トン規模の中・重希土類が見込めても、微細な鉱物を十分に砕いて単体分離し、採算の合う回収工程へつなぐ必要がある。
この差は、資源量をそのまま供給力と呼べない理由をよく表す。IEAは2025年時点で、中国とミャンマー以外の新規鉱山が稼働まで平均約8年を要し、中国外で工業規模の分離・精製を担う国もマレーシア、米国、エストニアなど少数だとした。白雲鄂博の深部資源は中国の原料基盤を長期化させ得るが、目先の優位を作っているのは既に地上にある工程群である。
地質モデルを埋蔵量へ近づける条件
深部ポテンシャルの価値は、今後の掘削で四つの数字がそろうかにかかっている。1,000m以深で鉱体の厚さと品位がどこまで連続するか。希土類酸化物のうち磁石用4元素を何%含むか。採掘・選鉱後に元素ごと何%回収できるか。そして地下採掘と廃棄物処理を含む1トン当たり費用はいくらかである。さらに、鉱山計画を許認可へ通し、水・廃石・放射性副産物の環境条件を満たさなければ、数字がそろっても埋蔵量として開発できない。
需要側には時間の猶予が少ない。IEAは磁石用4元素の需要が2024年の9万1,000トンから2030年に12万3,000トン、2040年に15万トンへ伸びると見込む。再利用を含む二次供給が増えても、一次供給の必要量は同じ期間に6万4,000トンから10万7,000トンへ拡大する。深部鉱体の存在はこの需要を満たす選択肢を増やすが、埋蔵量への転換には鉱山工学、分離工程、許認可と環境対策の証明が欠かせない。
白雲鄂博の新しい地質像は、中国の希土類支配が偶然見つかった巨大な鉱石塊に依存してきたという理解を改める。古い岩体、後の変形、若い流体が同じ場所で重なり、桁違いの濃集を生んだというのが2025年研究の説明だ。地下1.8km以深のボーリングが鉱体の連続性・厚さ・品位を裏づけ、選鉱・冶金試験が回収率を証明したとき、地質学的な巨大さは初めて、将来の供給量として数えられる。
