Broadcomは2026年9月2日、2026年度第3四半期のAI半導体売上が167億ドルに達したと発表した。前年同期の3倍超、前四半期から54%増え、全社売上295億9100万ドルの56.4%を占めた。成長を担うのは、GoogleやOpenAIなど6社と共同設計するカスタムXPUと、それらをつなぐEthernet製品である。
同社は半導体の供給量を増やす一方、第三者が購入したAIラックを顧客へ貸し出す取引で、リース債務を支える契約も結んだ。ただし、9月2日に説明したOpenAIとAnthropic向けの資金支援は検討段階で、新たな契約ではない。2027年度のAI半導体売上を約1150億ドル、2028年度を2300億ドルとする長期見通しも、確定受注ではなく、顧客施設の準備状況を織り込んだ会社予想である。
167億ドルの4分の3をカスタムXPUが稼いだ
2026年度第3四半期のAI半導体売上167億ドルは全社売上295億9100万ドルの56.4%、半導体部門売上208億3900万ドルの80.1%に相当する。決算説明会で示した製品構成73%を当てると、カスタムXPUは約121億9100万ドル、AIネットワーク製品は約45億900万ドルとなる。
| 売上区分 | 2026年度Q3 | 前年同期比 | 全社売上に占める比率 |
|---|---|---|---|
| AI半導体 | 167億ドル | 221%増 | 56.4% |
| 半導体部門全体 | 208億3900万ドル | 127%増 | 70% |
| インフラソフトウェア | 87億5200万ドル | 29%増 | 30% |
| 全社 | 295億9100万ドル | 86%増 | — |
AI半導体の中でも二つの成長が重なった。カスタムXPUの出荷数量は前年同期の3.5倍超、AIネットワーク売上は2.5倍超に増えたという。ただし、出荷数量と売上の伸び率は同じではない。世代ごとの単価や製品構成が開示されていないためだ。167億ドルもカスタムチップ単独の売上ではなく、スイッチや光接続などのネットワーク製品を含む。
前四半期のAI半導体売上は108億ドルだった。Broadcomは6月に第3四半期を160億ドルと見込んでいたため、実績は7億ドル、約4.4%上振れした。連結非GAAP粗利率は前四半期から2.1ポイント下がって75%となった一方、非GAAP営業利益率は前年同期から2.4ポイント上がり67.9%へ達した。今回の開示だけでは、製品構成が両指標へ与えた影響を分離できない。
6社の顧客別ロードマップ
BroadcomがカスタムXPU顧客として数えるのは6社だが、社名と配備計画を明らかにしたのは4社である。残る2社は非公表であり、推測で埋めることはできない。
| 顧客 | 足元の状態 | 2027〜2028年の会社見通し | 契約・計画上の境界 |
|---|---|---|---|
| TPU v7「Ironwood」を量産出荷し、TPU 8iの生産出荷を開始 | 今後数年、年間数百億ドル規模のTPU供給を計画 | 将来世代TPUとネットワークの契約は最長2031年 | |
| Anthropic | 2026年にIronwood 1GWを配備 | 2027年にTPU 8iを5GW、2028年に追加10GW | 4月開示の約3.5GWから見通しは拡大したが、利用は商業的成功に依存 |
| OpenAI | 初代Jalapeñoの出荷を開始 | 2027年に1.3GW、2028年に後継機を含め5GW超 | 10GWは2029年末までの複数世代計画 |
| Meta | 推論・推薦向けMTIAを共同開発 | 2027年末までに3世代、2028年までに計3GW | 初期1GW超から複数GWへ広げる2029年までの計画 |
この表は「契約済みの売上」を並べたものではない。Googleとの長期契約は供給の土台になるが、Anthropic、OpenAI、MetaのGW値には将来見通しが含まれる。OpenAIとの10GW計画も、初代Jalapeñoが2026年中に10GW稼働するという意味ではなく、2029年末までに複数世代を展開する目標である。
BroadcomはカスタムXPUに加え、Ethernetスイッチや光接続をAIネットワーク売上として計上している。第3四半期の構成比から約45億900万ドルと試算できるが、顧客別の採用率や製品別の金額は開示していない。カスタムXPUとネットワークの両方が伸びた事実と、個別製品の採用状況は分けて見る必要がある。
売る前に、ラックと資金を用意する
BroadcomのAIラボ支援は、2026年6月8日に5年のラックリース債務を最大290億ドルまで支えるバックストップ契約へ進んだ。9月2日の決算説明会ではOpenAIとAnthropic向けの将来案件を個別に検討するとし、残価保証について新たに確定した契約は発表しなかった。
この取引では、投資家のApolloがBroadcom設計のカスタムXPUを搭載するAIラックの購入契約と、顧客へのリース契約を引き受けた。顧客が5年間のリース料を支払えなければBroadcomが支える。最大290億ドルは現時点の損失でも支出でもない。ラックが配備されるにつれてエクスポージャーが増え、顧客が支払えば減る。債務不履行時には、Broadcomがリースを引き受けるかラックを売却する手段もある。
SEC提出書類はこのリース顧客を明かしていないため、OpenAIやAnthropicと同一視はできない。決算説明会で経営陣が新たに示したのは、両社の将来案件でも投資家を介した資金支援を検討する方針である。残価保証まで付ければ、ラックを将来売却したときの価値下落もBroadcom側のリスクになり得るが、契約額や条件はまだ決まっていない。
Broadcomにとっては、半導体販売とは別の信用リスクが加わる。10-Qは、顧客の支払い能力やカスタム設計品の再販可能性によって損失が生じ得ると明記した。最大290億ドルは損失額ではないものの、ラック配備に応じて積み上がる条件付き債務であり、今後は契約額と実際のエクスポージャーを分けて確認する必要がある。
1150億ドルを制約する用地と供給網
Broadcomは第4四半期のAI半導体売上を217億ドル、2026年度通期を580億ドルと見込む。通期予想は6月時点の560億ドルから20億ドル引き上げられた。さらに2027年度は約1150億ドル、2028年度は2300億ドルへ倍増するとの見通しを示した。
この長期見通しは顧客の希望するGWを機械的に売上へ換えた数字ではない。6社が望む計算能力は2027〜2028年度で計30GW規模になるものの、Hock Tan CEOは全量が2年間に稼働するとは想定していないと説明した。Broadcomは用地、電力、建屋の準備を顧客ごとに確認し、実際に配備できる量を抑えて売上を見積もったという。
チップ側にも複数のボトルネックがある。先端ロジックに加え、HBMとシステムメモリー、基板、光通信用レーザーが揃わなければラックは完成しない。Broadcomはシンガポールで基板の生産能力を構築し、米国とシンガポールのインジウムリン光部品工場を前年の3倍超へ増強している。自社が「供給を確保した」と述べても、顧客側の受電設備や資金調達、すべての部材の調達まで保証する表現ではない。
経営陣はBroadcom製品の売上を1GW当たり200億〜300億ドルとみる。ただし、この会社目安はデータセンターの総工費でもAIラボの売上でもなく、製品構成ごとの算定方法も開示されていない。2027年度1150億ドルを評価するには、発注希望より、施設が完成して実際に稼働したGWを追う必要がある。
NVIDIAとの競争はチップ単体で決まらない
BroadcomのカスタムXPUは、Google、Anthropic、OpenAI、Metaとの共同設計を前提とする。しかし、今回の決算はCUDAを含むNVIDIAのソフトウェア基盤が置き換わったことも、公開市場全体でGPU需要が減ったことも示していない。
競争の範囲はカスタムXPUからネットワーク、ラック取引へ広がった。ただし、すべての顧客が同じ製品や資金支援を採用したとは開示されていない。2026年度上期には上位5最終顧客が全社売上の約45%を占めており、少数社の延期や信用悪化が業績へ届きやすい構造でもある。
12月9日に予定する通期決算では、まず第4四半期のAI半導体売上217億ドルと全社売上348億ドルを達成したかを確認したい。2027年度1150億ドルの確度を測る材料は、完成したデータセンターと実際に稼働したGWである。資金支援については別に、OpenAIとAnthropic向けの契約相手、金額、保証条件が確定するかを追う必要がある。



