中国の半導体製造装置メーカーに、売上拡大の波が来ている。JW Insightsは2026年8月19日、主要各社の売上が2桁で伸び、利益は300%から400%を超えて増えた企業もあると報じた。海外製装置の納期が一部で最長24カ月に延び、中国メーカーには供給の空白を埋める機会が生まれたという。だが、取引所開示へ戻ると、「400%」は業界の収益力を測る物差しにならない。需要の強さと利益の質を分けて読む必要がある。

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「400%増」を生んだ赤字反転と評価益

400%超という数字に最も近いのが、薄膜形成装置を手がける拓荊科技の2026年第1四半期である。同社の売上高は前年同期比56.97%増の11億1,243万元、親会社株主に帰属する純利益は5億7,060万元だった。前年同期は1億4,695万元の赤字である。会社は純利益の増減率を「不適用」と記載しており、赤字を分母にした通常の成長率を示していない。

利益の内訳を見ると、数字の意味はさらに変わる。拓荊科技の非経常損益は4億6,849万元で、帰属純利益の約82%を占めた。このうち4億7,261万元は、金融資産の公正価値変動と処分で生じた損益である。非経常項目を除いた純利益は1億211万元で、前年の赤字から黒字へ転じた。本業は改善した。ただし、その改善を「400%増」と表すことはできない。

同じ切り分けをAMEC(中微公司)と盛美上海へ広げると、企業ごとの差も見えてくる。

企業・対象期間 売上高 帰属純利益 非経常項目控除後の純利益 読みどころ
拓荊科技・2026年1〜3月 11億1,243万元、56.97% 5億7,060万元、赤字から黒字 1億211万元、赤字から黒字 非経常損益が帰属純利益の約82%
AMEC・2026年上半期予想 66億9,100万元、約34.89% 27億29億元、282.48〜310.81% 10億12億元、85.61〜122.73% 株式投資の評価・投資収益が19億8,200万
盛美上海・2026年上半期 37億1,800万元、13.87% 9億8,900万元、42.14% 5億7,100万元、15.31% 帰属純利益と本業利益が逆方向

表から確かに言えるのは、3社とも売上が2桁で伸びたことだ。AMECは非経常項目控除後でも大幅な増益を見込み、拓荊科技は黒字へ転じた。一方、盛美上海では控除後利益が減っている。各社の帰属純利益を一つの成長率へ束ねると、装置販売そのものがどれだけ利益を生んだのかが消えてしまう。

1,659億ドルへ膨らむ装置需要

利益急増の見出しを外しても、需要増という中心事実は残る。SEMIは2026年の世界半導体製造装置売上を前年比23.2%増の1,659億ドルと予測した。前工程装置などを含むWFEは23.1%増の1,439億ドル、テスト装置は31.0%増の153億ドル、組立・パッケージ装置は9.6%増の67億ドルに達する見通しである。

先端ロジックに加え、メモリー投資も伸びを生む。高帯域幅メモリー(HBM)に使うDRAM装置は39.0%増の388億ドル、NAND装置も30.7%増の139億ドルが見込まれている。AIアクセラレーターは先端プロセスで演算ダイを作り、HBMと組み合わせ、複雑な封止と厳しい試験を経て完成する。工程数と検査強度が増すため、成膜から洗浄までの前工程に加え、計測やテストにも発注が広がっている。

直近の2025年実績では、中国向けが最大の装置市場だった。売上は493億ドルで、前年から0.5%減ったものの、世界1,351億ドルの約36.5%を占めた。台湾と韓国を加えた3地域で世界市場の79%に達する。市場規模の大きさは、中国メーカーの装置を顧客工場で検証し、工程条件を詰める機会の母数にもなる。

ただし、493億ドルは中国で販売された装置の総額であり、中国メーカーの売上でも国産化率でもない。巨大な市場にはASMLやApplied Materials、Lam Researchの装置が含まれる。Tokyo ElectronとKLAも供給者だ。中国勢が伸びた売上と、置き換え可能な工程の広さは別に測らなければならない。

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「24カ月」は全装置共通の納期ではない

JW Insightsが業界関係者の話として伝えた最長24カ月は、一部の装置に関する上限値である。ここで半導体製造装置で想起されるのはASMLだが、ASMLは全機種の公式納期を24カ月と発表していない。装置の種類と構成に加え、顧客や輸出許可によって出荷条件は変わるため、「海外製装置はすべて2年待ち」とは言えない。

それでも、供給網が年単位で動いている証拠はある。ASMLは2026年第2四半期決算で、同年上半期の受注が非常に強く、顧客の能力増強計画から長期需要を見通しやすくなったと説明した。同社は2026年に約65台の生産能力を持つLow-NA EUVと、約130台のDUV液浸露光装置を2027年にそれぞれ30%増やす。2028年にも、さらに30%増やせるか検討中だ。

Applied Materialsの販売条件も長い計画期間を前提にする。2025年3月版は、顧客に2年分の装置発注予測を四半期ごとに更新するよう求め、正式な発注書は予定出荷日の最低180日前までに提出させる。これは実納期が一律2年という意味ではない。少なくともApplied Materialsとの取引では、部品と生産枠を確保し、顧客仕様を詰めるために半年から2年の計画期間が前提になる。

この時間差が中国勢の商機になる。ウェハー工場が海外製装置を待てず、国内装置が必要な時期までに納入できれば、量産ラインで評価を始められるためだ。対象は成膜から洗浄、CMPまでの前工程と、計測・検査など中国企業が製品を持つ工程である。露光装置の不足を、別工程の装置で直接代替することはできない。

短納期の先にある量産認証と資金負担

拓荊科技の売上が56.97%増えた理由を、同社は先端プロセス向け装置が顧客の検証を通り、量産規模が広がったためと説明している。装置を工場へ運ぶ速さは入口であり、売上を継続させるのは量産認証だ。ウェハー工場は膜厚や均一性、欠陥率、歩留まりを工程ごとに確かめる。稼働率と保守体制も満たして初めて、同じ装置の再注文や別工程への採用が進む。

量産までの時間は、装置メーカーの貸借対照表へ積み上がる。拓荊科技の2026年3月末在庫は82億1,353万元、顧客から受け取った前受金に当たる契約負債は48億7,732万元だった。装置を製造して出荷しても、設置と調整を終え、検証から検収へ進むまで売上を認識できない案件がある。受注が強い局面ほど、部品と仕掛品を先に抱える資金が必要になる。

同社の第1四半期の営業キャッシュフローは5億1,985万元のマイナスだった。前年同期は1,093万元のプラスである。会社は販売代金の回収が一時的に減る一方、事業拡大に伴って調達費と人件費が増えたと説明した。純利益が黒字でも、量産と回収へ進む途中では現金が出ていく。売上成長の持続性は、在庫を納入へ変え、契約負債を検収済み売上へ移し、代金を回収できるかにかかる。

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規制が開く市場と、同時に狭める調達路

米商務省産業安全保障局(BIS)は2024年12月、半導体製造装置24種類と開発・製造ソフト3種類、高帯域幅メモリーを新たに規制した。中国の装置メーカーやウェハー工場、投資会社を含む140件もEntity Listへ加えた。海外装置の調達に不確実性が増せば、中国のウェハー工場は国内製品の検証を急ぐ。短い納期は、その検証枠を取る助けになる。

一方で、中国の装置メーカーもグローバルな部品網を使う。真空部品や電源、各種センサーに加え、制御ソフトに米国由来の技術が入れば、規制は開発と増産の条件を厳しくし得る。輸入品を置き換える需要と、自社の部品調達リスクが同時に生じるため、規制強化をそのまま利益増へ結び付けることはできない。

2026年後半の決算で判定すべき数字は、派手な純利益増加率より具体的だ。売上と非経常項目控除後の利益が同じ方向へ伸びるか。顧客認証を終えた装置が再注文へ進むか。在庫と契約負債が売上へ変わり、営業キャッシュフローが改善するか。最長24カ月という供給の空白が中国メーカーの恒久的なシェアになるかを見極めるうえで、この三つは主要な判定材料になる。部品調達と保守体制、規制の変化も併せて追う必要がある。