中国のプリント基板(PCB)投資が、AIサーバーと光通信を軸に二つの方向へ動き出した。広東依頓電子科技股份有限公司(依頓電子、Ellington Electronics)は、中山市で高多層・高密度基板の新工場を計画する。一方、深圳市兆馳股份有限公司(兆馳、MTC)は南昌市の生産拠点にPCB工程を組み込み、Mini/Micro LEDと光モジュールの部材をグループ内でつなごうとしている。二つの案件は、同じ物差しで合計できない。依頓電子が開示した工場の総投資額だけで29.787793億元に達し、両社は異なる事業モデルで高性能PCBへ踏み込んでいる。

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29.79億元、資金調達上限20億元との違い

依頓電子は2026年8月5日の取締役会で、「高端印制電路板智能制造項目」への投資を承認した。計画額は29億7,877万9,300元で、既存の中山園区に工場を建てる。12月1日の着工を予定し、建設期間は21カ月。8月の開示時点では初期準備段階にあり、工事は始まっていない。

同時に打ち出したA株の私募は、最大20億元を調達する枠組みだ。このうち18.5億元を工場に、1.5億元を運転資金に充てる。工場費と募集資金の差額11億2,877万9,300元は、自己資金などで賄う予定である。20億元は工場の総投資額ではなく、運転資金を含む調達上限だ。

資金の使い道を見ると、依頓電子が何を変えようとしているかが分かる。ハードウェア購入費が17億9,478万5,200元で最も大きく、工場建設に5億5,064万2,500元、予備費に3億8,220万9,400元を見込む。既存設備の小幅な更新ではなく、専用工場と工程設備を一体で立ち上げる計画だ。新規用地は取得せず、中山の既存園区内で建設する。

年40万平方メートルが狙うAIサーバーの配線

新工場の設計能力は年40万平方メートルで、高多層板(High Layer Count、HLC)が34万平方メートル、高階の高密度相互接続基板(High Density Interconnect、HDI)が6万平方メートルを占める。依頓電子は稼働時のピークを年43.5万平方メートルと見込むが、これは受注と稼働率がそろった場合の想定値である。主な用途はサーバー、高速交換機、ルーターだ。AIアクセラレータカードやコンピュートトレーのマザーボードに加え、光モジュール向け製品を載せる余地も残す。

AIサーバーでは、演算装置とメモリ、ネットワークを結ぶ信号が高速になるほど、基板内の損失や配線間の干渉が動作を左右する。HLCは信号層や電源層を増やし、HDIはレーザーで開けた微細な穴と細い配線を使って接続密度を上げる。依頓電子は多層積層、微細配線、機械・レーザー穴あけを強化し、湿式工程から検査・品質追跡までを新工場に組み込む。面積の増加よりも、低損失材料を安定して加工し、狙ったインピーダンスと信頼性を量産で保てるかが製品価値を決める。

会社は既に自動車電子や通信機器向けPCBを手掛け、背面穴あけや厚銅めっき、HDIなどの技術を蓄積してきた。ただし、開示資料は現有技術と目標製品の間に追加の検証と改善が必要だとも認めている。高性能基板は設備を置けば完成する製品ではない。顧客の設計に合わせた試作、工場監査、品質認証を通過し、量産時の歩留まりを引き上げて初めて40万平方メートルの能力が売上につながる。

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兆馳は表示と光通信の間にPCBを差し込む

兆馳の南昌PCB拠点は、依頓電子の新工場より先に設備導入へ進んでいる。南昌市政府は2026年5月、同拠点の総建築面積を約15.3万平方メートル、総投資額を約50億元と説明した。第1期だけで約15億元を投じ、設備に11億元、機電・内装に4億元を振り向ける。5月時点で建物は完成し、最初の生産設備も搬入済みだった。

同拠点が生産するPCBは、LED表示端末、民生電子機器、光通信に使われる。自社グループが展開する表示と光通信の双方に関わる製品構成であり、AIサーバーや高速交換機への外販を前面に出す依頓電子とは投資の向きが違う。依頓電子が顧客向けに高性能基板の品種を増やすのに対し、兆馳は自社の製品群に近い場所へPCB工程を置く。二つの計画を投資額だけで比べると、この違いが抜け落ちる。

許認可と量産準備は、建物の完成後も続く。南昌市生態環境局は6月26日、江西兆馳智顕電路有限公司による同基地の環境影響評価書を受理した。第1期が達産すれば年産額は約20億元になると南昌市は見込むが、これは設計上の目標である。設備搬入から実際の稼働率と売上へ移る速度を確かめる必要がある。

21カ月後、認証と歩留まりを越えられるか

依頓電子の計画は、株主総会の承認に加えて環境影響評価と省エネルギー審査を残す。会社は税引後の内部収益率を13.01%、建設期間を含む投資回収期間を8.51年と試算するが、いずれも計画通りに稼働することが前提だ。審査の遅れ、製造条件の調整不足、顧客獲得の遅れが重なれば、21カ月の建設を終えても能力を使い切れない。大型投資は減価償却と資金負担を先に発生させるため、量産の立ち上がりが収益を左右する。

依頓電子は同時に1億元のPCB産業基金も設け、原材料、製造装置、専用消耗品の国内企業へ投資する方針を示した。HDIや高周波高速基板、IC基板も対象に含める。自社の認繳額は9,990万元で持分は99.9%だが、基金はまだ設立・届出を終えておらず、初期払込も1,000万元にとどまる。工場の生産能力と上流投資が結び付くまでには時間がかかる。

最初の確認点は、依頓電子が株主承認と環境審査を終え、12月に着工できるかどうかだ。その後は設備台数ではなく、HLCと高階HDIの顧客認証、量産歩留まり、実稼働面積を追う必要がある。兆馳についても、搬入した設備が計画通りに稼働し、第1期の実売上が年20億元の目標へ近づくかが分岐点になる。中国勢の高性能PCB投資がAI・光通信の供給力へ変わるかは、認証、歩留まり、実稼働の三つで測れる。