中国の標準化手続きで、レベル3(L3)とレベル4(L4)の自動運転車に「安全だとどう証明するか」を求める強制国家標準案が承認段階に入った。工業情報化部(MIIT)が公示した承認申請稿は、2024年の推奨標準を置き換え、車両の挙動、メーカーの安全管理、試験方法を一つの型式承認体系に束ねる。施行予定日は2027年7月1日である。ただし2026年8月5日現在、国家標準情報プラットフォームの状態は「承認中」で、最終の標準番号もまだ付いていない。制度の変化は確定へ近づいているが、公布済みの完成版として扱う段階ではない。
承認段階に入ったL3/L4強制標準
「智能网联汽车 自动驾驶系统安全要求」の対象は、L3またはL4の自動運転システム(ADS)を備える乗用・貨物車両である。自動駐車システムは含まない。承認申請稿はL3を「引き継ぎが必要なADS」、L4を「設計運行領域(ODD)の制約内では引き継ぎを必要としないADS」と定義した。人の引き継ぎを前提にしないL4と、条件付きで運転者へ操作を戻すL3を、同じ基礎要件の上で別々に規定する設計だ。
置き換えられるGB/T 44721—2024は推奨国家標準だった。新案は名称を「一般技術要求」から「安全要求」へ変え、L3の高速道路向け要件とL4固有の要件を追加する。さらに、メーカーの安全管理を調べる手続き、セーフティーケースの検査、確認試験、同一型式の判定、施行後の経過措置まで盛り込んだ。任意規格を参照して製品を設計する段階から、適合を型式承認で審査する段階へ進む。
その基準の起点は明快だ。ADSの安全水準は、少なくとも「合格かつ注意を払う運転者」と同じ水準に達し、乗員と他の道路利用者に不合理な安全リスクを与えてはならない。これは事故ゼロの保証ではない。メーカーが自社のODD、故障時の挙動、残るリスクを定義し、その主張を再現可能な証拠で支えるための基準である。
「人間並み」をセーフティーケースで立証する
車両が試験コースを一度走り切っても、適合は証明できない。メーカーは開発、製造、配備後まで続く安全管理の仕組みを整え、安全性を立証する文書「セーフティーケース」(中国語原文では安全档案)に、主張、論拠、証拠のつながりを記録する。審査側はシミュレーション、試験場、実道路で得た証拠を組み合わせ、失敗や低確率の事象も含めてODDを十分に覆っているかを調べる。
承認申請稿は、残余リスクを数量化する考え方も例示した。衝突などの事故率を1時間当たり10のマイナス4乗未満、軽傷を10のマイナス5乗未満、重傷を10のマイナス6乗未満、死亡を10のマイナス7乗未満とする値である。メーカーは別の指標も使えるため、これらが一律の合否ラインになるわけではない。それでも、人間の運転や既存の運転支援を含む事故データと比べ、市場投入でリスクを悪化させないという原則は明記された。
検証時間についても同じ読み分けが要る。承認申請稿は事故率10のマイナス4乗を確かめる一例として、機能不足や故障に起因する安全事象がない累積1万6000時間を示す。この条件なら、定義した受容基準を満たすと80%の信頼度で判断できるという。だが、別の確認方法も認められ、結果は試験シナリオが実際のODDをどこまで代表するかに左右される。走行時間の長さだけで安全を証明できるわけではない。
10秒の引き継ぎと、止まるまで続く制御
L3では、システムが運転者へ操作を戻す瞬間が事故の境目になる。承認申請稿は、引き継ぎ要求を出してから最小リスク戦略(MRM)へ移るまでの時間を10秒以上とし、引き継ぎを担う運転者が操作を受け取る時間を確保する。重大なシステム故障や車両故障では、引き継ぎ要求を待たずにMRMへ入ることも認める。
MRMは警告を出すだけの機能ではない。L3で引き継ぎが完了しない場合も、L4が安全に走行を続けられない場合も、ADSは交通を妨げない場所での静止を目指す。減速度は原則4.0m/s²以下とし、緊急回避中や重大故障などは例外となる。車両が最小リスク状態へ達する前にMRMを終えてはならない。
運転者監視も具体的だ。L3はシートベルト、着座、運転能力を継続的に確認する。直近30秒の中で、視線や頭部運動、操作など少なくとも2種類の指標を別々に確認できなければ、引き継ぎ能力が不足していると判定する。警告を出しても能力が戻らなければ、15秒以内に引き継ぎ要求へ進む。利用者には機能の限界、起動・停止方法、引き継ぎ時間、許される非運転行為まで説明し、車両を起動するたびに利用訓練を完了したか確認する仕組みも求める。
L4は人の介入を前提にしない。遠隔支援を使う場合でも、遠隔の担当者が車両の動的運転タスクを代行する設計は認めず、ADS自身がすべての運転操作を担う。通信状態が悪化して支援を受けられなければ、MRMや停止で安全側へ移る。無人運行を許す代わりに、通信断を人間の即時操作で埋める逃げ道を塞いだ要件である。
L2は1月、L3/L4は7月の二段構え
中国では、運転者が常に周囲を監視するレベル2(L2)の組合せ運転支援に、別の強制標準GB 47955—2026がすでに公布されている。こちらは2027年1月1日に施行予定だ。今回のL3/L4案は同年7月1日を予定する。L2では運転者とシステムの正しい協調を固め、半年後に運転主体がシステムへ移るL3/L4の安全証明を始める二段構えとなる。
車メーカーに効くのは、車両型式とソフトウェア更新の扱いである。同じ型式と認められるには、センサーやECUに加え、ソフトウェア構成とODDが一致しなければならない。人とシステムの連携方法や、L3の引き継ぎ監視も判定材料になる。安全に影響する変更は追加検査と承認の対象になり得る。新規に型式承認を申請する車種は施行日から、既に承認済みの車種は施行後13か月目から適用する案だ。
国内標準の設計は、2026年6月に国連の車両基準調和世界フォーラムが承認したADSの世界技術規則とも重なる。安全管理、製品のセーフティーケース、複数手法による試験、配備後の監視を一続きにする考え方で、中国も策定を共同主導した。国内案と世界技術規則は、車両の挙動とメーカーの安全証明をともに対象とする。
まず確認すべきは、国家標準化当局が最終番号を付けて公布する日と、その際に10秒の引き継ぎ、残余リスクの例、施行後13か月の経過措置を維持するかである。そこが確定すれば、メーカーは2027年に向けた試験量ではなく、ODD全体を説明できるセーフティーケースを用意できるかで評価される。
