中国の二大ファウンドリー、SMIC(中芯国際)と華虹宏力半導体の生産ラインが、2026年第2四半期に事実上の上限へ近づいた。稼働率はSMICが93.7%、華虹が102.8%である。だが、二つの数字が語る事情は同じではない。South China Morning Post(SCMP)が報じたSMIC経営陣の説明では、研究開発用に約5%を確保する運用方針が上限を決める。華虹では需要の伸びが増設ペースを追い越した。AI関連に加え、民生・産業向け需要が成熟・特殊工程へ集まるなか、両社は異なる方法で次の能力を用意しようとしている。
93.7%と102.8%、同じ逼迫でも意味は違う
SMICの第2四半期売上高は30億558万8,000ドルに達し、前四半期から20.0%増えた。粗利率も20.1%から25.3%へ上昇した。これに対し、月産能力は8インチ換算で107万8,250枚から109万6,500枚へ1.7%増えたにすぎない。出荷枚数は14.4%増の286万9,495枚、稼働率は0.6ポイント高い93.7%だった。能力を大きく増やすより先に、既存ラインから多くの売上高を引き出した四半期である。
価格も効いた。SMICは売上高の増加要因に出荷量、平均販売価格、製品構成を挙げ、粗利率の改善には平均販売価格と製品構成が寄与したと説明している。ただし、値上げは全製品には及ばない。South China Morning Postが8月14日の業績説明会を基に報じたところでは、供給が足りない製品では価格を引き上げた一方、需要が弱いスマートフォン向けとディスプレイドライバーICは対象外だった。
華虹は、能力を増やしても需要に追いつかなかった。月産能力は8インチ換算で48万9,000枚から50万8,000枚へ3.9%増え、出荷も145万3,000枚から153万8,000枚へ伸びた。それでも稼働率は99.7%から102.8%へ上がった。102.8%という数字は物理的な限界を超えたという意味ではなく、実生産が会社の見積もる能力を上回ったことを表す。保守日程、品種構成、歩留まりのどれが押し上げたかは開示されていない。
華虹の売上高は過去最高の7億1,753万7,000ドルとなり、前四半期比8.6%、前年同期比26.8%増えた。粗利率は13.0%から16.5%へ改善した。会社は出荷増と平均販売価格の上昇が売上高を押し上げ、値上がりとコスト削減が減価償却費の増加を吸収したとしている。両社の決算は、逼迫が数量から価格へ伝わり始めたことを示している。
GPUの外側へ広がる、電源・光・メモリーの需要
SMICで従来予想を超えたのは、AIアクセラレーターを製造する最先端工程とは別の層だ。SCMPによると、SMICの趙海軍共同CEOは、AIサーバーとデータセンター向けの論理IC、電源管理IC、光モジュール部品で需要が従来予想を超えたと説明した。BCDと呼ばれる電源管理向け工程では、2027年末まで注文を見通せるという。GPUの周囲には電圧を制御し、光信号を扱い、各装置を監視する多数のチップが必要になる。その多くは、微細化の最先端よりも、耐圧やアナログ特性を磨いた成熟・特殊工程で作られる。
SMICの製品構成もこの広がりを映す。第2四半期のウェハー売上高は民生電子が44.2%を占め、産業・自動車が16.5%、コンピューター・タブレットが15.6%だった。中国顧客の構成比は90.2%へ上がった。SCMPによれば、趙共同CEOはこの増加をAI関連需要、海外から戻った注文、サプライチェーンの国産化に帰している。
華虹では、逼迫している品種がさらに明瞭だ。独立型不揮発性メモリーの売上高は前年同期比149.3%増の6,880万ドル、組み込み型不揮発性メモリーは41.8%増の2億10万ドルだった。65nm以下の工程は63.4%増の2億510万ドル、12インチウェハーは33.5%増の4億4,570万ドルである。NORフラッシュ、MCU、電源管理など、AI設備と民生機器の双方で使う製品が12インチラインを埋めた。
需要は一枚岩ではない。華虹の民生電子向け売上高は34.7%、産業・自動車向けは25.5%増えたが、通信向けは12.8%減った。SMICでも値上げできない製品が残る。稼働率の高さを中国半導体市場全体の供給不足と読み替えると、増産後の価格変動を見誤る。
SMICは空きスペース、華虹はFab 9Bと華力微
SMICは2025年に81億ドルを投じ、第2四半期にも18億3,570万ドルの設備投資を実施した。それでも同四半期末の月産能力の増加は1.7%である。投資額と同じ期の能力増を一対一で結べないが、工場を造り、装置を据え、工程と顧客製品を認定するまでに時間がかかることは数字からも分かる。SCMPによれば、同社は既存工場の空きスペースへ装置を追加する案を検討している。規模、対象工程、稼働時期はまだ公表していない。
華虹は建設と買収を並行する。公表済みの計画は次の通りだ。
| 計画 | 新規能力または取得対象 | 現在地と時期 |
|---|---|---|
| SMICの既存工場への追加装置 | 未公表 | 検討中。今後の発表で詳細を示す予定 |
| 無錫Fab 9B | 12インチ月5万5,000枚 | 工事完了目標は2027年1月31日。その後に装置・工程・顧客認定が続く |
| 華力微Fab 5の買収 | 既存の12インチ月3万8,000枚 | 中国証監会が登録を承認。市場全体の新規能力ではなく、買収完了後に連結対象となる |
Fab 9Bは既存の生産・動力棟を使い、新たなクリーンルームと用役設備を設ける。無錫市公共資源交易センターは総投資額を49億7,500万元と説明している。別の入札公告にある38億元は、設計・調達・建設を担う工事契約の見積額であり、総投資額ではない。完成後は月5万5,000枚の12インチ特殊工程能力を持つ計画だが、2027年1月31日は工事の完了目標である。量産開始日やフル稼働日とは一致しない。
華力微の買収は、建設を待たずに既存能力をグループ内へ取り込む手段になる。華虹は華力微株式97.4988%を82億6,790万元で取得する計画で、中国証券監督管理委員会は7月6日、買収対価となる計1億9,076万8,392株の発行と、最大75億5,629万元の資金調達を承認した。対象のFab 5は65/55nmと40nmを扱い、月3万8,000枚の12インチ能力を持つ。ただし、規制当局の承認は取引完了ではない。資産移管と連結が済むまで、華虹の供給能力として数えることはできない。
二つの増産策を並べると、2026年内に大きな新規能力が一気に現れる見込みは薄い。SMICの追加装置は詳細待ちで、Fab 9Bは建設中である。華力微の買収が変えるのは既存Fab 5の所有・連結範囲であり、市場全体の供給量を増やす取引ではない。足元の逼迫に対しては、既存ラインの配分と製品ごとの価格が先に動く。
増産は需給を解くか、再び価格競争を招くか
高稼働は永続的な不足を保証しない。華虹の2025年通期稼働率は106.1%と、2024年の99.5%を上回ったが、同社の年次報告書は中国内で増えた供給能力が価格競争を強めるリスクも記している。特殊工程では顧客認定に時間がかかるため、足りない品種と余る品種が同じ工場群に併存し得る。現在の値上げが製品別に分かれているのは、その表れである。
短期の勢いは強い。SMICは第3四半期に売上高が前四半期比2〜4%増え、粗利率は26〜28%になると見込む。華虹の売上高見通しは7億7,000万〜7億8,000万ドル、粗利率は16〜18%だ。両社とも第3四半期の増収を見込む。粗利率見通しは、SMICが第2四半期実績を上回る一方、華虹は実績をまたぐレンジである。
2027年に向けた判断材料は、工場の完成数では足りない。SCMPが報じたSMICの稼働率95%方針が続くのか、華力微の買収がいつ連結されるのか、Fab 9Bで装置搬入と顧客認定がいつ終わるのかを確かめる必要がある。新しい能力が逼迫している製品の認定済み工程へ変わる時期は、需要構成や競合の増産とともに、現在の値上げが続くかを判断する材料になる。


