中国の朗道燧岩(Langdao Silex)が、上海で開催された第26回中国国際工業博覧会で、極端紫外線(EUV)光源システムの試作機を初めて公開した。2026年10月14日付の解放日報によると、展示スタッフは国産化率が90%に達したと説明している。ただし、量産までには今後3〜5年かかる見通しであり、今回の展示は実用化に向けた開発成果を示す段階にある。EUV光源は先端半導体の製造に欠かせない重要な技術だが、部品の国産化率が高いことと、半導体工場で安定して稼働できることは別の問題だ。同社の公式製品情報とオランダASMLの開発経緯を比較すると、実用化までに克服すべき課題が見えてくる。

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中国がEUV光源の試作機を初公開、国産化率は90%

解放日報の現地取材によると、朗道燧岩が今回展示したのは、半導体露光装置に使用するEUV光源システムの試作機だ。同紙は展示スタッフの説明として、「今回展示した光源システムの国産化率は90%で、中核部品の大半を独自開発している。技術方式は海外の主要メーカーと同じで、チップの露光試験に利用できる」と伝えている。中国国内で開発したEUV光源を、露光試験に利用できる形で公開したことは、同国の半導体製造装置の国産化に向けた一つの進展といえる。

ただし、ここでいう国産化率90%が、部品点数、調達金額、重量などのうち、どの基準で算出されたものなのかは明らかになっていない。また、国産部品の比率が高いからといって、装置の性能や信頼性が量産に必要な水準に達しているとは限らない。今回の数字は部品調達や開発の国産化が進んでいることを示すものだが、EUV光源としての性能とは区別して評価する必要がある。

さらに、EUV光源は半導体露光装置を構成する要素の一つにすぎない。実際に半導体を製造するには、回路パターンが描かれたマスクや、その像をウェハーに転写する光学系など、複数の高度な技術を組み合わせる必要がある。したがって、光源の試作機が完成したことは、EUV露光装置全体が完成したことを意味しない。また、報道にある「量産まで3〜5年」という見通しも光源システムを対象としたものであり、中国が同じ期間内に最先端半導体の量産を開始できると保証するものではない。

低出力EUV光源は製品化段階、高出力モデルは原理検証を完了

朗道燧岩の公式製品ページを見ると、同社が開発するEUV光源は、低出力の「FlintNano-LPP」と高出力の「FlintMicro-LPP」に分かれている。2026年10月15日時点の公式情報によると、FlintNano-LPPは製品化段階に進んでいる一方、FlintMicro-LPPは原理検証を完了した段階だ。つまり、同じメーカーの製品でも開発の進み具合には違いがあり、すべてのEUV光源が量産直前の段階にあるわけではない。

製品系列 位置付け 公式情報における開発段階
FlintNano-LPP 低出力EUV光源 製品化段階
FlintMicro-LPP 高出力EUV光源 原理検証を完了

これらは朗道燧岩自身が公表した開発状況であり、第三者機関が製品の完成度や性能を認定したものではない。それでも、低出力光源では製品化が進む一方、高出力光源では基本原理の検証を終えた段階にあることが分かる。両者を一括して「EUV光源の量産が目前に迫っている」と評価するのは適切ではない。

具体的な仕様が公表されているのは、低出力モデルの「FlintNano LPP-OXXO」だ。同社の製品情報には、駆動レーザーの出力やEUV出力、連続運転時間などが記載されている。主な仕様を整理すると、次のようになる。

項目 同社が公表した仕様
駆動レーザーの出力 1,000W
レーザーの繰り返し周波数 1〜20kHz
変換効率 2%超
EUV出力 15W超
連続運転時間 100時間超

ここで注意したいのは、1,000Wという数字がEUV光そのものの出力ではなく、プラズマを発生させるための駆動レーザーの出力を指していることだ。実際に露光に利用するEUVの出力は15W超と記載されており、両者は異なる指標である。レーザー出力の1,000WをそのままEUV出力としてASML製光源と比較することはできない。また、各数値が同じ運転条件で測定されたかは明らかになっていないため、公表値を単純に割り算して変換効率を独自に算出することも適切ではない。

100時間を超える連続運転が可能とされている点も、実用化に向けた重要な指標だ。ただし、公式仕様にはEUV出力の測定位置や詳細な運転条件、長期使用時の出力安定性、保守を含めた装置の稼働率までは示されていない。さらに、解放日報の報道では今回展示された試作機の型番が特定されていない。そのため、FlintNano LPP-OXXOの公表仕様を、そのまま展示機の実測性能とみなすことはできない。

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ASMLの開発史が示す、EUV光源の量産化に必要な条件

EUV光源を実用化する難しさは、先行するASMLの開発経緯からも理解できる。同社は2025年の年次報告書で、2010年に投入した初期のEUV試作機の光源出力が、わずか1Wだったと振り返っている。この出力でも顧客がEUV露光の可能性を検証することはできたが、半導体の量産に必要な処理能力を確保するには不十分だった。EUV光を発生させる技術を確立することと、その光を利用して経済的に半導体を製造できることの間には、大きな技術的な隔たりがあった。

EUV露光で使用する光の波長は13.5nmで、半導体の製造プロセスを表す「3nm」や「2nm」といったノード名とは異なる。朗道燧岩も採用するレーザー生成プラズマ(LPP)方式では、強力なレーザーを材料に照射してプラズマを発生させ、そこから放出されるEUV光を利用する。ASMLの場合は、微小なスズの液滴にレーザーを照射し、発生したEUV光を集光して露光装置の光学系へ導く仕組みを採用している。

ASMLによると、同社のEUV光源は2018年に250Wへ到達し、毎時125枚のウェハーを処理できる量産水準に達した。その後も出力向上を進め、2022年には500Wの試作光源を開発している。さらに2025年4月には1,000WのEUV光源の実証に成功したが、同社は商用の1,000W光源を投入できるまでには、なお時間がかかると説明している。先行メーカーであっても、研究開発段階で高出力を達成することと、それを量産設備として実用化することは別の課題なのだ。

ただし、250Wという数字がすべてのEUV露光装置に共通する量産の最低条件というわけではない。また、毎時125枚という処理能力も、当時のASMLの装置に関する数値であり、ほかの装置へそのまま当てはめられるものではない。測定条件が明らかになっていない朗道燧岩の15W超という公表値と単純に比較し、生産能力の差や技術的な遅れを年数に換算することもできない。ASMLの開発史から読み取れるのは、EUV光源の出力を高めるだけでなく、その光を使って実際にどれだけのウェハーを安定して処理できるかが、量産化を判断する重要な条件になるということだ。

EUV光源の実用化を左右する出力安定性と部品寿命

EUV光源の実用化では、出力の高さだけでなく、長時間にわたって安定した性能を維持できるかどうかも重要になる。ASMLは集光鏡の寿命に関する技術者の紹介記事で、プラズマの近くに配置される光学部品が汚染や材料の損傷にさらされる問題を説明している。EUV光源では、プラズマを生成する過程で生じる物質やエネルギーが集光鏡に影響を及ぼす可能性があり、光学部品の性能を維持しながら長時間運転することが求められる。仮にEUVの出力を高められたとしても、集光鏡が短時間で劣化するようでは、半導体の量産設備として安定して使用することは難しい。

ASMLはこの問題に対処するため、損傷に強い材料を探すだけでなく、光源内部の環境を集光鏡の材料に適した条件へ調整する研究も進めてきた。その結果、集光鏡の寿命を大幅に改善できたという。この開発過程では、プラズマの制御だけでなく、材料科学や化学的な知見も重要な役割を果たした。ただし、これはASMLが直面した技術的課題であり、朗道燧岩の試作機にも同じ問題が発生していると確認されたわけではない。それでも、EUV光源の性能を評価する際に、出力だけでなく部品の寿命や保守条件まで確認する必要があることを示している。

さらに、光源を実際の露光装置へ組み込むには、ほかの技術との高度な統合も欠かせない。ASMLのEUV露光装置に関する解説によると、EUV光は空気中でも吸収されるため、光源からウェハーまでの光路全体を高真空に保つ必要がある。また、EUV光を導くための多層膜反射鏡や、回路パターンを正確に転写する光学系、ウェハーを極めて高い精度で位置決めする機構なども必要だ。こうした要素を組み合わせて初めて、光源から発生したEUV光を半導体製造に利用できるようになる。

今回の朗道燧岩によるEUV光源の試作機公開は、中国国内で先端半導体の製造技術を確立するための一つの進展といえる。ただし、量産まで3〜5年という見通しの実現可能性を判断するには、製品系列ごとのEUV出力と測定条件、長期運転時の安定性、部品寿命、保守を含めた稼働率など、より具体的な検証結果が必要になる。そのうえで、実際の露光装置に統合し、ウェハーの処理能力や露光精度を示せるかどうかが重要だ。国産化率90%という数字は開発の進展を示すものだが、半導体工場で使える光源へと成熟したかを判断するには、今後の性能検証と実装の成果を見極める必要がある。