中国・清華大学などの共同探査隊が、西太平洋の海底で金・銀を高濃度に含む熱水鉱床を見つけた。部分試料の初期分析では、金が鉱石1トン当たり最大15.4グラム、銀は最大1,271グラムに達する。中国中央テレビ(CCTV)が2026年9月11日に伝え、South China Morning Post(SCMP)が13日に報じた成果だ。高温の熱水が噴き出す海底から実物の試料を持ち帰り、金属の濃度を調べる段階へ進んだ意味は大きいが、最高濃度から鉱床全体の量や採算性までを決めることはできない。

AD

部分試料で金・銀の高濃度を確認

探査隊は8月10日、調査船「向陽紅10号」で深圳を出航し、18日間の航海で7回の潜航調査を行った。清華大学に加え、中国地質調査局青島海洋地質研究所や上海交通大学などが参加している。新たに特定した鉱床は、3つの大きな円錐状の鉱体から成るという。

主な構成鉱物は黄銅鉱、黄鉄鉱、閃亜鉛鉱で、金・銀はそれらを含む鉱石に伴って見つかった。海底に純金の塊が積もっているという話ではなく、複数の金属を含む硫化物の鉱床である。SCMPの報道によれば、金・銀に富むことが今回の発見の特徴だ。

CCTVが伝えた船上分析の数値を、鉱石の重さ当たりに直すと次のようになる。

金属 部分試料の最高濃度 鉱石1トン当たりへの換算
15.4ppm 15.4グラム
1,271ppm 1,271グラム(1.271キログラム)

質量比の1ppmは、鉱石1キログラム中の1ミリグラム、つまり1トン中の1グラムに相当する。表の値は、それぞれの金属で報告された最大値を換算したものだ。金と銀の両方が同じ試料で最大値を記録したかどうかは、CCTVとSCMPは明らかにしていない。

また、最大値は鉱床全体の平均品位とは異なる。品位とは、鉱石に含まれる金属の濃度のことであり、含有量の高い試料が見つかっても、周囲に同じ濃度の鉱石がどれほど続いているかは別の調査が必要になる。CCTVは平均濃度も陸上鉱床を上回ると伝えているが、平均値そのものや比較した鉱床の条件は明らかでなく、陸上の金鉱山との優劣を数値で比べる材料はそろっていない。

熱水が集めた金属を、海底で採取する

この海域では今回に先立つ十数回の調査で、水深約700〜1,500メートルに数十か所の高温熱水噴出孔が見つかっていた。噴出する流体の温度は最高で315℃を超えるという。海全体がその温度なのではなく、海底の噴出孔から出る熱水の測定値である。

熱水は金属を集める働きをする。エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の海底熱水鉱床の解説によると、海底下へ浸透した海水はマグマなどに熱せられ、地殻から金属元素を取り込む。海底へ噴出した熱水が周囲の海水で冷えると、その金属が沈殿し、鉱床をつくっていく。今回の金・銀も、こうした熱水活動に伴う硫化物の中で確認されたものだ。

今回の探査では、予備調査で知られていた熱水域を詳しく調べ、現場で得た試料を船上で分析した。噴出孔の場所や熱水の温度を測る調査に、鉱石の組成を確かめる分析が加わったことになる。金・銀の最大濃度は、この部分試料の分析結果から得られた数値だ。

位置について、CCTVは中国の排他的経済水域(EEZ)内にある西太平洋の背弧海盆と説明している。背弧海盆は島弧の背後に位置する海盆を指す。ただ、SCMPによると正確な座標は公表されておらず、特定の海域名や鉱区の境界を判断できる情報は示されていない。

AD

高い品位から、採れる資源へ

日本では2017年、沖縄近海の水深1,600メートルで、海底熱水鉱床を対象とした採鉱・揚鉱パイロット試験が成功している。JOGMECによれば、海底で掘削して集めた鉱石を、水中ポンプと揚鉱管を使い、海水とともに洋上へ連続的に引き上げた試験だ。

試料を採って成分を調べる今回の中国の探査に対し、この試験が扱ったのは、掘り出した鉱石を海上まで運び続ける工程だった。海底から金属を生産するには、鉱床に到達できるだけでなく、鉱石を掘削し、集め、引き上げる一連の作業を成立させる必要がある。日本の試験成功も、今回の中国の鉱床を採算に合う形で開発できることの証明にはならない。

資源としての規模を評価するには、鉱床全体で見た平均品位と鉱石の量が欠かせない。さらに、含まれる金属のうちどれだけを回収できるかを見積もって初めて、得られる金属量と費用を比べられる。最高品位だけを鉱床全体へ当てはめ、金価格を掛けて価値総額を出せば、最初の段階から推計を大きく誤るおそれがある。

今回公表されたのは、報道を通じた航海成果と船上での予備的な分析である。報道中には鉱床全体の平均品位や鉱石総量が示されず、試料数や測定誤差を伴う査読済み論文も確認できていない。SCMPが伝えた清華大学海洋工程研究院副院長・宋士吉氏の高い開発価値という評価は、こうした研究段階に置いて読む必要がある。

宋氏はまた、活動中の熱水域に暮らす生物群集にも科学的な価値があると指摘している。金属を含む岩石と、極限環境に適応した生物は、同じ場所で研究対象になる。鉱床の広がりと平均品位を確かめ、採鉱・揚鉱の費用や生物群集への影響を検討できる資料がそろえば、高濃度の金・銀という発見を、開発の是非を判断する材料へ進められる。