中国・山東省煙台市の洋上太陽光発電実証試験基地に8月1日、100kW級の竹系複合材を使った浮体式太陽光発電プラットフォーム「集林二号」が設置された。中集来福士などの開発チームは「世界初の100kW級・竹系複合材を用いた洋上浮体式太陽光発電設備」と位置づけている。2023年に海上試験へ入った10kWの「集林一号」から、設備容量は10倍になった。ただし、今回確認されたのは完成と海上への設置までであり、発電実績を伴う運転結果が発表されたわけではない。
集林二号は、竹をそのまま束ねた筏ではない。連続繊維で補強した木材・竹複合管を構造部材に使う。海水や波、紫外線にさらされる海上設備で、この材料が鋼や高密度ポリエチレン(HDPE)の代替になり得るかを試す実証機だ。100kWという規模は大型化を示す一方、商用化の成否は、これから得られる耐久性や発電量のデータにかかっている。
10kWから100kWへ、実証機を10倍に大型化
集林二号は、中集海洋工程研究院、中国林業集団、北京林業大学が共同開発した。7月24日に完成・進水し、煙台日報によれば8月1日に実証基地への設置を終えている。発電した電力は、洋上で水素を製造し、さらにアンモニアやメタノールへ転換する「海上エネルギー島」の実証に供給する計画だ。発表資料では将来の供給計画として記されており、実際に送電が始まったことまでは確認できない。
先行機の集林一号は2023年10月28日、進水、曳航、海上設置を済ませ、同じ基地の海域で実証試験に入った。煙台高新区の資料では7m四方の小型機で、設備容量は10kWだった。集林二号は100kWであるため、設備容量は10倍になったことになる。
しかし、設備容量が10倍になっても、発電効率や材料強度まで10倍になるわけではない。面積と荷重が増えれば、管同士の接合部や係留設備、波による曲げ、繰り返し荷重への対応は難しくなる。今回の前進は、竹系複合材を用いた小型実証機から、より大きな構造物を製造し、実際の海上で評価する段階へ進んだことにある。
大型化では、製造方法の再現性も問われる。小型機では部材ごとのばらつきを選別できても、浮体を多数つなぐ段階では、管の寸法精度や接合部のばらつきがプラットフォーム全体の応力分布に影響する。海上で一部の部材を交換できる設計か、損傷が隣接するモジュールへ広がらないかといった保守上の条件も加わる。100kWは発電設備としての規模であると同時に、この材料を量産部材として扱えるかを確かめるための試験規模でもある。
時系列にも注意が必要だ。煙台高新区は4月29日、25m四方の製品化に向けたパイロット試験用プラットフォームを6月までに建造・設置する計画を紹介していた。実際の完成は7月24日、設置は8月1日となった一方、完成時の発表では集林二号の寸法を明らかにしていない。したがって、25m四方という数値は計画値として参照できるものの、完成機の実寸と断定することはできない。
天然の竹を浮かべる話ではない
プラットフォームの主要部材には、第3世代の「竹缠绕管」と「海竹管」と呼ばれる複合管が使われている。前者は竹を加工して巻き付け成形する複合管で、後者は北京林業大学が開発した、プレストレスを導入した連続繊維補強型の木材・竹複合管だ。浮力の確保と荷重の支持を担う。
天然竹の節や太さをそのまま構造に利用するのではなく、木材と竹を加工・成形し、さらに繊維で補強した工業材料である。
開発側は、強度と軽さ、耐食性を利点に挙げ、原料となる竹が再生可能資源であることも強調する。鋼は海水中で腐食するため、防食処理や塗装の保守が欠かせない。HDPE浮体には化石資源由来の樹脂を使用する。そこで、成長の速い竹を構造材料の一部に利用できれば、材料選択の幅が広がる。
一方、海上では初期強度だけを見ても十分ではない。塩水を吸収した後の寸法安定性や紫外線による表面劣化を追い、接合部が繰り返し荷重に耐えられるかも確かめる必要がある。傷が入った場合の水密性も長期寿命を左右する。
また、竹そのものが再生可能資源であることと、複合管全体の環境性能は分けて評価する必要がある。連続繊維や防護層を含む製造工程から、海上での補修、撤去後の処分まで含めて評価しなければ、鋼やHDPEに対して環境面で優位なのかは判断できない。
劣化の経路が一つとは限らない点も難しい。表面の防護層に小さな傷が入り、内部へ水分が浸透すれば、木材・竹部分と補強材との界面の強度が低下する可能性がある。そこに波による曲げが重なると、傷が静置状態の材料試験より速く広がることも考えられる。実海域で試験することには、こうした複数の要因が同時に作用する状態を観測できる価値がある。
100kWは到達点ではなく、試験開始の合図
煙台の実証基地では、水位や構造応力を計測できる。日射量と発電量のほか、材料の耐食性やプラットフォームの耐波性能も検証対象となる。集林二号が海上に設置されたことで、材料試験片や数値解析だけでは捉えにくい、波と塩害の複合作用を継続して観測する環境が整った。設置は一つの成果であると同時に、データ取得の出発点でもある。
公開済みの資料には、実際の発電量、実証期間、構造物の寸法・重量、想定寿命、コスト、ライフサイクル評価の数値が示されていない。さらに、実際に経験した波高や風速、疲労試験の判定基準、第三者認証についても公開情報からは確認できない。
これらが未開示だからといって性能が低いとはいえないが、「環境負荷を大幅に減らせる」「産業化に向けた段階へ進んだ」といった開発側の評価を、第三者が再検証できる段階にはまだ達していない。
100kWという定格出力も、実際の発電量を示す数字ではない。太陽光発電設備の定格出力は標準条件での最大能力を表し、実際に得られる電力量は、日射量、温度、波による姿勢変化、電気系統の損失、停止時間などに左右される。
水面による冷却効果でパネル温度が下がる可能性はあるが、塩害や汚損、揺れによる影響がそれを相殺することも考えられる。そのため、陸上設備と同じ期間、同じ測定条件で比較する必要がある。
耐久性についても、測定条件が重要になる。「何年間もつか」という結論だけでは、どのような海況で、どの部位を、どの頻度で点検した結果なのかが分からない。管本体が健全でも、接合金具や係留部の交換が頻繁に必要なら運転コストは増える。反対に、損傷したモジュールだけを海上で短時間に交換できれば、材料単価が高くても設備全体の停止時間を抑えられる可能性がある。
実証結果をどのように公表するかも、技術の成熟度を判断する材料になる。三井住友建設は東京湾で行った別方式の洋上浮体式太陽光発電実証を終えた際、鋼製浮体の安定性、実証期間中の塩害、洋上と陸上の発電量比較などを開示した。そのうえで、長期的な安全性・耐久性とコスト低減は次の課題として残している。構造方式も海域も異なるため性能を直接比較することはできないが、設備の設置報告と、実証結果の報告が別の段階であることは分かる。
環境面での優位性はLCAと補修コストで決まる
中集来福士は次の段階として、MW級の実証機、標準化、製品認証を掲げている。100kWから1MW級へ進めば、設備容量は少なくともさらに10倍となり、材料の量産時のばらつきやモジュール間の接続、洋上施工、保守体制が新たな制約になる。小型機を設置して実証を始めたという事実だけから、大規模な浮体群の信頼性まで判断することはできない。
商用化の可能性を判断するには、まず一定期間の発電量と停止率を公開し、管の吸水や変形を追う必要がある。亀裂の発生や接合部の疲労についても、個別の検査項目として示す必要がある。
そのうえで、鋼やHDPEと同じ設計寿命や海況を前提とし、LCAの評価範囲をそろえて、製造時の排出量から補修、撤去までを比較する必要がある。軽量化によって施工費を下げられても、頻繁な交換が必要なら総コストはかえって高くなる可能性がある。
竹系複合材が洋上太陽光発電の選択肢になり得る可能性は、100kW級の実証機が実際の海上に設置されたことで一段進んだ。そこから先を決めるのは「竹」という素材名そのものではなく、台風や冬季を含む長期間の実測値と、補修まで含めた1kWh当たりのコスト・環境負荷である。
その数字が第三者の検証に耐えられるものになれば、MW級への拡張は、素材の実証から実用的な海洋エネルギー設備へ進む転換点になり得る。



