Anthropicは2026年9月2日、Claude CoworkとClaude Codeで、コンピューター操作をバックグラウンドで実行できるようにした。macOS 15以降では、Claudeがアプリを開いてクリックや入力を進めている間も、ユーザーは別の仕事を続けられる。コンピューター操作そのものは以前から利用できたが、AIに画面と入力装置を明け渡す必要があれば、その間は人の作業が止まってしまう。今回の更新はその待ち時間を減らす一方、端末を起動しておく条件や、実際のアプリを動かす際の権限まで取り払うものではない。

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Macを使い続けられる更新、その提供条件

Anthropicの公式ヘルプによると、macOS 15以降のClaudeはバックグラウンドのウィンドウで動き、ユーザーのポインターやキーボードを占有しない。ユーザーが文字を入力している最中は、通常、その入力が終わるのを待つ。人の操作と無関係に、どんな場面でも同時入力を押し通す仕組みではない。

タスクの途中で画面全体を使う必要が生じた場合には、セッション内で初めてその操作が必要になった時点で許可を求める。バックグラウンドで完結するか、途中で人が画面を譲る必要があるかは、任せる仕事によって変わる。この違いは、実際にどれだけ仕事を並行して進められるかに響く。

Coworkの公式ヘルプではベータ版とされ、対象はProとMaxの契約者だ。TeamとEnterpriseはコンピューター操作の対象外となる。Cowork全体が組織向けプランで使えることと、この機能を使えることは分けて考える必要がある。また、コンピューター操作自体はmacOSとWindowsに対応するが、今回のバックグラウンド動作について公式が説明しているのはmacOS 15以降である。

利用には、デスクトップアプリの設定でコンピューター操作を有効にする。Claude Codeの手順では、macOSのアクセシビリティと画面収録の許可も必要だ。有効化したうえでmacOS 15以降を使う場合、バックグラウンド動作が標準になる。「機能をオンにすること」と「操作のたびにバックグラウンド方式を選ぶこと」は別である。

なぜClaudeはクリックより専用ツールを優先するのか

Coworkは、使えるコネクターがあれば、まずそれを使う。コネクターはGmailやSlackなどのサービスと直接やり取りする連携機能だ。それで届かない作業には内蔵ブラウザーや選択したChromeを使い、画面を直接クリックして操作する経路へ進む。

この優先順位は、画面操作が高度に見えても、いつも最適とは限らないためだ。Anthropicはコンピューター操作を導入した3月23日の発表でも、画面経由の作業は直接連携より遅く、複雑なタスクは再試行が必要になることがあると説明していた。バックグラウンド化は、人が別の仕事を進める助けにはなる。しかし、それだけでクリックによる作業の速度や正確さが上がったとはいえない。

Claude Codeでは、専用ツールを優先する方針が権限にも表れている。アプリごとの権限表では、コンピューター操作によるブラウザーへのアクセスは閲覧のみ、ターミナルやIDEはクリックとスクロールまでで、文字入力やキーボードショートカットは認められない。シェルの仕事にはBashなどの専用ツールを使わせる設計であり、Claude Codeがターミナルでコマンドを実行できなくなるという意味ではない。

ブラウザーにも、ユーザーとの干渉を減らす別の経路がある。Coworkの内蔵ブラウザーは、普段使っているブラウザーとは別に動く。保存済みのログインも無条件に共有されず、ユーザーが取り込むものを選ぶ。自分のChrome上のページで仕事を頼むのか、Claude側のブラウザーへ任せるのかで、見せる情報と作業場所が変わる。

そのうえで画面操作が役立つのは、専用の連携機能やAPIがなく、画面上のボタンを押す必要があるアプリだ。APIはプログラム同士が処理を依頼するための窓口であり、それを用意していないソフトもある。こうした仕事まで任せられることと、人の入力を妨げにくいことが組み合わさると、日常のデスクトップ作業で使える場面が広がる。

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クラウド実行とバックグラウンド操作の違い

Coworkの処理がクラウドで動く場合でも、手元のPCへのアクセスには別の条件がある。公式のアーキテクチャ解説では、クラウドセッションの処理とコード実行はAnthropicのサーバーで進む一方、ローカルファイルなどを使う要求はClaude Desktopを介して端末に届く。アプリがオフラインなら、その端末へはアクセスできない。

バックグラウンド操作、クラウド実行、コードの隔離は、それぞれ別の条件を変える。

機能・仕組み 変わること 残る条件・制約
Macのバックグラウンド操作 人のポインターやキーボードを占有せずアプリを操作する macOS 15以降が対象。端末をスリープさせず、Claude Desktopを開いておく必要がある
Coworkのクラウド実行 エージェントの処理やコード実行をAnthropicのサーバーで進める オフラインになった手元の端末にはアクセスできない
コードの隔離環境 コードが動く環境と、そこからアクセスできる範囲を制限する 許可済みの外部ツールを通じた読み書きや、実アプリへの操作権限は別に管理する

つまり、画面を占有しないことから、PCを閉じてもその画面上の作業が続くとは判断できない。コンピューター操作には端末が起きていて、デスクトップアプリが開いている必要がある。クラウドだけで完結する仕事と、手元のアプリを操作する仕事を区別して任せる必要がある。

隔離の対象にも違いがある。既存のローカル実行型Coworkでは、エージェントの処理は端末上で動き、コードは隔離されたLinux仮想マシンで実行される。クラウドセッションにはサーバー側の一時的な隔離環境がある。どちらもコードの実行環境についての説明であり、Claudeが操作する実アプリのすべてを、その中へ移すという意味ではない。

この区別を押さえると、「裏で動くAI」という一見同じ挙動でも、端末への依存や許可すべき範囲を見分けられる。バックグラウンド化は入力の使い方を変え、クラウド化は処理を動かす場所を変える。

画面を占有しなくても、操作の影響は残る

Anthropicの安全ガイドは、コンピューター操作にはClaudeと実際のアプリの間を隔てる隔離環境がないと明記している。コードを隔離して実行していても、許可されたツールを通じて何を読み、何を変更できるかは別の問題になる。

例えば、許可したアプリ内のリンクをクリックすると、別のアプリが開く場合がある。Claudeがその別アプリを見ることを防げても、リンクが開く動作そのものまで止められるとは限らない。アプリごとの許可は、操作の影響がそのアプリの中だけで完結する保証ではない。

画面を読む過程には、情報を渡すリスクもある。Claudeはスクリーンショットで内容を把握するため、表示された機密情報も目に入る可能性がある。また、メールやWebページに埋め込まれた悪意ある指示に誘導される攻撃が、プロンプトインジェクションだ。Anthropicはアプリ単位の許可やブロックリスト、攻撃の検出を用意しているが、防御が完全だとはしていない。

人が別の仕事を続けられるようになると、Claudeの動作を見ている時間は減らせる。その利点を生かすには、任せる範囲を先に狭める必要がある。作業用のフォルダーや許可するアプリを限定し、完成物を確認する時点を決める。画面を返してもらえることと、操作結果を確認しなくてよいことを混同すると、減った待ち時間が後から修正の手間に変わりかねない。

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実用性を測るなら、人の中断時間も見る

今回の更新が直接変えるのは、Claudeがアプリを扱っている間に、人も同じMacで仕事を続けられる点だ。3月の発表では、スマートフォンからDispatchで指示し、離席中のPCに作業させる使い方が示されていた。今回は、PCの前にいる人との並行作業に使いやすくなる。

例えば、専用連携のないアプリで定型的な確認を任せ、その間に人は文書を書くという使い方が考えられる。ただし、頻繁に全面操作の許可が必要になったり、結果の修正が多くなったりすれば、期待したほど時間は浮かない。AIがタスクを終えたかに加え、人が何度中断したか、どれだけ手直ししたかも見るべきだ。

これはベンチマークの成功率とは別の評価軸になる。Claudeの処理が同じ時間だけかかっても、その間に人の仕事が進むなら便益がある。反対に、バックグラウンドで動くことだけを理由に、自動化の品質が高いとは判断できない。

ProやMaxで試す際には、まず実際に繰り返している小さな仕事を選び、完了までの時間と、自分が承認や修正に使った時間を見比べたい。人の中断を減らしつつ、結果の確認を無理なく続けられるなら、連携機能を持たないデスクトップアプリも、日常的にAIへ作業を任せる対象にできる。