The Conversation

現代の世界は電池によって動いている。しかし、市場を席巻しているリチウムイオン電池は、採掘コストが高く、環境への負荷も大きい。リチウムイオン電池の原材料は希少であり、ごく限られた地域に集中して産出されるため、サプライチェーンへの圧力が継続的にかかっている。

ナトリウムイオン電池は、豊富に存在する材料を使用することから有望な代替手段とされている。しかしナトリウムには、リチウムの代替として実用化を阻んできた欠点がある。

リムリック大学のBernal Instituteで行われた研究において、私のチームはナトリウムとリチウムの両方の長所を組み合わせた電池を開発した。これにより、リチウムに関わるサプライチェーンの圧力を軽減するより持続可能な電池の実現につながる可能性がある。研究結果はジャーナル誌『Nano Energy』に掲載された

ナトリウムイオン電池はリチウム電池と比べてエネルギー密度が低い。エネルギー密度とは、電池の重量または体積に対して蓄積されるエネルギーの量を指す。電池のエネルギー密度が低いと、それを動力源とする機器や機械に影響が及ぶ。

電気自動車がエネルギー密度の低いバッテリーモジュールを使用した場合、充電が必要になるまでの走行可能距離が制限される。また、電池のエネルギー密度が低下すれば、タブレット端末やノートパソコンの重量増加にもつながる。

エネルギー貯蔵の研究者として、この矛盾は私を長い間悩ませてきた。性能を犠牲にすることなく、ナトリウムの持続可能性をどのように活かせるのか。この緊張関係は、古来の哲学的概念である陰陽を彷彿とさせる。この考え方は、一見対立する力が実は相補的に結びついていることを示すものである。

この場合、ナトリウムは豊富だが性能が低く、リチウムは高性能だが希少である。この二項対立に着想を得た私は、2つの技術が競合するのではなく、調和して機能できないかと考えるようになった。

そこで私たちは、正極と負極の2つの電極を持つ完全なセル電池として世界初の、2種類の荷電原子または分子(イオン)を使用するフルセル電池を開発した。この場合、荷電原子はナトリウムとリチウムである。異なる陽イオンを用いてエネルギーを蓄え移動させる電池は、デュアルカチオン電池と呼ばれる。

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ナトリウムイオンが劣る理由

標準的な電池は1つまたは複数のセルで構成されている。セルは化学エネルギーを電気エネルギーに変換する。セル内には正極と負極という2つの電極があり、正極はカソード、負極はアノードと呼ばれる。

電子機器に電力を供給する際、負に帯電した電子が回路を流れ、電池の正極に到達する。アノードとカソードの間にある化学的媒体は電解質と呼ばれる。

私は、2つの電極を持つ通常の構造ではなく、1つの電極を電解質に浸した「ハーフセル」でリチウムとナトリウムを組み合わせることにした。ナトリウムを主体とする電解質に少量のリチウム塩を加えるだけで、電池の挙動は劇的に変化した。

Syed Abdul Ahad(左)とHugh Geaneyが実験装置とともに写っている。
Syed Abdul Ahad(左)とHugh GeaneyがUniversity of Limerickの実験装置とともに写っている。

同等の最先端ナトリウム電池と比較して、ハーフセルの蓄電容量はほぼ2倍となった。また、より高い充電電流においても1,000回の充放電サイクルまで安定して動作した。充放電サイクルとは、電池が100%から0%まで放電し、再び100%まで充電されるまでの操作を、容量が低下するまでに何回繰り返せるかを示す指標である。

以前、ナトリウムイオン電池が数十サイクルで劣化していくのを見てきた身からすれば、この結果は奇跡を目の当たりにするような体験だった。

その裏側では、リチウムとナトリウムによる魅力的な化学的相互作用が展開されていた。リチウムイオンはナトリウムイオンよりも小さいため、アノード材料の中をより容易に移動できる。このリチウムイオンの動きが、ナトリウムのためにより滑らかな経路を開く助けとなり、通常ナトリウム電池の速度を低下させるアノードにおける抵抗、すなわち「拡散障壁」を低下させる。これにより、より多くのイオンがアノードに取り込まれ、より多くの電荷を蓄えることが可能となった。

同様に重要なのは、放電後にリチウムが材料内部に閉じ込められることをナトリウムが防いだことである。このような相互交換により反応の可逆性が維持され、電池に高い容量と優れたサイクル安定性をもたらした。この陰陽の相互作用においては、いずれのイオンも一方的に支配することなく、互いに調和して機能した。

クリーンエネルギーへの貢献

ハーフセルによるテストは、実用化に向けた最初のステップである。次のステップとして、リチウムとナトリウムの混合物がフルセル電池においてどのように機能するかを実証した。

電池容量維持率とは、使用開始から一定期間後に利用可能な状態で残っているエネルギーの割合を指す。フルセルは200サイクル後に70%の電池容量維持率を達成した。これは、約50サイクルで機能低下が始まったナトリウム単体の電解質と比べて、はるかに優れた結果である。

フルセルにおいてもナトリウムが主要な電荷キャリアであり続けているという点で、この性能には格別の満足感を覚える。これにより、この電池が依然として根本的にはナトリウムイオン系であることが担保されている。

この突破口は、コバルトおよびニッケルを多く含む正極への依存を減らすことで、世界のクリーンエネルギー転換を後押しする可能性がある。これらの材料は広く用いられているものの、高価であり、供給に制約があるうえ、環境上の懸念とも結びついている。私たちの設計では、ナトリウムを主要な動作イオンとして維持しつつ、より持続可能な硫化鉄を正極に組み合わせている。ナトリウムと鉄は多くの従来型電池金属よりも豊富に存在するため、このケミストリーはよりコストを抑えてスケールアップしやすい可能性がある。

少量のリチウムは、主要なリソースとしてではなく、主に性能を向上させるブースターとして機能する。これにより、この電池は高性能でありながら、高価な重要材料への依存度を抑えられる可能性がある。さらに、これはグリッド上での再生可能エネルギー貯蔵への新たなアプローチを示すものであり、コミュニティや産業がよりグリーンな未来へと移行する助けとなりうる。

充電中の電気自動車

プロトタイプの成功にもかかわらず、まだ多くの課題が残っている。私たちのセルおよびハーフセルのアノードはゲルマニウムで作られており、これはコストが高い。次の課題は、ゲルマニウムをより安価なアノード材料で置き換えることである。有力な候補の1つがシリコンであり、充放電の際にリチウムイオンとナトリウムイオンの両方を可逆的に収容できるうえ、より高い蓄電容量を電池にもたらすことができる。

この改善により、ナトリウム主体の電池のエネルギー密度を高めることができる。また、現状よりも高い電圧を生成できる正極との組み合わせも必要である。

私はすでに、リチウム=マグネシウムやカリウム=ナトリウムなど、異なるイオンの代替・持続可能な組み合わせの探索も進めている。さらに、新たな電解質組成の開発にも取り組んでいる。

私のチームの研究は、リチウムとナトリウムの陰陽を受け入れることで、高い性能と持続可能性の両立を実現する電池へと近づけることを示している。これは、スマートフォンや自動車、そして電力グリッドまでもが、豊富で安価なナトリウムイオンに——わずかなリチウムの助けを借りながら——動力を得る世界の可能性を切り開くものである。