Samsung ElectronicsとSK hynixのHBM向けハイブリッドボンディング採用について、導入時期が従来の想定より遅れる可能性があると報じられた。ZDNet Koreaが2026年7月6日に伝えた。かつては第6世代に当たるHBM4からの採用も見込まれていたが、両社はHBM4で従来型のTCボンディングを使った。現在の見立てでは、第7世代に当たる16段HBM4Eが最短の採用候補になる。
この遅れは、技術開発の失敗というより、量産品で何を急ぐべきかが変わった結果だ。ハイブリッドボンディングはHBMを薄くし、熱を逃がしやすくし、I/Oを高密度に並べやすい。一方で、HBM4以降は厚さの許容値が広がり、主要顧客の高積層品への移行も急いでいないとされる。先端パッケージングをどの世代で導入するかより、TCボンディングを何世代まで引っ張れるかが、いま業界の判断材料になっている。
HBM4では採用圧力が下がった
ZDNet Koreaによると、HBMの標準パッケージ厚はHBM3Eまで720マイクロメートルだった。HBM4ではこれが775マイクロメートルに引き上げられた。背景には、DRAMの積層数が従来の8段・12段から、12段・16段へ広がる流れがある。
厚さに余裕が出ると、DRAM同士の間隔を極限まで詰める必要は弱まる。ハイブリッドボンディングはバンプを使わず銅配線を直接つなぐため、薄型化には強い。だが、規格側が厚さを受け入れるなら、量産現場は難度の高い新工法へ急いで移る理由を一つ失う。
次世代では、さらに余裕が広がる可能性もある。ZDNet Koreaは、JEDECがHBM5など20段積層を想定する次世代HBMについて、厚さ上限を900マイクロメートル前後から最大1,000マイクロメートル程度へ緩和する案を議論していると伝えた。これは確定規格ではない。それでも、業界が高積層品を薄さだけで解こうとしていないことは読み取れる。
需要側の歩調も速くない。同記事でメモリ業界関係者は、NVIDIAなど主要顧客とメモリメーカーの間で16段HBMの議論は活発ではなく、現時点ではHBM4Eでも12段品が主力になる可能性が高いと述べている。16段品が量産の中心にならなければ、ハイブリッドボンディングへ移る理由も薄れる。
TCボンディングとハイブリッドボンディングの差
現在のHBM量産で使われているTCボンディングは、DRAMとDRAMの間に微細なバンプを置き、アンダーフィル材で支えながら熱と圧力で接合する。量産実績があり、設備や工程の習熟も進んでいる。HBM4で両社がこの方式を続けたのは、既存の歩留まりと供給計画を崩しにくいためだ。
ハイブリッドボンディングは構造が違う。隣り合うDRAMの銅配線を直接つなぎ、バンプを介さない。バンプとアンダーフィルが減るぶん、パッケージを薄くしやすく、熱抵抗も下げやすい。電気的な接続点を細かく並べられるため、I/O端子の密度も上げられる。
ただし、その利点は工程難度と引き換えになる。銅同士を直接合わせるには、表面の平坦性、位置合わせ、汚染管理を高い精度でそろえる必要がある。AIアクセラレータ向けHBMでは供給量と納期が競争力に直結する。性能上の余裕がまだ残るなら、メーカーが既存工法を選ぶのは自然な判断だ。
放熱策はHPBとiHBMへ
採用を急がなくなったもう一つの理由は、熱対策の選択肢が増えたことだ。ハイブリッドボンディングは、熱伝導率の低いアンダーフィルを取り除けるため、HBMの放熱を改善しやすい。だが、SamsungとSK hynixは別の経路でも熱を逃がそうとしている。
SamsungはHeat Path Block、略してHPBと呼ぶ構造を開発中だ。SK hynixはiHBM、またはICE HBMと呼ぶ構想を示した。ZDNet Koreaによれば、どちらもHBMコアダイのそばに熱を逃がす別の素子を配置する考え方で、両社はHBM5への適用を見据えてテストしている。
これはハイブリッドボンディングの価値を消すものではない。むしろ、HBMの発熱問題が接合方式からパッケージ全体の熱経路設計へ広がっていることを示している。メモリメーカーにとっては、薄型化と放熱を一つの新工法にまとめて賭けるより、既存のTCボンディングを維持しながら熱だけ別構造で逃がす方が扱いやすい局面がある。
パッケージング業界関係者はZDNet Koreaに対し、放熱素子を実装してHBMコアダイの横へ置くことは技術的に大きく難しくなく、商用化の難点は少ないとの見方を示した。ここでも判断軸は同じだ。量産品では、最も進んだ工法より、必要な性能を安定して出せる構成が選ばれる。
4096個I/Oという次の分岐点

ハイブリッドボンディングの採用が遠のいたとしても、研究開発が止まるわけではない。ZDNet Koreaは、Samsung、SK hynixなど主要メモリ企業がHBM向けハイブリッドボンディングのR&Dを続ける見通しだと伝えている。理由はI/O数だ。
HBM4では、I/O数が前世代の2倍となる2,048個に増えた。I/OはHBM内部でデータをやり取りする通路であり、数が増えるほど接続ピッチは狭くなる。TCボンディングでは、バンプが熱で溶ける過程で横方向に広がるため、さらに細かいピッチを実装しにくいと評価されている。
次の分岐点として浮上しているのがHBM5Eだ。パッケージング業界関係者はZDNet Koreaに、HBM5EからI/O数がさらに2倍の4,096個へ集積されるとの議論があると語った。この水準になればI/O間隔は非常に狭くなり、ハイブリッドボンディングを適用する必要が出るという見方だ。
このため、16段HBM4Eは「採用される世代」というより、採用可否を見極める最初の現実的な候補に近い。12段HBM4Eが主力に残り、厚さと熱を別の手段で処理できるなら、移行はさらに後ろへずれる。一方で、I/O密度が4,096個級へ進むなら、TCボンディングで延命できる範囲は急に狭くなる。
TCボンダー市場への副作用
採用時期の後ずれは、装置市場にも影響している。Newsisは2026年7月2日、独立リサーチ企業Growth Researchの分析として、ハイブリッドボンディング導入の遅れがHanmi SemiconductorのTCボンダー需要に追い風になっていると報じた。
同記事によると、メーカーが難度の高いハイブリッドボンディングの代わりにダイ面積を大きくする方式を選ぶことで、広いダイを安定して扱うWide TC Bonderの需要が増えている。Growth Researchは、HBM4以降の装置需要がHanmi Semiconductorの業績を押し上げる要因になるとみている。
ただし、これは装置メーカー側から見た副作用である。Newsisが引用したGrowth Researchは、Hanmi Semiconductorについて、今年の売上高を7,850億ウォン、営業利益を3,694億ウォン、純利益を3,373億ウォンと見込んだ。一方で、前工程企業の投資循環や次世代工程への移行速度は不確実性として残るとも指摘している。
HBMのロードマップは、最先端技術の投入時期だけでは決まらない。厚さ規格と顧客が求める積層数がまず絡む。そこへ熱設計、装置供給、歩留まりが重なる。2026年後半に見るべき数字は複数ある。16段HBM4Eの採用拡大に加え、12段品がどこまで主力に残るか、HBM5世代の厚さとI/O数がどの水準で固まるかによって、ハイブリッドボンディングの出番は決まる。