メモリー市場の高騰は、短期の在庫不足というより供給枠の取り合いに近づいている。Jefferies Equity Researchは、メモリー価格が2026年第3四半期に前四半期比40〜50%、第4四半期にさらに30〜40%上がり、2027年も前年比40〜45%上昇すると予測している。2028年には新能力の投入で平均販売価格が下がる余地があるものの、その増分はAIとコンピュート需要に吸収されやすいという見立てだ。
この数字は投資家向けリサーチの予測であり、実際の契約価格や製品別の値上がり幅が一律にそうなるわけではない。それでも、主要メモリーメーカーの直近資料を見ると、予測が強気すぎるだけとは言い切れない。Micronは2026会計年度第3四半期に、DRAMの平均販売価格が前四半期比で60%台前半、NANDが80%台半ば上昇したと説明した。出荷ビット数の伸びはDRAMで低い1桁台、NANDで1桁台半ばにとどまっており、足元の利益を押し上げた主因は数量ではなく価格だった。
Micronの決算は、値上がりがすでに利益へ直結したことを示した
Micronの2026会計年度第3四半期の売上高は414億5600万ドルで、前四半期比74%、前年同期比346%増えた。非GAAPベースの粗利率は84.9%、非GAAP純利益は288億5700万ドル、希薄化後1株利益は25.11ドルに達した。第4四半期の会社見通しも、売上高500億ドル前後、粗利率約86%、非GAAP EPS 31ドル前後である。
内訳を見ると、DRAM売上高は313億2800万ドルで全社売上の76%、NAND売上高は99億4300万ドルで24%を占めた。DRAMは出荷ビット数が少し増えただけで価格が60%台前半上がり、NANDもビット数の伸びを大きく上回る価格上昇を記録した。メモリー価格の上昇が製品供給全体の話ではなく、実際にメーカーの売上と粗利率を変える段階に入っていることが分かる。
Micron自身も、価格上昇の勢いが第4四半期にはいくらか緩やかになると見ている。だが、同社はDRAMとNANDの需給逼迫が2027年を越えて続くとも説明した。2028年に供給は徐々に改善する可能性がある一方、需要に供給が追いつく時期は見えていない。価格上昇ペースが鈍ることと、高値の環境が消えることは別である。
長期契約が、残りの供給をさらに細らせる
今回の市況で見逃せないのは、メモリーメーカーと大口顧客が高値のまま供給枠を複数年契約に移している点だ。Micronは同じ決算説明で、16件の戦略顧客契約を締結済みだと明らかにした。前四半期には最初の5年契約にとどまっていたため、契約網は3カ月で大きく広がった。
これらの契約は多くが2026年から2030年末までの5年契約で、自動車向けは通常3年契約になる。締結済み契約は、対象期間のMicronのDRAM数量のおよそ20%、NAND数量の3分の1を占める。14件の契約については、最低価格に基づく残存期間の累計収益が約1000億ドルになる。顧客預かり金と関連コミットメントは約220億ドルで、そのうち約180億ドルが現金預かり金だ。
この構造は、顧客側には供給保証、メーカー側には投資と収益の見通しをもたらす。大口契約の多くは、既存製品について2026年第2四半期の市場価格を上限にしつつ、契約期間を通じた下限価格も置く。市場価格がさらに上がれば顧客は上振れを抑えられるが、市況が下がってもメーカーの収益性は守られる。予定している契約がすべて実行されれば、Micronは売上の半分以上が戦略顧客契約の下に入ると見ている。
消費者向けPC、スマートフォン、ゲーム機、自動車、産業機器にとっては、ここが苦しい。AIデータセンターや大口クラウド顧客が複数年で供給枠を押さえるほど、スポットや通常契約に回る余地は減る。メモリー価格の高騰は、需要が強いから上がるだけでなく、将来分の供給が先に予約されることで長引きやすくなる。
Samsungも、供給不足とAI製品の偏りを決算に映した
同じ流れはSamsung Electronicsの2026年第1四半期決算にも出ている。同社の全社売上高は133.9兆ウォン、営業利益は57.2兆ウォンだった。このうちデバイスソリューション部門は売上高81.7兆ウォン、営業利益53.7兆ウォンを計上した。部門売上高は前年同期の25.1兆ウォン、前四半期の44.0兆ウォンから大きく伸びた。
Samsungは、メモリー事業の好調について、高付加価値AI製品の販売拡大、継続する供給不足に伴う平均販売価格の上昇、限られた供給を挙げた。メモリー売上高は前年同期の19.1兆ウォン、前四半期の37.1兆ウォンから、2026年第1四半期には74.8兆ウォンへ伸びた。2026年第2四半期には、クラウド事業者によるAIサービス拡張、企業のLLM導入、エージェント型AIの広がりを背景に、サーバーDRAMとサーバーSSDの需要が引き続き強いと見込む。HBM4Eについては2026年後半に最初のサンプルを出す計画も示した。
メモリー部門だけが恩恵を受ける一方で、同じ価格上昇はSamsungの他事業にはコスト圧力として現れる。同社のモバイル部門は、メモリー価格の上昇が収益性の重荷になると説明した。ディスプレイ事業でも、AI需要に伴うメモリー価格上昇で部材コストが上がる可能性が示されている。メモリーを売る会社にとっては利益要因でも、端末を作る事業には負担として跳ね返る。
HBMは通常DRAMより供給を増やしにくい
高騰が長引くもう一つの理由は、AI向けメモリーの作り方にある。SK hynixは米SECに提出したForm F-1で、HBMは従来型DRAMより複雑で資源を多く使い、より多くのウェハ投入と、先端パッケージング向けの特殊材料・部材を必要とすると説明している。同社は2026年第1四半期のHBM市場で売上ベース56.4%のシェアを持つとしながら、直近四半期では需要が供給可能量を上回ったとも記した。
HBMの増産は、DRAMチップを多く作れば済む話ではない。積層したDRAMダイを高密度に接続し、AIアクセラレータと組み合わせるための後工程能力が必要になる。前工程のウェハ能力、EUV露光装置、先端パッケージング、テスト、材料供給が同時に詰まれば、HBMだけでなく通常DRAMやNANDの供給余力にも影響が出る。
SK hynixの投資計画は、その時間軸をよく示す。YonginのFab 1は第1期クリーンルームの開設が2027年第1四半期の見込みで、CheongjuのP&T7先端パッケージング工場は2027年末までの完成を予定する。米Indianaの先端パッケージング拠点は2028年後半に操業を始める計画だ。Micronも、アイダホ州ID1の初回ウェハー出力を2027年半ば、ID2を2028年後半に見込む。新しい能力は来るが、2026年後半の需要には間に合わない。
2028年の供給増は、価格を戻す保証ではない
2028年に価格が下がるという見方は、能力増強が現実に立ち上がることを前提にしている。Micronは2028年に供給が徐々に改善すると見ており、SK hynixやMicronの大型プロジェクトもその頃から数字に表れやすくなる。だが、供給が増えることと、市場が過去の安値へ戻ることは同じではない。
理由は、需要側の予約がすでに進んでいるからだ。Micronの戦略顧客契約は2026年から2030年までの供給を含む。大口クラウド企業やAIサービス事業者がメモリーを長期で確保すれば、新しい工場から出てくる能力の一部も既存契約や優先顧客に向かう。供給増がスポット市場にそのまま流れ込むとは限らない。
もう一つは、製品ミックスの変化だ。HBM、サーバーDRAM、企業向けSSDは高単価で、メーカーは限られたウェハー、クリーンルーム、パッケージング能力を高収益製品へ振り向けやすい。結果として、PC用DRAM、スマートフォン用メモリー、古い規格のDRAMやNANDは、需要が極端に伸びていなくても供給の優先順位で不利になり得る。
Jefferiesの予測が示した40〜50%という上げ幅は、まだ実際の市場価格ではなく見通しである。ただ、MicronのASP上昇、SamsungのAI製品シフト、SK hynixのHBM投資負担を重ねると、メモリー価格の問題が2026年だけで終わりにくい理由ははっきりする。次に見るべきなのは、価格がいつ下がるかだけではない。2027年から2028年にかけて増える能力が、長期契約で先に埋まる供給枠を超えて、通常のPC、スマートフォン、サーバー、組み込み機器へどれだけ回るかである。