
GM、ナトリウムイオン電池でAIデータセンター向けグリッドストレージ市場に参入:Peak Energyと共同開発、2028年商用化目標
GMはEV事業の停滞を受け、安価で熱管理が容易なナトリウムイオン電池の開発により電力貯蔵市場へ参入する。スタートアップ企業と提携し、リチウム依存や地政学的リスクを抑えた米国主導の供給網を構築することで、2028年の商用化を目指す方針だ。
別名: Sodium-ion battery
ナトリウムイオン電池は、ナトリウムイオンを電荷キャリアとして利用する二次電池である。基本構造はリチウムイオン電池と類似するが、地殻中に豊富に存在し地政学的リスクの低いナトリウムを正極・負極間のキャリアに用いる点が特徴だ。エネルギー密度はリチウムイオン電池に及ばないものの、低コスト、高い安全性、寒冷地での動作性能などの利点から、EV、グリッドストレージ、データセンターのバックアップ電源、IoTデバイスなど幅広い用途での活用が検討されている。
リチウムイオン電池はスマートフォンやEVの普及を支えてきた一方、リチウムやコバルトなどの資源が特定地域に偏在し、価格変動や供給網の地政学的リスクが課題となっている。ナトリウムイオン電池はこうした制約を回避できる代替技術として注目され、CATLやBYDなど中国大手電池メーカーを中心に開発が進んできた。近年は米国立研究所や大学の研究機関も参入し、実用化に向けた技術的課題の解決が加速している。
ナトリウムイオン電池の主な課題は、リチウムイオン電池に比べて低いエネルギー密度と、電極界面での溶媒分解によるサイクル寿命の短さである。これに対し、リチウムとナトリウムの両方をキャリアとして活用するデュアルカチオン電池の研究や、電極表面での副反応を抑制する「メタ弱溶媒和電解質」の開発など、性能向上を目指した基礎研究が進められている。また、海水淡水化と蓄電を同時に行う次世代型のナトリウムイオン電池も研究段階にあり、用途は電力貯蔵に限らず広がりを見せている。
2026年5月9日には、米エネルギー省太平洋北西国立研究所の研究チームが、電極界面での溶媒分解を抑える「メタ弱溶媒和電解質」を開発し、サイクル寿命を延ばす成果を報告した。同月20日には、米国がAIデータセンターの電力需要増加に対応するため、2030年までに蓄電池分野に1000億ドル規模の投資を行う方針を発表し、国産バッテリー製造の一環としてナトリウムイオン電池も対象に含まれるとみられる。同月26日には、BYDが2027年に硫化物系全固体電池と1万サイクルのナトリウムイオン電池を組み合わせる「バッテリー二刀流」戦略を明らかにした。
2026年6月に入ると動きはさらに具体化した。6月3日には、リチウムとナトリウムを組み合わせたデュアルカチオン電池の研究成果や、英サリー大学による海水淡水化と蓄電を兼ねる次世代ナトリウムイオン電池の開発が報じられた。6月8日には、CATLとHyperStrongが60GWh規模のナトリウムイオン電池供給契約を締結し、量産技術の確立を示すとともに、CATLとChangan Automobileが世界初のナトリウムイオン電池搭載EVを発表した。さらに6月11日には、GMがスタートアップのPeak Energyと共同でナトリウムイオン電池を用いたAIデータセンター向けグリッドストレージ事業に参入し、2028年の商用化を目指すと発表した。これらの動きは、ナトリウムイオン電池が研究段階から商用インフラへと実用化フェーズに移行していることを示している。

GMはEV事業の停滞を受け、安価で熱管理が容易なナトリウムイオン電池の開発により電力貯蔵市場へ参入する。スタートアップ企業と提携し、リチウム依存や地政学的リスクを抑えた米国主導の供給網を構築することで、2028年の商用化を目指す方針だ。

リチウムイオン電池の課題解決のため、研究チームはリチウムとナトリウムの長所を組み合わせたデュアルカチオン電池を開発した。ナトリウムイオン電池の低エネルギー密度を克服し、持続可能性と高性能を両立させることで、クリーンエネルギーへの貢献が期待される。

AIデータセンターの電力需要が2030年に米総電力の11%を占める見通しに対し、米国はエネルギー産業がバッテリーストレージに100億ドルを緊急投資すると発表した。この投資は、再生可能エネルギーの変動性を吸収しつつ、600 GWh以上の累積容量達成を目指し、国産バッテリー製造の加速と脱炭素化の両立を実現することでインフラ覇権を狙う戦略である。

米国エネルギー省太平洋北西国立研究所の研究チームは、ナトリウムイオン電池の長年の課題である電極界面での溶媒分解問題を解決する「メタ弱溶媒和電解質」を開発した。これは、溶媒分子がイオンに弱く結合しつつ高速で入れ替わることで、高電圧下でも電極表面での副反応を抑制し、実用的なサイクル寿命を実現する画期的な技術である。

CATLとHyperStrongは、リチウム依存を克服する次世代技術として注目されるナトリウムイオン電池の60GWh供給契約を締結した。これは、CATLが量産課題を克服し、リチウムイオン電池と同等以上の性能とプラットフォーム互換性を持つナトリウムイオン電池を商業規模で提供可能になったことを示す。この契約は、再生可能エネルギーの安定供給に不可欠な送電網規模のエネルギー貯蔵システム市場における、ナトリウムイオン電池の実用化と普及を加速させる転換点となる。

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