ポケットサイズのジンバルカメラという市場を創造したDJIから、次世代機「Osmo Pocket 4」に関する衝撃的な情報がリークされた。プロトタイプとされる画像には、現行モデルとは明らかに異なる「デュアルカメラ」の搭載が確認出来、その小さなサイズからは想像も出来ないような性能が期待出来そうだ。
衝撃のリーク、Pocket 4プロトタイプが白日の下に
静寂を破ったのは、2025年9月初旬、複数の信頼できる情報源から同時に発信されたリーク画像だった。ドローン関連のリークで定評のあるIgor Bogdanov氏(@Quadro_News)やJasper Ellens氏、そして中国のソーシャルメディアWeibo上の固定焦点デジタル氏などが、相次いで「Osmo Pocket 4のプロトタイプ」とされる画像を公開したのだ。
公開された画像は不鮮明ながらも、現行のOsmo Pocket 3とは明らかに異なる特徴を捉えている。最も注目すべきは、ジンバルヘッドに搭載された2つのカメラモジュールだ。これは、2018年の初代機から続くシングルレンズ設計からの完全な脱却を意味する。
ある画像では、現行のPocket 3と並べた比較が示されており、その進化の度合いが一目瞭然となっている。 全体的なサイズ感は維持しつつも、より大型のプライマリカメラと、その隣に配置されたもう一つのレンズユニットが確認できる。 このプロトタイプは、ジンバル部分に若干の歪みが見られることから、開発初期段階のテスト機である可能性も示唆されている。 しかし、その姿がDJIの次なる野心の一端を物語っていることは間違いない。
最大の焦点「デュアルカメラ」が切り拓く新次元
今回のリークにおける最大の核心は、間違いなくデュアルカメラシステムの採用だ。これは撮影の自由度と表現力を、飛躍的に高める可能性を秘めたものだ。

シングルレンズの限界を超えて
これまでのOsmo Pocketシリーズは、広角の単焦点レンズという潔い構成で、高品質な映像を誰でも手軽に撮影できる価値を提供してきた。特にPocket 3で採用された1インチCMOSセンサーは、暗所性能とボケ表現を飛躍的に向上させ、多くのユーザーから絶大な支持を得た。
しかし、単焦点であるがゆえの制約も存在した。被写体にもっと寄りたい、あるいは背景を圧縮して主題を際立たせたいといった、より高度な映像表現には限界があったのだ。クリエイターはデジタルズームによる画質劣化を受け入れるか、あるいは物理的に被写体に近づくしか選択肢がなかった。
プライマリ+望遠?その構成から読み解くDJIの野心
リーク画像から推測されるのは、DJIのハイエンドドローン「Mavic 3」や「Air 3」で実績のある、広角プライマリカメラと中望遠テレカメラの組み合わせだ。 この構成がPocket 4に搭載されるとすれば、クリエイターは以下の様な新たな武器を手にすることになる。
- 光学ズーム相当の画質: デジタルズームとは異なり、画質を損なうことなく被写体を大きく捉えることが可能になる。
- 圧縮効果による映像表現: 望遠レンズ特有の圧縮効果により、背景が被写体にぐっと近づいて見える、映画のような表現が手軽に実現できる。
- 視差を利用した高度な被写体認識: 2つのカメラからの映像のズレ(視差)を利用することで、より正確な深度マップを生成できる。これは、背景と被写体を精密に分離し、自然で美しいボケを生み出したり、後述するActiveTrackの精度を劇的に向上させたりすることに繋がる。
今回、DJIがドローンで培ったデュアルカメラの知見を、満を持して地上用カメラに投入してきたと見られる。これは、スマートフォンカメラがデュアル、トリプルカメラを標準搭載することで表現の幅を広げてきた流れを、ジンバルカメラの世界で本格的に展開する試みではないだろうか。
デュアルスクリーン?操作性と表現力を両立する野心的な設計

驚きはデュアルカメラだけではない。一部のリーク画像は、カメラの前面にもディスプレイが追加される可能性を示唆している。
これは、自撮り撮影における長年の課題を解決する、極めて合理的な進化だ。従来のPocketシリーズでも画面を回転させることでプレビューは可能だったが、レンズの真下に常時表示されるスクリーンがあれば、画角の確認が格段に容易になる。
さらに、メインとなる背面ディスプレイも、Pocket 3の2.0インチから2.5インチへと大型化されるとの噂がある。 輝度も800ニト以上とされ、晴天の屋外での視認性向上が期待される。
操作性に関しても、Pocket 2で採用されPocket 3で廃止されたミニジョイスティックが復活する可能性が報じられており、タッチ操作と物理操作のハイブリッドによる、より直感的で確実なカメラコントロールが実現するかもしれない。
内部に宿る怪物級スペック。Hasselbladの色がポケットに
デザインの刷新に加え、内部スペックも飛躍的な進化を遂げる見込みだ。
1インチCMOSセンサーとHasselbladカラーサイエンス
画質の核となるイメージセンサーは、Pocket 3で高い評価を得た1インチCMOSセンサーを継承、あるいは改良したものが搭載されると見られる。 そして特筆すべきは、スウェーデンの名門カメラメーカー「Hasselblad」のカラーサイエンスが採用されるという噂だ。
DJI傘下にあるHasselbladの色作りは、DJIのドローンにおいて「自然で忠実な色彩表現」として定評がある。この技術がPocket 4に導入されれば、空撮映像と地上撮影映像の色味をシームレスに統一でき、プロフェッショナルな映像制作における編集作業の負担を大幅に軽減するだろう。
4K 240fpsは現実的か?技術的ハードルを考察
スペックの中でも特に目を引くのが、「4K解像度で240fps」という驚異的なスローモーション撮影機能の噂だ。 これはPocket 3の4K 120fpsから倍の性能であり、実現すれば肉眼では捉えきれない一瞬を、極めて滑らかかつ高精細な映像として記録できる。
しかし、このスペックにはいくつかの技術的ハードルが存在する。最も大きな課題は「熱処理」だ。高速なセンサー読み出しと画像処理は膨大な熱を発生させ、このサイズの筐体でいかに効率的に排熱するかは至難の業である。また、センサーの一部を切り出して使用する「クロップ」が発生し、画角が狭くなる可能性も否定できない。一部の専門メディアがこのスペックに懐疑的な見方を示しているのも、こうした技術的背景があるからだ。 実際に搭載されるとしても、撮影時間に制限があるなど、何らかの制約が課される可能性は考慮すべきだろう。
ActiveTrack 7.0と進化するAI
DJIの十八番である被写体追従機能「ActiveTrack」も、バージョン7.0への進化が噂されている。 ここで活きてくるのが、デュアルカメラによる深度情報だ。平面的な画像認識だけでなく、空間的な奥行きを把握することで、より正確で粘り強いトラッキングが期待できる。例えば、被写体が一時的に障害物に隠れたり、複数の人物が交差したりするような複雑なシーンでも、ターゲットを見失うことなく追従し続ける性能が向上するはずだ。これは、ワンオペで撮影を行うクリエイターにとって、まさに「もう一人のカメラマン」を手に入れるに等しい進化と言える。
待つべきか、今買うべきか?価格と発売時期の錯綜する情報
これだけの進化を遂げるとなれば、気になるのは価格と発売時期だ。
価格については、基本モデルが米ドル価格で599ドルから699ドル程度、マイクなどのアクセサリーが付属するCreator Comboが799ドル前後になると予測されている。 これは、Pocket 3の発売当初の価格(519ドル)から15〜35%程度の値上がりを意味し、デュアルカメラや大型ディスプレイといったハードウェアコストの上昇を反映したものと考えられる。
日本でも同様に値上げが行われた場合、25%の値上げでベースモデルが99,000円となる。ベースモデルは10万円を切る価格が想定されるが、それでも値上げは避けられないだろう。
発売時期については、情報が錯綜している。DJIの製品サイクル(Pocket 2が2020年、Pocket 3が2023年)を考慮すれば、「2026年後半から2027年初頭」というのが順当な予測だ。 しかし一方で、競合の動向やホリデーシーズンを睨み、「2025年後半」に前倒しされるのではないかという楽観的な見方も存在する。
現時点(2025年9月)で、製品の発売前に必要となるFCC(連邦通信委員会)などの認証情報が確認されていないことから、筆者としては性急な発売の可能性は低いと見ている。 いずれにせよ、これらはあくまでリークに基づく憶測であり、公式発表を待つ必要がある。
Pocket 4は市場をどう変えるのか
DJI Osmo Pocket 4の登場は、単なる新製品の追加に留まらず、コンパクトカメラ市場の勢力図を塗り替えるポテンシャルを秘めている。
Vlogカメラの再定義
もしリーク通りのスペックで登場すれば、Pocket 4は「Vlogカメラ」というカテゴリの基準を根底から覆すだろう。これまでは「手軽さ」や「安定性」が主な評価軸だったが、そこに「表現の多様性(デュアルカメラによる画角の変化)」と「プロレベルの画質(Hasselbladカラー)」という新たな軸が加わる。もはや「手軽なカメラ」ではなく、「最小のシネマカメラ」と呼ぶべき存在になるかもしれない。
競合製品(GoPro, Insta360, スマートフォン)との関係
Pocket 4は、アクションカメラの雄であるGoPro、360度カメラで独自の地位を築くInsta360、そして最大の競合であるスマートフォンと、どのような関係を築くだろうか。
- 対GoPro: 堅牢性や防水性ではGoProに軍配が上がるだろう。しかし、機械式ジンバルによる物理的な手ブレ補正の滑らかさ、そしてデュアルカメラによる表現力は、特に映像美を追求するトラベルVlogなどの分野で強力な差別化要因となる。
- 対Insta360: 「全方位を記録して後から編集する」という360度カメラとは、土俵が異なる。Pocket 4は、撮影者が意図を持って構図を決める、伝統的な映像制作の文法に則ったツールだ。両者は競合するのではなく、クリエイターの目的に応じて使い分けられる補完的な関係になるだろう。
- 対スマートフォン: 最も熾烈な戦いが予想される領域だ。近年のスマートフォンはカメラ性能の向上が著しい。しかし、専用機であるPocket 4は、ジンバル一体型による圧倒的な安定性、長時間の4K撮影でも熱暴走しにくい設計、そして物理ボタンによる操作性といった点で明確なアドバンテージを持つ。スマートフォンでは撮れない「一段上の映像」を求める層にとって、Pocket 4は依然として魅力的な選択肢であり続けるはずだ。
リーク情報に踊らされないための3つの視点
最後に、この熱狂的なリーク情報にどう向き合うべきかだが、3つの視点を提言したい。
- プロトタイプの限界を理解する
リークされたのは、あくまで開発途中のプロトタイプだ。最終的な製品版では、デザイン、スペック、機能が変更される可能性は十分にある。「4K 240fps」のような野心的なスペックが、製品化の段階で下方修正されることも考えられる。過度な期待は禁物だ。 - 自身のニーズを再確認する
デュアルカメラやデュアルスクリーンは本当に必要だろうか?多くのユーザーにとっては、現行のOsmo Pocket 3が持つ性能で十分すぎるほど満足できるはずだ。新機能に目を奪われる前に、自分がどのような映像を撮りたいのか、そのために本当に必要な機能は何かを冷静に見極めることが重要だ。 - 公式発表を待つ冷静さ
リークはあくまでリークであり、不確定な情報だ。憶測に惑わされて購入計画を立てるのではなく、DJIからの公式発表という「確定情報」を待つのが最も賢明な判断である。その時こそ、我々はOsmo Pocket 4の真の価値を正しく評価できるのだから。
DJI Osmo Pocket 4が、我々の想像を超える革新をその小さなボディに秘めていることは、ほぼ間違いないだろう。コンテンツ制作の世界に、再び大変革が起きる。その瞬間を、今は静かに待ちたい。
Sources
- Igor Bogdanov (X)
