TNOとHigh Tech Campus Eindhovenは、6インチウェハーでインジウムリン(InP)フォトニックチップを製造する工場の建設を開始した。両者はこの施設を、6インチスケールのInPフォトニックチップを対象とする世界初の産業工場と位置付けている。研究開発の成果を産業規模の製造へつなぐためのパイロットラインであり、フォトニクス分野で量産を見据えた検証基盤を整える案件として打ち出している。

式典には欧州委員会のHenna Virkkunen副委員長、オランダの経済・気候政策担当相Heleen Herbert、防衛相Dilan Yeşilgöz-Zegeriusが出席した。TNOとHigh Tech Campus Eindhovenは、この施設がAIデータセンター、6Gネットワーク、医療、スーパーコンピュータといった用途に向けた次世代フォトニックチップの実装を後押しするとの見方を示している。

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6インチ対応の産業パイロットラインを整備する狙い

今回の計画の中心にあるのは、研究開発とスケーラブルな製造をつなぐ産業パイロットラインの整備だ。TNOは、フォトニックチップの需要が拡大するなかで、この技術を産業規模で安全に試験し、検証するためのインフラが重要だとしている。新施設はそのための基盤として整備される。

フォトニックチップは、電気ではなく光でデータを処理する半導体技術である。TNOは、この分野で研究段階の成果を実際の市場向けソリューションへ移すには、実験室の成果をそのまま並べるだけでは足りず、製造に近い環境で工程や性能を確かめられる設備が必要だと説明する。今回の工場は、その「lab and fab」をつなぐ役割を担う施設として位置付けられている。

6インチウェハースケールを掲げる点も、この計画の中核である。発表では、この工場をInPフォトニックチップの6インチ生産に対応する世界初の産業工場として示しており、研究設備にとどまらない製造基盤として整える方針を明確にしている。

AIデータセンターや6Gを見込む応用分野

TNOとHigh Tech Campus Eindhovenは、この施設によって市場投入可能なソリューションへの移行を早めるとしている。発表で具体的に挙げた用途は、エネルギー効率の高いAIデータセンター、6Gネットワーク、医療イノベーション、スーパーコンピュータである。

ここでのポイントは、用途の幅広さよりも、フォトニクス技術を実用段階へ進めるための製造と検証の場を持つ点にある。TNOのCEOであるTjark Tjin-A-Tsoi氏は、TNOにとって初めて産業パイロットラインを建設すると述べ、研究と製造を近づけることで、オランダが欧州の半導体分野で担う役割を強化し、企業が高品質なフォトニック技術をより速く効率的に拡大できるようにすると説明した。

つまり今回の発表は、完成品の量産開始を告げるものというより、量産に向かう前段で必要になる工程検証、技術評価、産業化の橋渡し機能を整備することを伝える物だ。

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欧州Chips ActとPIXEuropeの枠組みで進む投資

投資額は1億5000万ユーロで、TNOはこれを欧州Chips Actの構想から直接生まれた投資だとしている。工場は汎欧州コンソーシアムPIXEuropeの一部でもあり、将来のデジタル経済を支える中核技術を欧州域内で開発・製造する体制づくりの一環に位置付けられている。

オランダ政府も、この投資を統合フォトニクスの研究や知識を具体的な応用へ移す動きとして説明している。発表では、知識、イノベーション、サプライチェーン、最終生産まで含めた欧州の競争力強化が狙いとして示されており、雇用や所得だけでなく、国家安全保障とも結び付けてその意義を語っている。

このため、新工場は単独の製造拠点というより、欧州がフォトニクス分野で域内の技術基盤を厚くするための政策的投資の一部と見るべき案件である。TNOの説明でも、施設の価値は建物そのものより、研究開発と産業化の間にある空白を埋める点に置かれている。

TNO、TU/e、PhotonDelta、SMART Photonicsが参加

プロジェクトは、TNO、TU/e、PhotonDelta、SMART Photonics、High Tech Campus Eindhovenによる官民連携で進められる。研究機関、産業クラスター、企業が同じ計画に入ることで、基礎研究寄りの成果を製造工程に近づける体制を組む構図である。

雇用面では、立ち上げ初期を経た後に約40人の専門人材を工場で雇用する計画が示されており、その後の拡大も見込んでいる。発表は、統合フォトニクスを将来のデジタル基盤を支える重要技術の一つと捉え、その量産対応を支える設備と人材を同時に整える方針を打ち出した形だ。

なお、現時点では、建設開始、投資額、参画主体、想定用途、雇用計画までである。量産開始時期や生産能力の詳細は今回の発表では示されておらず、今後の具体化が待たれる所だ。


Sources