欧州委員会は2026年7月14日、スマートウォッチやフィットネストラッカーを含むウェアラブル端末に、内蔵バッテリーを消費者自身で交換できるよう求める原則の条件付き例外を追加する委任規則を採択した。規則はまだ発効しておらず、欧州議会とEU理事会の審査を受ける。第11条の交換義務は2027年2月18日から市場投入される製品に適用され、それ以前に市場投入された製品には遡及しない。ただし、成立しても交換不能な使い捨て設計を認めるわけではなく、独立した専門業者による交換と最低5年間の部品供給が必要になる。

今回の委任規則が変えるのは、主に「誰が交換するか」である。例外の条件、残る修理義務、技術調査と最終条文の違いを追うと、制度の実効性がメーカーの適合証拠と市場監視にかかっていることが分かる。

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湿潤環境と小型・密閉設計の二本立て

ウェアラブル端末が消費者交換義務から外れる経路は二つある。第一は、主に水しぶき、水流、浸水がある環境で使い、洗浄やすすぎを想定した「湿潤環境向け機器」である。従来は電動歯ブラシや口腔洗浄器が典型例だったが、改正条文はここへウェアラブル端末を明記した。汗や雨、水泳に耐える機器が、安全上の理由から消費者による再密閉に適さない場合を想定する。

第二は、消費者がバッテリーへ触れると安全性、耐久性、耐水性が損なわれる恐れがあるウェアラブル端末だ。条文は、サイズや形状が小さすぎて利用者が安全に交換できない製品と、防塵・耐衝撃などの機能を保つために小型の密閉筐体を必要とする製品を挙げる。欧州委員会は、小型セルが狭い空間に強く固定されていると、取り外す際にセルを傷つけたり貫通させたりする危険があると説明した。

それでも、スマートウォッチ、スマートグラス、衣類一体型機器が一律に免除されるわけではない。委任規則はブランド名やモデル名を列挙しておらず、例外が安全確保に必要な場合に限って適用する。防水をうたうだけで自動的に対象になる制度でもない。欧州委員会の更新ガイドラインは、IP等級だけでは湿潤環境向けの例外を証明できず、使用環境、安全への影響、現在の技術で再設計できないことを製品資料で示すよう求めている。

独立修理業者と5年間の交換部品

部分例外を使った製品も、バッテリーを取り外せない設計にはできない。消費者の代わりに「独立した専門業者」が作業できなければならない。更新ガイドラインはこの業者を、製品修理の技術能力と資格を持ち、商業ベースで事業を営む独立事業者と説明する。メーカー直営店や認定網に限る定義ではない。

基本規則の第11条7項は、そのモデルの最後の製品を市場へ投入してから最低5年間、携帯型バッテリーを合理的で差別のない価格の交換部品として供給するよう求める。更新ガイドラインは、再利用できない固定具も交換部品として用意するよう促している。したがって、メーカーが小型・密閉を理由に消費者交換を外しても、少なくとも交換用バッテリーの供給義務は残る。

互換品を締め出す余地も限られる。第11条8項は、互換バッテリーへの交換をソフトウェアで妨げることを禁じた。更新ガイドラインは、非純正バッテリーを使っているとの通知は認める一方、その通知によって機能や利用体験を損なってはならないとする。シリアル番号を照合する部品ペアリングも、交換を阻害すれば認められない。

ただし、修理現場が必要とする情報は十分に詰められていない。規則とガイドラインはバッテリーや非再利用型の固定具を扱うが、密閉性を戻すガスケットやシール、締め付け条件、交換後の耐水試験手順まで一律に供給させる条文はない。消費者交換を外すほど再密閉が難しい製品なら、ここが独立修理の実行可能性を左右する。

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技術報告が求めたIPX5、最終条文は数値を外した

欧州委員会は2025年2月から4月に例外申請を募り、81件を受け付けた。公開された技術支援報告書にはSamsung Electronics、Luxottica、Whoopなどの申請が並ぶ。各社・団体は、小型化、耐水性、誤った交換による短絡やセル損傷を主な理由に挙げた。

外部専門家による報告書の結論は、最終条文より狭かった。手や手首に装着する製品はIPX5以上、または腕時計向けのISO 22810に適合し、利用者が密閉性を復元できない場合に既存の湿潤環境例外を適用できるとした。IPX4以下はこの例外に該当しないとも明記した。さらに、申請者が示した一般的な安全論は、新しい例外を広く認めるには十分でなく、小型性と水の侵入による危険を製品ごとに評価すべきだと述べている。

採択された委任規則は、IPX5や筐体寸法といった数値を条文へ入れなかった。「小さすぎて安全に扱えない」「密閉構造が機能を保つ」といった条件に置き換え、安全確保に必要な場合に適用すると定めた。この書き方は、将来の形状や新しい装着型機器を取り込める反面、メーカーの説明と各国当局の適合性評価に広い判断を残す。

Right to Repair Europeは意見募集で、技術的に再設計できないことの立証責任をメーカーへ明示的に負わせるよう求めた。同等の機能と安全要件を満たす消費者交換可能な製品が一つでも存在すれば、再設計不能とは認めない判定法も提案した。最終条文には、その立証手順や比較基準は入っていない。

2027年に残る適合判定の余白

スマートフォンとスレート型タブレットには、別のエコデザイン規則が優先して適用される。こちらも消費者交換が原則だが、500回の完全充電後に定格容量の83%以上を保ち、1000回後にも80%以上を保つことに加え、端末がIP67を満たせば、専門業者による交換を認める。耐久性と耐水性の数値要件を満たすことを条件に、消費者交換を外す仕組みである。

対してウェアラブル端末の新しい例外には、充放電回数、残存容量、IP等級の最低値がない。小型性や密閉性の必要をどの資料で示し、独立修理業者が実際に交換できるかを誰が試験するのかが、2027年以降の市場監視で問われる。欧州委員会のガイドラインも法的拘束力を持たず、最終的なEU法の解釈はEU司法裁判所に属する。

委任規則はこれから欧州議会とEU理事会の審査を受ける。異議がなければ、EU官報掲載の20日後に発効する。携帯型廃バッテリーの回収目標は2027年末に63%、2030年末に73%へ上がる。交換時期を迎えたウェアラブル端末を製品ごと捨てず、バッテリーを安全に回収できるか。制度の実力は、例外の件数よりも、交換部品の入手性と独立修理の手順が市場で確認できるかによって測られる。