Googleは2026年7月16日、NotebookLMを「Gemini Notebook」へ改称した。独立した研究ツールは残すが、同じノートブックをGeminiアプリと同期し、今後はGoogle SearchのAI Modeからも使えるようにする。同時に、資料を読んで答える従来の機能へコード実行を加えたGemini 3.5とAntigravityの更新を、Google AI Pro利用者にも今後数週間で広げる。名称変更の先にあるのは、資料と指示、会話をGoogleのAI製品間で引き継ぐ仕組みである。

NotebookLMは、選んだ資料に基づいて回答し、原文への参照を示す点で一般的なAIチャットと差を作ってきた。その境界は今も残る。ただし、Gemini側ではウェブ検索や各種ツールを併用でき、Gemini Notebook側ではコードを動かして成果物を作れるようになった。便利になるほど、どの画面で何を根拠に答え、データがどこに残るのかを見分ける必要がある。

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3000万人のNotebookLMをGeminiへつなぐ

GoogleがProject TailwindをGoogle I/Oで披露したのは2023年5月だった。同年7月にはNotebookLMへ改称し、利用者が選んだGoogle Docsを根拠に要約や質問応答を行う実験として始まった。「LM」という名前は、言語モデルを中心に据えたノートという設計をそのまま表していた。

それから3年で対象は広がった。Googleによると、現在は利用者3000万人超、利用組織60万以上に達している。今回の改称後もGemini Notebookは独立製品を保ち、研究向けの中心的なツールであり続けるという。NotebookLMをGeminiアプリへ吸収して閉じる発表ではない。

変わるのは、ノートブックを利用できる範囲だ。Googleは2026年4月、Geminiアプリ内に「notebooks」を導入し、複雑なプロジェクトの資料、過去の会話、カスタム指示を一つの場所へ保存できるようにした。同社はこれをGoogle製品間で共有する「個人向け知識ベース」と呼ぶ。Geminiアプリで資料を加えればGemini Notebookにも現れ、名前や指示の変更も双方向に反映される。

7月の改称は、この共通化に製品名を合わせたものだ。さらにGoogleは、既存のノートブックをSearchのAI Modeでも利用できるようにする計画を明らかにした。ただし、提供日は未定で、AI Modeから資料を追加・編集できるのか、出典をどう表示するのかも公表されていない。

100超のスキルで、読む道具から実行する道具へ

機能面の転換は6月に始まっている。GoogleはGemini Notebookの基盤をGemini 3.5とAntigravityへ更新し、各ノートブックに「安全なクラウドコンピュータ」を割り当てた。AIがノート内の資料を使ってコードを書き、その場で実行する。100を超える選定済みのソフトウェアスキルも用意し、形式の揃わないデータを整え、計算し、グラフや報告書へ変えるところまでを一つの会話から進められるという。

作成できるファイルも、従来の要約や学習資料を越えて業務ソフトの形式へ広がった。

用途 主な形式
図表・画像 PNG、SVG、JPG、GIF
文書 PDF、DOCX、Markdown、TXT
構造化データ CSV、JSON
業務ファイル XLSX、PPTX

生成したファイルはStudioパネルからダウンロードでき、作成後の修正も指示できる。たとえば複数国の表記が混在する統計を読み込み、コードで単位を揃え、グラフとPDF報告書を作るといった流れを想定する。NotebookLMが得意としてきた出典付きの読解に、計算とファイル生成が接続した。

Googleの社内比較では、新システムは旧システムに対して主要5分野で平均65%超の勝率を記録した。大規模文書分析は69.9%、高度なウェブ調査と資料発見は78.2%だった。評価対象は、出典付きの質問応答と多言語対応に加え、長文の理解や成果物の作成、複数資料を使う調査である。ただし、これは旧システムとの相対評価であり、回答の絶対正答率ではない。第三者による検証結果でもないため、実務でどれだけ修正が減るかは別に確かめる必要がある。

クラウド上でコードを動かすなら、実行環境の説明も欠かせない。Googleは「安全」としているが、隔離方式やネットワークへの接続範囲、実行時間と監査ログの仕様は発表していない。表計算の整形と社内データ分析では求められる管理水準が違う。Proへの展開が進むにつれ、この情報が利用判断を左右する。

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同じノート、二つの回答モード

ブランドは揃っても、Gemini NotebookとGeminiアプリの動作は同じではない。Googleのヘルプによると、Gemini Notebookのチャットは選択したノート内の資料だけを根拠に回答する。原文の引用箇所を参照でき、利用者は資料ごとに回答へ含めるかを切り替えられる。調査対象を閉じて確認したいときはこちらが向く。

一方、Geminiアプリで同じノートを開くと、保存した資料に加えてウェブ検索やGeminiのツールを使える。過去のGemini会話をノートへ移し、その会話を新しい文脈として同期することも可能だ。資料外の最新情報を探したり、別のGoogle機能へ作業を渡したりする場面では強いが、回答がノート内の資料だけから作られたとは限らない。

成果物の担当も分かれる。Audio Overview、Video Overview、インフォグラフィック、スライドデッキといったStudioの生成機能はGemini Notebook側に残り、Geminiアプリからは作れない。つまり、同じ知識ベースに対して、資料限定で検証する画面と、外部検索やツールを含めて作業する画面を使い分ける設計である。名称が統一されても、出典の範囲まで自動的に同じになるわけではない。

6月の更新ではGemini Notebook自身もGoogle Searchを使って候補資料を探せるようになった。ここではAIが見つけた資料を利用者が確認し、ノートへ採用するものを選ぶ。資料を取り込んだ後は帰属が残る。ウェブ調査を許しながら、知識ベースへ何を加えるかという判断を人に戻している点が、一般的な検索付きチャットとの違いになる。

Proへの提供拡大と残るアカウントの壁

コード実行を含む更新は、6月にGoogle AI Ultraと、AI Ultra AccessまたはAI Expanded Accessを持つWorkspaceの企業利用者から始まった。7月16日の発表では、ウェブ版のGoogle AI Proの全利用者へ今後数週間で展開するとした。発表日にすべてのProアカウントへ一斉に届くわけではない。

利用上限にも段差がある。個人向けの公式表では、Standardは100ノート、1ノート当たり50資料、1日50チャットである。Proは500ノート、300資料、1日500チャットへ増える。Ultraでは資料が最大600、チャットが1日最大5000になる。Googleは上限を変更する場合があると明記しており、クラウドコンピュータの実行時間や回数は同じ表に示していない。

アカウント種別も揃っていない。Gemini Notebook本体は大半の仕事・学校アカウントで利用できるが、Geminiアプリ内のnotebooksは現時点で個人Googleアカウント向けで、仕事・学校アカウントには対応しない。共有されたGemini NotebookもGeminiアプリの一覧には現れない。個人の調査では製品横断の同期を利用できるようになった一方、組織で共同編集する案件はGemini Notebook側に残る。

データの扱いにも境界がある。Googleは、Gemini Notebookへ加えたファイル、生成物、チャット履歴を、利用者がフィードバックを送った場合を除いて基盤モデルの直接学習に使わないと説明している。しかし、Geminiアプリへ共有したデータにはGemini Appsのプライバシー通知も適用される。Geminiアプリの「Keep Activity」をオフにしたり、Gemini Apps Activityを削除したりしても、Gemini Notebook内に保存されたデータは削除されない。削除と保持を一つの設定で管理できる設計ではない。

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Search AI Modeはどこまでノートを引き継ぐのか

Gemini Notebookへの改称によって、Googleの狙いが見えやすくなった。資料を保管するノートブックをGeminiの長期プロジェクトへつなぎ、クラウド上で計算し、文書や表計算へ仕上げる。将来は同じノートブックをSearchのAI Modeでも利用できるようにする。3000万人が使う独立ツールを残したまま、その知識をGoogleの主要なAI画面から呼び出せるようにする計画だ。

同時に、製品間の境界は利用者から見えにくくなる。Gemini Notebookでは資料限定、Geminiアプリではウェブとツールを併用し、両者で履歴の保持設定も異なる。SearchのAI Modeが加われば、どの回答が保存済み資料に基づき、どの情報を検索から補ったのかを示す表示が必要になる。

今後数週間のPro展開で確認したいのは、クラウドコンピュータが大規模な表や長文資料をどこまで安定して処理できるか、実行したコードと計算過程を利用者が追跡できるかである。そしてSearch統合では、出典の選択権と削除権が維持されるかが判断材料になる。その二点が示されて初めて、Gemini Notebookはブランド統一を超えた調査基盤として評価できる