Appleによる中国製メモリの調達構想が、米議会との再衝突を招いている。Financial Timesは2026年6月27日、Appleが中国のChangXin Memory Technologies(CXMT)からメモリを購入するため、トランプ政権に働きかけていると報じた。John Moolenaar下院議員は同紙に対し、中国の軍事企業と組むのは「重大な誤り」だと反発した。
ただし、FTが伝えたのはAppleのロビー活動と議員の反対であり、Appleを名指しする新法案の提出や採決ではない。Appleの民間調達を直ちに止める一律の購入禁止も発表されていない。すでに法的に決まっているのは、CXMTとYangtze Memory Technologies(YMTC)を名指しし、両社製チップを含む機器を米連邦政府の調達網から外す措置である。発効日は2027年12月23日だ。
発効までの猶予はAppleに選択肢を残す一方、採用判断を難しくする。中国市場向け製品に中国製メモリを使えても、同じ部品構成を米連邦政府へ販売できるとは限らない。問題は購入の可否から、製品ごとに部品の出所を証明し、販売先に応じて供給網を分けられるかへ移っている。
新法案より先に、連邦調達から外す仕組みがある
FTは、AppleがCXMTからの購入について政権の了承を求め、事情を知る6人の話として働きかけを報じた。同紙によると、Appleは現時点でCXMTやYMTCからメモリを買うこと自体を禁じられていない。Apple、CXMT、ホワイトハウスは同紙の照会に回答しなかったとされる。契約締結や量産採用が決まったという話ではない。
米国の対中規制は、同じ「リスト」でも効力が異なる。国防総省は2026年6月10日、CXMTとYMTCを国防権限法1260H条に基づく「中国軍事企業」に指定した。公告は、CXMTが中国工業情報化部(MIIT)と直接関係し、国務院国有資産監督管理委員会(SASAC)などと間接的な関係を持つと説明する。YMTCについても、SASACによる間接所有とMIITなどとの関係を挙げた。
1260H指定は、国防総省が両社と中国政府・軍事産業との関係を認定したものだ。しかし、この指定だけで米民間企業の購入が一律に違法になるわけではない。商務省のEntity Listは別の制度であり、掲載企業へ米輸出管理規則(EAR)の対象品を輸出、再輸出、国内移転する際のライセンスを厳しく制限する。YMTCは2022年12月にEntity Listへ追加されたが、Entity Listも完成品の輸入を全面禁止する仕組みとして設計されてはいない。
AppleがCXMTについて政権の見通しを求める理由はここにある。採用後にCXMTがEntity Listへ追加されれば、EAR対象となる製造装置、設計ソフトウェア、技術の供給に厳しいライセンス要件がかかる。いま買えるかという判断と、製品寿命を通じて供給を続けられるかという判断は一致しない。
2027年12月23日から始まる連邦向け構成の審査
米議会はすでに、2022年12月23日に成立した2023会計年度国防権限法の第5949条で、CXMT、YMTC、Semiconductor Manufacturing International Corporation(SMIC)を名指しした。法律は成立から5年後、つまり2027年12月23日以降、対象企業の半導体を含む電子製品・サービスを連邦行政府が調達することを禁じる。重要システムでは、対象半導体を含む別の電子製品を使う機器まで規制が届く。
2026年2月17日に公表されたFAR Case 2023-008の規則案は、この禁止を実務へ落とし込んだ。対象には市販の電子製品、既製品として販売されるCOTS、少額購入、商用IT・通信サービスが入る。元請けは合理的な調査を行い、政府へ納める製品やサービスに対象半導体が含まれないと認証する。下請けも同じ確認を求められ、供給元の認証に食い違いがあれば追加調査が必要になる。
iPhone、iPad、Macのような一般向け製品も、連邦機関へ納入される局面では市販の電子製品である。CXMT製DRAMやYMTC製NANDを搭載した構成をAppleまたは販売事業者が連邦政府へ提案すれば、例外か免除がない限り対象になり得る。Appleには、採用を見送る、連邦向け構成から外す、地域や販売先ごとに部品表(BOM)を分けるという三つの対応が考えられる。どれを選ぶかは公表されていない。
規則案は移行措置も設ける。2027年12月23日より前に取得した既存機器は撤去を求められず、保守部品やサポートも継続できる。代替品がない市販品・サービスには2028年12月23日まで例外がある。適合品を必要な時に米国市場価格か過度に高くない価格で入手できず、国家安全保障を損なわないと判断した場合、政府機関の長は1回あたり最長2年の免除を出し、更新できる。対象チップが判明した場合の政府への報告期限は72時間とする案だ。コメント受付は2026年4月20日に終了したが、7月17日時点で最終規則にはなっていない。
CXMTのDRAMとYMTCのNANDは別の部品だ
中国製メモリを一つの部品群として語ると、Appleが何を求めているのかがぼやける。CXMTはDRAMメーカーであり、公式製品群にはDDR5、LPDDR5/5X、DDR4、LPDDR4Xが並ぶ。スマートフォンやタブレット向けのLPDDRは、アプリやOSが作業中のデータを置くメインメモリである。
YMTCの主力は3D NANDだ。NANDは写真、アプリ、OSを電源を切った後も保持するストレージに使われる。同社は3D NANDのウェハーとパッケージ、組み込みメモリ、SSDを手がけ、モバイル機器からサーバーまでを用途に挙げている。Appleが2022年に検討を認めたと米上院議員が記したのも、将来のiPhone向けYMTC製3D NANDだった。
Appleの四半期報告書も、DRAMとNANDの両方で供給制約とコスト上昇が生じていると明かした。2026年5月1日提出の同報告書は、先端半導体、NANDストレージ、DRAMメモリの需給不均衡により、供給制約と部品コスト上昇が生じていると説明し、状況が強まると予想した。CXMTはDRAM側、YMTCはNAND側で、それぞれAppleの調達圧力に対応し得る製品群を持つ。
一方で、価格と供給量が合えばすぐ置き換えられる部品ではない。消費電力と容量、歩留まりから長期供給まで、製品ごとに検証する必要がある。さらに連邦調達向けでは、性能試験とは別に供給元の確認と認証が要る。元請けは食い違いがない限り下請けの認証に依拠できるが、疑義が出れば追加調査が必要になる。安価な調達先を増やすほど、部品表は複雑になり、規制対応のコストが増える。
2022年のYMTC先例が示す次の順序
Appleと中国メモリを巡る政治衝突は2022年にも起きた。同年9月22日、Mark Warner、Marco Rubio、Chuck Schumer、John Cornynの上院議員4人は、Appleが将来のiPhone向けにYMTC製3D NANDの調達を検討していると公に認めたとして、国家情報長官へ安全保障上のリスク評価を求めた。企業の調達検討が、超党派の政策案件へ変わった瞬間だった。
その後、商務省は2022年12月16日付でYMTCをEntity Listへ追加し、EAR対象品に原則不許可のライセンス審査を課した。1週間後の12月23日には、CXMTとYMTCを含む半導体を連邦調達から排除する第5949条が成立した。議員の反対声明は、そのまま民間購入の禁止にはならなかった。その年のうちに輸出管理と政府調達という二つの制度が整い、企業の選択肢を狭めた。
今回のCXMT報道も同じ道を進むとは決まっていない。ただし、政策手段はすでに用意されている。政権が2027年末より前にCXMTをEntity Listへ追加すれば、Appleの検討は供給網の上流から難しくなる。追加措置がなくても、第5949条の発効後は例外や免除を使わない限り、連邦政府へ納める製品からCXMTとYMTCを外す必要が生じる。
確認点は三つに絞れる。FAR最終規則が供給元調査と例外をどこまで維持するか、政権がCXMTへ先行して輸出管理を強めるか、Appleが中国製メモリの採用範囲をどう定めるかである。供給元を外すのか、連邦向け構成を分けるのか、例外・免除を使うのかは未定だ。2027年12月23日から、中国製メモリを使うApple製品には連邦政府へ納める際の規制が適用される。