半導体巨人Intelが、聖域なきリストラに踏み切る。2025年末までに「コア従業員」を約2万4000人削減し、かつて鳴り物入りで発表されたドイツやポーランドでの巨大工場計画を事実上撤回。これは、AI時代への対応に苦慮する巨人が、生き残りをかけて断行する「解体と再創造」の始まりだ。

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崖っぷちの決断、従業員の4分の1が去る現実

Intelが7月24日に発表した2025年第2四半期決算は、同社が直面する厳しい現実を浮き彫りにした。売上高129億ドルに対し、最終損益は29億ドルの赤字。市場の期待が集中するデータセンター事業の伸びも前年同期比でわずか4%に留まり、NVIDIAなど競合の爆発的な成長とは対照的な結果となった。

この状況を受け、今年新たにCEOに就任したLip-Bu Tan氏は、痛みを伴う大改革の断行を宣言した。その中核となるのが、大規模な人員削減である。

2024年末時点で99,500人いた「コア従業員」を、2025年末までに75,000人体制へとスリム化する。これは、単純計算で約24,000人、実にコア従業員の約4分の1が会社を去ることを意味する。すでに発表されていた人員削減計画を、さらに拡大・加速させる形だ。

Tan CEOは「需要を確保する前に工場に過剰投資した」「作れば売れるという考えは信じない」と述べ、過去の拡大路線を明確に批判。今回のリストラは、単なるコストカットではなく、過去の経営判断との決別を意味する、極めて象徴的な動きと言える。

地図から消える「未来の工場」、世界戦略に急ブレーキ

今回の発表で市場に衝撃を与えたのは、人員削減の規模だけではない。Intelが近年推し進めてきたグローバルな製造拠点拡大戦略が、根本から見直されることになった。

欧州の夢、頓挫

特に影響が大きいのが欧州だ。ドイツ・マクデブルクで計画されていた数兆円規模の「メガファブ」建設計画と、ポーランド・ヴロツワフ近郊で計画されていた後工程(組立・テスト)の新工場建設計画について、Intelは「計画を進めない」と明言。事実上の白紙撤回である。

これらの工場は、それぞれ3,000人、2,000人の新規雇用を生み出し、欧州における半導体サプライチェーンの要となるはずだった。CHIPS法による補助金を見込んだ壮大な計画は、Intelの財務状況悪化の前に頓挫した形だ。

生産拠点の再編

再編の波は、中米にも及ぶ。3,400人以上が働くコスタリカの組立・テスト事業は、より大規模なベトナムの拠点に統合される。Intelは、エンジニアリング部門を中心に2,000人以上の雇用は維持するとしているが、生産機能の移転は避けられない。

さらに、米国本土のオハイオ州で進められている新工場の建設ペースも「市場の需要に合わせて減速させる」としており、世界規模で投資計画に急ブレーキがかかっていることがわかる。

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なぜ巨人は躓いたのか? 新CEOが断罪する「過去の過ち」

かつてPC向けプロセッサで市場を席巻したIntelは、なぜここまで苦境に陥ったのか。その根は深い。

2000年代以降、スマートフォン向けプロセッサ市場への参入に失敗。そして近年は、NVIDIAやAMDがリードするAI・データセンター向け半導体の波に乗り遅れた。元CEOのPat Gelsinger氏が掲げた壮大なファウンドリ(半導体受託製造)事業への回帰も、莫大な先行投資が重荷となり、2022年に52億ドル、2023年には70億ドルという巨額の営業損失を計上するに至った。

テック業界がAIに沸く中、IntelのAI向けチップは競合製品に見劣りし、市場での存在感は薄い。新CEOのTan氏は、就任後の発言で「NVIDIAのAIにおける地位に追いつくのは手遅れだ」と漏らしたと報じられるなど、極めて現実的な自己評価を下している。

今回のリストラとプロジェクト撤退は、こうした「過去の過ち」を清算し、出血を止めるための緊急手術に他ならない。

残された道は「選択と集中」、次世代チップに賭ける未来

では、Intelに未来はあるのか。Tan CEOが示した道は、徹底した「選択と集中」である。不採算事業や将来性の低いプロジェクトを切り捨て、経営資源を勝ち筋のある分野に再投下する。

希望の光は、開発が進む次世代プロセッサだ。ノートPC向けの「Panther Lake」は年内に出荷が開始される見込みであり、その後継となる「Nova Lake」も2026年末の投入を目指している。Tan CEOは「すべての主要なチップ設計は、テープアウト前に私自身がレビューし承認する」という新方針を打ち出し、製品開発に自ら深くコミットする姿勢を見せる。

この大改革が、巨艦Intelを再び成長軌道に乗せるための起死回生の一手となるのか。それとも、終わりの始まりを告げる悲しい鐘の音となってしまうのか。Tan CEOの強力なリーダーシップの下、Intelは今、その存亡を賭けた最も困難な航海に乗り出した。


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