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Intel、NVIDIAやAppleからの受注獲得へ?18Aプロセスでファウンドリ再起狙う

Y Kobayashi

2025年3月27日

米半導体大手Intelが、苦戦する半導体受託製造(ファウンドリ)事業の立て直しに向け、NVIDIAやBroadcomといった巨大テック企業からの受注獲得に戦略的に注力する可能性が浮上した。スイスの投資銀行UBSのアナリスト、Timothy Arcuri氏が投資家向けメモで指摘したもので、Intelの最先端プロセス「18A」とその派生技術が、この戦略の成否を握る鍵となりそうだ。

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最先端プロセス「18A」を武器に大口顧客獲得へ

Arcuri氏の分析によると、Intelは現在、AIチップ市場を牽引するNVIDIA、およびネットワーク機器や半導体設計で知られるBroadcomに対し、同社のファウンドリサービスの利用を働きかけており、契約締結に向けて最終調整を進めている段階にあるという。特にNVIDIAに関しては、BroadcomよりもIntelの技術採用に近づいていると見られている。

その核となるのが、Intelが開発を進める最先端の製造プロセス「18A」だ。これはトランジスタの微細化を示す指標で、「18A」という名称は、「18Å(オングストローム)」からきており、1.8nmを意味する。業界で言う「2nm(ナノメートル)クラス」に相当し、業界の最先端を走る技術の一つだ。Intelはこの18Aプロセスを、早ければ2025年後半にも量産開始する計画を示している。

さらにIntelは、この18Aプロセスの派生版として、性能強化型の低電力バージョン「18AP」(18A Power)を並行開発しているとのことだ。この新技術は「同じ電力消費でより高い性能を発揮するか、同じ性能でより少ない電力で動作する」ことを目指しており、特に省電力性能を重視するモバイル製品やデータセンター向けチップの設計企業にとって魅力的な選択肢となる可能性がある。Arcuri氏は、NVIDIAが関心を示している用途として、AI向けGPUではなく、まずは「ゲーミングアプリケーション」向けのGPUである可能性を指摘している。

ただし、Arcuri氏はIntelのプロセスにおける電力消費が依然として懸念材料であるとも指摘しており、「Intelは18Aよりも顧客にとって魅力的な、より低電力版の18A(18AP)を市場に投入するため、積極的に推進するだろう」と述べている。

TSMC追撃へ多角的な戦略展開

Intelが、NVIDIAやBroadcomのような大口顧客を獲得できれば、長年にわたりファウンドリ市場で圧倒的なシェアを誇る台湾積体電路製造(TSMC)に対する大きな反撃の狼煙となる。Intelは近年、プロセスの微細化競争でTSMCに後れを取ってきたが、18Aプロセスの立ち上げ成功と大口顧客の獲得は、Intelが技術的な競争力を取り戻したことを示す重要なマイルストーンになり得る。

Arcuri氏は、Intelの戦略が単に微細プロセス技術だけに留まらない点も指摘する。同氏は、Intelが持つ高度な半導体パッケージング技術「EMIB(Embedded Multi-Die Interconnect Bridge)」を改善することで、TSMCが提供する「CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)」技術により近い性能を提供し、NVIDIAのような高性能コンピューティング(HPC)顧客への訴求力を高める可能性があると分析している。EMIBは複数のシリコンダイを効率的に接続する技術で、チップ間の通信を高速化し、電力効率を向上させる役割を担う。近年、AIチップの需要急増によりCoWoSのような高度なパッケージング技術の供給能力がボトルネックとなっており、Intelが代替選択肢を提供できれば大きなビジネスチャンスとなる可能性がある。

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UMCとの提携でAppleへの供給も視野に

さらに、Intelと台湾のファウンドリ企業であるUnited Microelectronics Corporation(UMC)との協業も順調に進んでいる模様だ。Arcuri氏はこの提携が、TSMCに次ぐ高電圧FinFET(立体構造トランジスタ)プロセスの供給源となり得る可能性に言及。情報源によって時期に関する見方は分かれるものの、早ければ来年、あるいは2026年後半にも、この提携を通じてApple製品向けチップの一部を製造する可能性も示唆されている。

Intelは既に、Microsoftや米国国防総省を18Aプロセスの顧客として確保している。今回、NVIDIAやBroadcomといった巨大ファブレス企業が顧客リストに加わることになれば、Pat Gelsinger前CEOが推し進めていたIDM 2.0戦略、特にファウンドリ事業(Intel Foundry Services, IFS)の成功に向けた大きな前進となるだろう。

Intelは来る4月29日に開催予定の「Direct Connect」イベントで、ファウンドリ事業に関するさらなる詳細を発表するものと見られており、今後の動向が注目される。


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